白い、じゃなかった青いタマゴと黒い私・・貴方はどっちを選ぶの?
どっちがいいでしょうね~?(*'ω'*)
※コロン様の『たまご祭り』参加作品です!
「あっ!、あった、あったわ!・・ふふっ、これよ!、これ!、見てみて!」
私は、この国で一番大きな展示品を見て、ついはしゃいだ声を出してしまった。
大きな大きな球体に、正確に刻まれた大地と海、境界線を描かれた営みの群れ。
それは、この惑星の姿をカタチどった模造品。
人は『地球儀』って呼んでいるモノ。
これを彼と一緒に見るのが、この博物館へ来た主な目的だったの・・だけど・・・
クスクス・・周りにいた人達からの微かな笑い声が聞こえる。
見学遠足の園児たちだろうか?、小さな子たちが私の方を指さしている。
「あ・・っ・・・」
場違いだったろうか?、年甲斐も無いって思われてしまっただろうか?
その恥かしさに気付いて赤面し、うつむく私の頭に・・・
ぽんぽん・・・
大きな手が触れてくれる。
顔を上げれば、優しい彼の目が私を見つめてくれていた。
『だいじょうぶだよ』
極端に言葉の少ない、寡黙な彼の瞳は私にそう伝えてくれていた。
「うん・・ありがとう・・」
私よりも頭ひとつ分以上に高い身体が、自然に私の横へと歩を寄せてくれる。
たったそれだけのことで・・・私の世界から雑音が消える。
その彼の顔が、しばらく『青いタマゴ』に向けられていて・・
余りに真剣な横顔に・・・私は見惚れてしまって・・・
「どうして、ここに来たかったんだい?」
呆けた私の耳に聞こえた声に、はっとすると・・・
彼の瞳は、いつの間にか黒い私を見つめていたの。
「あ・・あのね?、退屈な話かも知れないけれど・・今から何億年も前に・・」
彼に見つめられている・・その恥ずかしさで歯切れが悪い私を・・
ぎゅっ・・・
私の手に彼の手が触れて・・優しく握ってくれたから・・・
「かつて地球表面のすべてが凍り付いてしまったことがあったの」
真剣に私の言葉に耳を傾けてくれている・・そう感じたから。
「巨大な雪玉のようになった、とされることから『スノーボール・アース』と呼ばれる時代をこの星は経験したの」
彼に、この地球の模型を見せて包み隠さずに話そう・・そう思って、ここに来たのだと決心を固めた。
「正確には2回・・約24億年前の原生代初期のヒューロニアン氷河期と約7億年前のスターチアン氷河期に起きたの」
流石に外から、この星を見ることは出来ないから・・せめて模型でも、って。
「地表が氷で覆われただけでなく、海水も全て凍結したの・・地球全体が氷点下40度にまで低下したから」
彼をその時代に連れていくことは出来ないから・・せめて想いを馳せてもらう為に正確に説明していく。
「1回目のスノーボール・アース・イベントによって、原生生物の大量絶滅が起きて・・酸素呼吸する生物が誕生して・・・」
年端のいかぬ小娘の他愛事・・そう思ってもらっても良かった・・・
「それからエディアカラ生物群と呼ばれる多細胞生物の出現が起きて・・そして、2回目のイベントではカンブリア爆発と呼ばれる飛躍的な進化を遂げた生物たちが絶滅することになって・・・」
聞きかじった科学の知識を得意げにひけらかしている・・そう思ってもらっても良かったのに・・
こんな頭のおかしい女の世迷言を、どうしてそんなに熱の篭った優しい目で見つめるの?
「スノーボール・アース・・それはね・・まるで『白いタマゴ』のようだったのよ?」
太陽の光をほとんど反射して、この星は一点の穢れも無く、とてもキラキラしてキレイだった・・
そのまま凍り付いて全て無くしてしまうはずだったのに・・・
・・・彼の手が冷たい私の手を温かく包んでくれる。
醜く浅ましく生きる命の繋がりの先にある未来の姿に・・・
「今の濁って汚れた『青いタマゴ』にならないように・・そう思ったのに・・・」
どうして貴方は、私が望んだ通りの姿と魂で産まれて生きてしまうの?
「・・そして、神様は黒く汚されて人に墜されてしまったのだけれど・・あ、貴方は・・」
せめてもの反抗のつもりで、定番の言葉を吐いてみるけれど・・・
・・・ごめんね、人類・・後は自分の力で頑張ってね?
こうして末永くふたりは幸せに暮らしましたとさ・・めでたしめでたし♡(*´▽`*)