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剣神になったけど本当は魔法に憧れてたので魔法使いに転生します  作者: A’s
〜二年生〜

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ラウの夏休み


【主要人物紹介】

ラウ

 剣神シンから転生した少年。

 魔法学校の二年生。

ナタリー

 ラウの幼馴染。

 一緒に入学するために王都へ来た。

ビスタ

 ユーフィリアスの長女で王女。

 ラウとナタリーの同級生。



「そうだ、それでいい」


「はいっ!」


夏休みに入り、元両親の顔を見に

ラウはオクトに帰ってきた。


オクトも平穏な日々が

続いているらしい。


元気な両親の顔を見て

オクトの平和を確認したラウは

セルマに稽古を付けていた。



「よし!

 剣の扱いはもうほとんど

 教えることはないな」


「はい!ありがとうございます!

 次は魔力の扱いですね!」


最近のセルマは

向かい合わせにした手のひらに、

少し魔力を溜められるように

なってきていた。

手のひらの間から

魔力がちらちら光っている。


「魔力錬成はその程度でいい」


「はい!

 自分でも少し魔力を感じられるように

 なって来ました!」


「それを腕や脚に流すイメージだ」


「やってみます!」


シンはある意味天才だった。

魔力の流れなど意識したことも無く

手や脚に流し込み、人ならざる動きを

身に付けていた。

しかしセルマは違う。

多分魔力を意識した方が

上達は早いだろう。


「ではそれを意識して

 もう一度打ち込んで来い」


「はい!いきます!」


剣術では剣捌き、足捌きと共に

重要な要素がもう一つある。


眼だ。


これもシンの時に自然に魔力を流し

人を超えた動体視力を身に付けていた。


そのラウにはセルマの剣技はすべて見える。

そしてそれを常に使うように

身についてしまっていた。


その結果ユーフィリアスの斬撃ですら

視認できるラウの目には

大抵の剣筋は止まって見えた。


そのせいでセルマの成長に

なかなか気付いてやれなかったが

最近のセルマは、おそらく筋力のみでは

到達できないレベルの斬撃が

数撃に一撃混ざっていた。


「いいぞ!

 たまに混ざるようになってきた」


「!!

 本当ですか?!」


初めて褒められたセルマが

動きを止めて感動している。


ラウはセルマの頭に軽い一撃を入れた。


「戦いの時に行動と感情を繋げるな!

