表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/68

愛剣と聖女と

今回はラウが気になっていたことのお話です。

まずは愛剣デュランダルを探します。


※今回から携帯を意識して改行しています。

 他のエピソードも随時やっていく予定です。

 見難かった方、すみませんでした。


次の朝。


朝食後、予定通り別行動にする。


「夕方には帰ってきてね。」

「わかった!

 ナタリーも王都を楽しんで!」


まずはデュランダルを探すか。


そう思ったラウは、愛剣について聞き込みをした。

『剣神シンの愛剣はエリュシオンの大神殿にある』

という情報は、わりとすぐに聞くことが出来た。


前世で魔王と刺し違えたシンは

王都でも有名で、神格化されていた。

世のために捧げた前世は

無駄ではなかったと誇りに感じる。

教えてくれた人も

誰でも知っているような口ぶりだった。


もしかしたら俺が一番知らないのかもな。

そう思ったラウはまた笑ってしまう。


神殿は王都でも城の次に目立つ建物で

すぐに分かった。


住民区より少し高い所にあり、

教会がそびえたっている。


神殿に続く階段を昇ると、

ちょうど朝の祈りが終わったところなのか、

熱心な信者達とすれ違った。


簡易的に食事の前に祈るのが一般市民の信仰だが、

熱心な信者は毎日神殿を訪れて司教と共に祈る。

平和な雰囲気を感じながらラウは階段を昇った。


本当に今、祈りが終わったばかりらしく、

司教たちがまだ神殿の奥にいた。

信者達と話し込んでいる者もいた。

中心に明らかに他より立派な司祭服を着た

とても美しい女性がいた。

服と銀の髪がただならぬオーラを醸し出している。

ラウ、正確にはシンが良く見知った顔だ。


ソフィアだった。

シンと同じ勇者PTの僧侶だ。


神殿に入るか入らないかのところで

ソフィアと目が合った。

ラウに笑いかけるソフィアの目が潤む。

話していた司教を手で制し

ソフィアは近付いてきた。


「あなたは?」

「ラウ、と言います。

 フォーレ村の鍛冶屋の息子、

 ラウディースです」


「そう、ラウというのですね。

 こんにちは、ラウ。

 少しお話しましょう。

 私の部屋に一緒に来ていただけますか?」

「はい、でもよろしいのでしょうか?」


「もちろんです。

 私が招いているのですから。

 そしてあなたにお伝えしたいことがあります。」

「それではお供させていただきます」


形式上の挨拶を済ませると

ラウの頭は疑問だらけになった。

ソフィアについていきながら考える。


なぜソフィアがラウに話があるのだろうか。


道中、すれ違った何人かの司祭は

ソフィアを「大司教様」と呼び

丁寧に挨拶していく。


おそらくソフィアはここで一番偉いのだろう。


それも当然だ。

魔王を倒した勇者PTの僧侶。

英雄扱いされるのは当然の流れだったろう。


ほどなく立派な部屋に着くと

ソフィアはラウを招き入れた。


「お掛けになって」


部屋の中ほどには、

10人は座れるだろうテーブルがある。

促されてラウは角に座る。


すぐに飲み物が用意された。

とても穏やかな香りのハーブティーだ。

心が落ち着く香りが鼻をくすぐる。


ソフィアは人払いするとラウに近付く。

怪訝そうな顔で出ていく司教が居なくなると

ソフィアは意外なことを口に出した。


()()!!!」


いきなり抱擁されてラウは戸惑った。

しかもラウの事をシンと呼んでいる。


驚きの視線を向けると、

気付いたソフィアは話し始めた。


「ラウ・・・でしたか?

