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買い物と気がかり

今日は二人の買い物です。

またラウには気になっている事がいくつかあります。


目覚めると気持ちのいい朝だった。

遠くで鳥のさえずりが聞こえる。

久しぶりのフカフカのベッドで

旅の疲れはだいぶ取れていた。


どこからともなく

パンを焼くいい香りと、

スープの香りが漂う。


「起きたの?おはよう!」


先に起きていたナタリーは

すでに普段着に着替えていた。


「おはよう」


ラウは大きく伸びをすると顔を洗い、

着替える準備をした。


「先に下に行ってるね!」


ナタリーは気を使ったのか部屋を出ていく。

本当によく気が利く優しい子だ。


着替えながらラウは考える。

ラウには気になっている事がいくつかあった。


一つはお金の問題だ。

ラウの実家の鍛冶屋は村では比較的裕福で、

餞別には充分な金額をくれていた。


学用品を一通り揃えても

まだ一か月は暮らせるだけのお金はある。

しかし減っていくだけなのは違いない。

収入が必要だ。


それにナタリーの方も気になる。

ナタリーの実家も貧乏ではないが、

それでもラウの実家ほどの金額は

持たせられないだろう。


道中の宿代等は自分の分を出していたし

結構ギリギリの可能性もある。


ラウには案があった。


正直シンの頃は

王からかなりのお金をもらっていた。

しかし使う暇がなく

装備品や旅での経費以外

お金を使っていなかった。


まだ銀行にあればかなりの助けになるだろう。

ただ、そのお金を自由にするためには

ラウがシンだということを証明する必要がある。

それはかなりのハードルだ。

可能かすらも怪しい。


もう一つ気になっているのは

愛剣デュランダルのことだ。

ユー坊達が生還したのは確実で

そう考えると剣も持ち帰ってくれたはずだ。


共に魔物を倒し、道を切り開き、

魔王を倒した『彼』を探したい。

前世の相方は、今世でも共にいたい。


こちらはそう大きなハードルは無いように思う。

見つけ出しさえすればいいはずだ。



考えながら着替えを終わらせると、

一階の食堂まで降りた。


ミルクを飲みながら待つナタリーのテーブルに座る。


「おまたせ!」

「ううん!全然だよ!」


挨拶を交わしていると

シルがミルクを持ってきて言う。


「君も普通の朝食でいいかな?」

「おねがいします」


シルは奥に行くと、

そう時間もかからずに

食事が乗ったプレートを運んできた。

一人で切り盛りしているのか仕事が早い。

ラウ達以外にも

宿泊客であろうグループがいくつかいたが

すでに運ばれた食事を食べている。


「はい!これが今日の朝食よ!」


パンとハムエッグ、

スープが乗ったプレートが

目の前に置かれた。

口ぶりからすると

日替わり定食の様なものなのだろう。


「それにしても珍しいわね。

 ユーシリアもシリアスも入学する生徒は

 だいたいこの時期に来るんだけど、

 生徒だけで来るのは珍しいのよ。

 ほとんど入学まで親御さん同伴だから。」


たしかにそうだ。

ラウは思いもしなかったが、

本当にまだ11歳の子供であれば、

一人で入学まで過ごすのは難しいだろう。

ラウ達は幸い二人だがそれでも似たようなものだ。


そう考えるとラウの両親とナタリーの両親は

相当ラウを信頼していた事に気付く。


親の旅費や滞在費を含めるとお金もかかるだろう。

その分も持たせてくれたと考えれば、

ナタリーもラウが考えたよりも

持ってるかもしれない。

ラウは少し安心した。


ナタリーは二人だけなのが誇らしいのか

自慢げに微笑んでいる。


ラウはシルに気になっている事を聞いてみた。


「そのシリアスっていうのは学校?」

「そうよ。ああ知らなかったのね。

 シリアスは剣士育成のための学校の名前。

 卒業後は騎士団に入ったり

 冒険者になったり、かな。

 もちろんユーシリアの生徒も

 冒険者になったりするけどね。

 君たちは何になるのかな!

 もし有名になったらこのお店宣伝してね!」


シルはそう言うと、

ラウのおでこを人差し指でつついた。


「ん!」


ナタリーが反応するが、

パンが詰まった口ではそれが限界だった。


「それじゃあごゆっくり。

 食器はそのままでいいわよ。

 いい一日を!」


言うとシルは

美味しい食事をお代わりする客の対応に戻った。


「もう、あの人。気軽にラウにさわって!」


パンを流し込んだナタリーが口をひらく。

シルの行動に深い意味はないが

少女にはちょっかい出した様に見えたのだろう。


「まぁでも情報も聞けたから」


パンをちぎりながらラウが返す。


「学校のね!それだけ!

 私達は今日買い物するのよ?