 私の前ではシンで大丈夫です。」


抱擁がどんどん強くなる。

なぜかラウがシンだということを

知っているらしい。


ラウは息を詰まらせながら言う。


「ソフィア、分かった、分かったからもう離せ」

「ごめんなさい。

 久しぶりに会えたので嬉しくて。」


ソフィアは落ち着くと角を挟んで隣に座る。

それにしてもナタリーと一緒にいなくて正解だった。

美人大司教の全力抱擁など、見られたくない。


「少し混乱している。

 たしかに俺はシンの生まれ変わりだ。

 だがなぜお前がそれを知っている?」


ラウは自分でも驚くほど口ぶりがシンに戻っていた。


「シンが倒れた後、

 私は女神エリュ様から神託を受けたのです。

 あなたが転生し、私の元を訪れたとき

 力になりなさい、と。」


「だとしても、なぜ俺だと分かった?」


当然の疑問だった。

ラウは名乗ってすらいなかった。


「私は聖職者ですよ、シン。

 転生したあなたは体験していると思いますが

 身体には魂が入っています。

 あなたの大きくて暖かい魂を

 忘れるわけがありません。

 それに・・・

 魂を見ることのできる私が

 あなたを見間違えるわけがありません。

 一目ですぐに分かりましたよ。」


そういうものなのか。

確かに2年以上の間、

命を懸けてお互いを護り合った絆は

どんな絆よりも深い愛情と信頼を醸成していた。

それは勇者ユーフィリアスと

魔導士イリスにも言える事だった。

その絆が魔王討伐を成功に導いたともいえる。


「ではユー坊やイリスも分かるのか?」

「どうでしょう。

 私は神託を受けましたが、

 その際女神様は口止めをしました。

 私の中だけでとどめておくように、と。

 あなたがシンであることはあなたが言わない限り

 他の者に伝える必要はない、と。」


女神の心遣いに感謝する。


ソフィアは続ける。


「会って魂をしっかり感じれば

 分かるかもしれませんが。

 おそらく二人は私ほど魂を見れないでしょう。

 ただ、醸し出す雰囲気が似ているな、

 くらいは感じ取れると思います。」


会ってすぐに分かるのはソフィアだけか。

ラウは安心した。

そしてここに来た目的を切り出した。


「俺の剣、デュランダルはどこだ?

 ここにあると聞いたんだが」

「あなたの愛剣は私が預かっています。

 ユーフィリアスが、自分が預かる、

 と譲らなかったのですが。

 ご神託で私が預かるよう

 指示されたことを告げると、

 しぶしぶ引き下がってくれました。」


ソフィアが続ける。


「あなたの財産もこの時のために

 私が預かっています。

 来てください。」


手招きすると、

部屋の奥の本棚を何やら操作する。


すると奥に隠し部屋が現れた。


「ここにあなたの持ち物・財産が全てあります。

 持てなければ置いておいて構いません。

 取りに来るたびあなたに会えますし、ね。」


はにかみながら微笑むソフィアから

隠し部屋の奥に目を移すと

正面のガラスケースに丁寧に置かれた

デュランダルが目に留まった。

ソフィアが鍵をあけると

ラウはガラスケースから愛剣を取り出す。

すると剣が語り掛けてきた。


[やっと迎えにきたか]


そう、デュランダルは

()()()()が出来る剣だった。

ラウとテレパシーで会話が出来る。

初めて語り掛けられた時は

それはびっくりしたものだ。


〔おれが迎えに来るのが

 分かってたような口ぶりだな〕


[自信はなかったが

 おそらく来るだろうと思っていた。

 元々シンも転生していたと聞いていたからな]


〔たしかに言ったな〕


[であれば女神エリュシオンが

 シンを転生させぬ道理がない。

 明らかに前世より善行したであろうからな]


〔それもそうだ。

 おかげで生まれ変わる事が出来た。

 お前のおかげも大きいな〕


[そうだろう、我は優秀だからな]


その言葉に、ラウはある事を思いついた。


〔デュランダル、姿を変えられるな?〕


[うむ。我は自由に姿を変えられる]


〔では杖になってもらうことは出来るか〕


[造作もない]