 お店の情報聞かないと。」

「そうだった!でも大丈夫だよ」

「全然大丈夫じゃないよ。

 もうラウったら。」


そんな会話をしながら、

王都一日目の食事を終えた。


「ごちそうさま!」


食事を終えるとシルに

教科書を買える店と杖を買える店、

それから服とアクセサリーを買える店を

教えてもらい宿を出た。

入学準備は出来そうだ。


(ナタリーにアクセサリーでもプレゼントするか。

さっきのフォローではないぞ。断じて違う)


そう言い聞かせながらも

ラウはそんな事を考える自分に

笑ってしまっていた。



一通り教科書を揃え、

入学用の杖を買うと一度宿に戻る事にした。


この世界での杖は、書道の筆の様なもので、

魔法を使う時に絶対必要なものではない。

筆なしでも指で文字を書けるのと一緒で

杖なしでも呪文は使える。

杖を使った方が表現が豊かになるといった程度だ。


魔法が上達するにつれ、

杖も上質にしていくことが多い。

これも筆のようなイメージだ。

最初からいい筆を使う人は珍しいだろう。

新入生の杖はたいてい初心者用なので

意外に安価だった。


この辺はホグ〇ーツとは違うんだな。

前々世の記憶から、そう考えて、

また笑ってしまっていた。


宿に荷物を置き、昼食をとった。

制服を買いに再び宿を出る。


「今日は沢山笑うんだね。」


ナタリーも色々買ったからか嬉しそうだ。


「買い物は楽しいよ。

 ナタリーと一緒だし」

「じゃあ早く行こう!」


ラウに答えながらナタリーは小走りに駆け出した。

ナタリーに手を引かれてラウも駆け出した。


ユーシリアの制服は

少しおしゃれな高校みたいな制服だった。


女子はリボン、男子はネクタイと、

男女共にマントの色で学年を表す。

マントは薄い布で比較的安価なのは

一年ごとに変える必要があるためだ。

知り合いが居る人は譲ってもらうらしい。


一年生は黄色、

学年が上がるごとに、

緑、赤、青、紫、となり

6年生は銀、最上級生の7年生は金と決まっていて

色で学年を表すこともあるらしい。


ラウ達は一年生なので

黄色のタイとリボン、マントを買った。


「なんか準備してるとワクワクしてくるね。」


ナタリーがにこにこしながら言う。


それはラウもだった。

いよいよ学生生活が始まると思うと

胸が躍っていた。


制服を買った後、

アクセサリーを見に装飾品店を覗いた。


色とりどりのアクセサリーが並んでいる。

ブレスレットやペンダント、

髪飾りなど様々だ。


「綺麗ね~。あ、このネックレスかわいい!」


ナタリーは楽しそうだ。

たいていの女の子はこういった店は好きだろう。

ナタリーも例外ではなかった。


ラウは欲しいものがあった。


『絆の腕輪』という魔法の腕輪だ。


PTメンバーで一対として使うこの腕輪は

離れていてもお互いに信号を送ることが出来る。


色で表す簡単なもので、

1色のものから7色のものまであり

色数によって値段が違う。


1色の物であれば

微弱な魔力で光らせることが出来るので、

ほとんどの人、

例えば魔力があまり使えない戦士でも

使うことが出来た。


7色の物は複雑な魔力操作がいるため、

魔法使い同士等で使われる。


ラウは店主らしい女性に言った。


「すみません、絆の腕輪ありますか?

 1色の二つでいいんですが」

「もちろんあるわよ!

 ちょっとまって・・・」


店主は迷わず商品を取ると言った。


「これでいいかしら?

 はいどうぞ。

 かわいらしいお客さん!」


店主が持ってきた腕輪は

今のラウ達には少し緩かったが

腕から抜けるほどではなかった。


一般的な丸い素材の金の腕輪で

シンプルなものだ。


ラウが少し魔力を込めると

対になっているもう一つの腕輪が赤く光った。


これでいい。


ナタリーの様子を見ると

銀の台座に青い宝石がはめ込まれている

美しい装飾の髪飾りに見とれている。


「はぁ〜、きれ~い」


値段を見ると少し値が張る。

色々買い物をしたラウの持ち金を超えていた。

今すぐに買うことは出来ないが

覚えておくことにする。


とりあえず腕輪を渡そう。


「ナタリー、この腕輪、

 プレゼントしたいんだけど」


申し訳なさそうにラウはナタリーに話しかけた。


「え?本当に?」

「うん。これは絆の腕輪だよ!」

「ってことはラウとお揃い?うれしい!」


身に着けてもらえそうなので

買う事にする。


「すみません。これください」


店主にお金を払い、お互いの腕にはめた。


「魔力を込めてみて」


ラウが言うと、ナタリーが腕輪に魔力を流す。

ラウの腕輪が赤く光った。


「正常!危険を感じたらこれを使って!

 これで約束を守りやすくなったよ」


見るとナタリーは嬉しそうだ。


店主にお礼を言って店を出た。


店を出るともう夕方だった。

制服を買う時に採寸等

色々時間がかかったためだ。


二人は宿に戻って夕食をとり、

明日は別行動ということにして床についた。

腕輪のおかげかナタリーも快く了承してくれた。

気になっていることを少し調べたい。

ラウはそう考えながら眠りについた。


もう少し進めたかったのですが、私の時間の関係で今日はここまでです。

次回からいろいろな出来事・出会いが待っているのでご期待ください。


土日を除く、毎日12:30に更新する予定なので

また覗いてもらえたらうれしいです。


フォロー・コメントもお気軽にお願いいたします。

やる気に繋がります!


※12/11 改行等修正

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― 新着の感想 ―
腕輪をプレゼントされてナタリーもご機嫌なんでしょうね〜。 微笑ましいです。
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