デュランダルはそう言うと光と共に姿を変えた。

持ち手は昇る龍が装飾され手に馴染む。

長さもちょうど良く、振りやすい。

これ以上の杖はこの世にないだろうと思えるほど

立派な杖に変化した。


「さすがですね、デュランダル」


ソフィアが言う。

意思疎通が出来るのはラウだけなので

ソフィアにデュランダルの声は聞こえてはいないが

杖に変わった愛剣に感心している。

デュランダルが姿を変えるところは

何度か見ていたので驚きはないようだ。


「この出来栄えでは

 イリスも羨ましがるでしょうね。」

「そうだな。ありがとうデュランダル」


[なんということはない]


愛剣、今は杖だが、との再会を喜び、腰に差すと

ラウは周りを見渡す。


ひときわ大きな宝箱を開けると、

大量の金貨と宝石が詰まっていた。

ラウが覚えているシンの財産より多い。


「これは?」

「シンの財産と魔王討伐時の王からの褒美です。

 ユーフィリアスもイリスも半分はあなたに、

 という事で副葬品として私が預かりました。

 もちろんあなたに返そうと

 ここに置いておきましたが。」


ソフィアはいたずらっぽい顔を向けながら言う。


おそらくソフィアが中心となって

葬儀が行われたはずで

ここに置いておくことは簡単だったはずだ。


「ありがとう、助かる」

「いいえ、元々はシンの財産ですから」


これでお金に困ることはない。

心配事が二つ一度に解決し、安心した。

ラウはもう一つ気になっていた事を話し始めた。


「聞いてもいいか?

 父、オクタヴィアは元気にしているか?」

「もちろんです。

 辺境伯だったあなたのお義父様(おとうさま)

 あなたの功績で公爵になました。

 そして城に招かれましたが

 ご本人の希望で今もオクトに住んでいます。

 会いに行ったら喜んで頂けますよ。」


ソフィアは忘れているのか。

今の俺はシンではなくラウだ。

説明するのはとても骨が折れるだろう。


ただ、前世では転生したばかりのシンを

温かく迎え入れてくれた上に

養子にまでしてくれた両親には会いに行きたい。

弟セルマと妹ティアも大きくなったろう。

義理とはいえ兄弟だ。

二人の成長した姿も見たい。


ソフィアに色々な話を聞くと、ラウは安心した。

殆どの心配事は解決したと言っていい。


持てるだけの金貨を革袋に入れるとラウは言った。


「本当にありがとう、ソフィア。

 お前が居てくれて助かった。

 心配だったからな、色々」


心からの本音だった。


「気にしないでシン。」

「おい、そろそろラウで呼んでくれ。

 シンは今日だけだ。

 俺はフォーレ村のラウ」


「そうね。でも・・・」


ソフィアは続ける。


「あなたがシンである事を告げたいときには

 私も協力します。

 私は今、大司教でエリュシオン教のトップ。

 共に話すことでお役に立てるかもしれません。

 それではラウ、またいらしてね。」


父上、オクタヴィアや家族と会いに行く際は

確かにソフィアの肩書きと協力は

かなり大きな力になるだろう。


ソフィアの部屋を出る前にもう一度抱擁され

ラウは神殿を後にした。

子供だからか、少し軽く扱われている気もするが

神職のソフィアに限ってそんなことはないだろう。

親しみの表現と受け取ることにする。




と、いきなりラウの血が逆流した。

腕輪が赤く光ったのだ。

それはナタリーが

危険な目に合ってることを意味していた。



今日も読んで頂いてありがとうございます。

今回は愛剣と前世の仲間ソフィアとの

再会を果たすことが出来ました。


書いていて楽しかったです。


またソフィアと会えた事で心配事が

大分解決しました。

と思ったのもつかの間ナタリーに危険が!

次回も楽しみにしていただけたら嬉しいです。


土日を除く、毎日12:30に更新する予定なので

また覗いてもらえたらうれしいです。


前書きにも書きましたが、

今回から携帯も意識して改行しています。

今迄のエピソードも随時更改します。

また、まだ読みにくい等

お気づきの点がございましたらご指摘ください。


フックマーク・コメントもお気軽にお願いいたします。

いいね・応援メッセージもお願いします。

やる気に繋がります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
覚えている人がいるのはいいですね〜。 と、ほっこりしていたらナタリーがピンチとは……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