 死ぬぞ」


「すみません。」


それでもセルマは手を見ながら

感動している様子だった。


しかしまだ一度も脚には流せていない。


セルマの足捌きは達人のそれだが

まだ人の域を出てはいなかった。


戦いにおいては足捌きの方が

重要な局面も多い。


どんなに強い相手の剣も魔法も

当たらなければどうという事はないのだ。


「ただ脚はまだまだだ。

 今後は手の感覚を忘れずに

 脚に応用していくように」


「はい!ありがとうございました!」


とは言ったものの、

セルマの剣士としての腕は

毎週の成果もあってかなり上達していた。


メフィストの時と同じ状況になっても

オクトはセルマが守れるだろうと

思えるほどだ。



「ところで兄上。

 地上最強の剣士の兄上が

 なぜ、魔法を学んでいるのです?」


セルマが汗を拭きながら唐突に言った。

正面から聞かれると、

正直答えるのは難しい。


日本にいる時には剣は現実にあった。

もちろんレベルは違うが

歴史上剣で名をあげた武士も沢山いる。

しかし、魔法は現実世界にはなかった。

だからこそゲームの世界での

様々な魔法に皆が心躍らせたのだ。


だがセルマにそんなことを

理由として言う訳にはいかない。


それによく考えてみると

ラウの魔法に対するモチベーションは

ただの憧れの域を出ていなかった。


実際何がしたいんだろう。


「難しい質問だね。

 魔法でしか出来ない事が

 あるからかな?」


剣士モードを解除されたラウからは

シンの口調は消えていた。


「例えばどんなことですか?」


「ん-時間を戻したり

 離れた所に移動したり

 人を癒したり、かな?」


「たしかにそれは

 魔法でしか出来ない事ですね。」


「あとは触らないで物を動かしたり

 何もない所から何かを作り出したり」


「そうですね、具問でした。

 たしかに剣だけでは

 出来ない事もありますね。」


「いや、改めて考える

 いい機会になったよ、ありがとう」


「いえ、こちらこそ

 ありがとうございました。

 脚を意識して鍛えておきます。」


「うん、それじゃあね!」


ラウはペンダントに魔力を送り

自分とセキトの家の魔法陣に飛んだ。



家に帰るとまだ誰もいなかった。

今日は寮に届け出て、

ここに泊まる事にしていた。


ベッドに横になると

先刻のセルマの質問の

答えを考えてみた。


魔法でしか出来ない事で

自分が本当にやりたい事は

なんだろうか


考えてみても答えは出ない。

というか本当は答えはあった。


ただの憧れ。


余りにも稚拙な動機で

認めたくなかっただけだ。


正直、戦闘だけを考えたら

史上最強の魔法使いであるイリスとさえ

シンの半分程度の力しか出せない

今のラウでもそこそこ戦えるだろう。

それは勇者である

ユーフィリアス相手でも同じだ。

勝ち筋さえ見える。


では魔法で戦ったら?

二人の足元にも及ばないのは明白だ。


鍛えれば魔法戦闘で

イリスを超えられる?

不可能だ。経験値も違いすぎる。


剣士シンと戦って

魔法使いラウは勝てる?

絶対に無理だ。

シン側の自信しかない。

相手になりさえしない。


しかし今はオクトからここに

一瞬で帰ってこれる。


シンの全盛期でも

一時間はかかるだろう。


シンは空を飛べなかった。

ラウは鍛えれば空も飛べるだろう。


ラウは恐ろしい事に気付く。


結局、やりたい事は

ネコ型ロボットの

現実化なのかもしれない。


そう考えてみれば

やりたい事のイメージが

付きやすそうだ。


ラウはやりたい事を見つけるのを

夏休みの裏課題にしようと思った。




「ラウ。ラウ。ラウ!」


いつの間にか寝てしまった

ラウを呼ぶ声に目を開けると、

童話の世界の姫の様に美しい少女が

こちらを向いて呼び掛けていた。

寝ぼけたラウは息を飲む。


「ん?んん?」


「ん?じゃないよ。

 さっきから呼んでるのに。」


少し膨れているナタリーに

ラウは返事をした。


「ああナタリー、お帰り」


「ただいま。」


今日はナタリーはビスタに誘われて

赤竜トラベルを手伝いに行っていた。


ナタリーが帰ってきたという事は

ビスタもセキトもいるはずだ。


「ひっぱって」


なぜか甘えたくなったラウは

ナタリーに手を差し出す。


「仕方ないなぁ。」


言葉とは裏腹に

ナタリーは微笑みながら

引き起こしてくれた。


小さな幸せを貰ったラウは

上機嫌でそのまま

ナタリーの手を引いて階段を下りる。


食堂ではセキトとビスタが

夕食の準備をしていた。

殆ど終わっている。


ビスタがこちらを向き

ラウとナタリーを見ると

いたずらな微笑みで突っ込む。


「あら、起こしてくるだけ

 だったはずなのに

 仲睦まじいようで。」


ラウは慌てて手を放した。

ナタリーは反論する。


「もう!ビスタったら!!」


ナタリーは照れているというより

少し怒っているようだった。


「本当に・・・もう。」


ビスタもそれ以上は追いかけず

食事の準備に戻る。



「「「いただきまーす!」」」


今日の食事は鳥のから揚げと

炒めた野菜、酢の物

それにトマトスープだった。


美味しい食事を食べながら

会話も弾む。


「今日はね、

 パラフェンって町にいったんだけど・・・」


夏休みに入ってからというもの

ビスタは毎日赤竜トラベルで働き

馬車で言う御者を買ってでていた。


かなりセキトの背中が

気に入っている様子だ。


箱入り娘にとっては

国の色々なところに行けて

嬉しいのもあるだろう。


おかげで赤竜トラベルの人気も

うなぎ上りで予約が絶えないようだ。



楽しい食事を終えて片付けをしながら

ラウはセキトに確認した。


「ライスや黒竜の情報はあった?」


「ごめんねご主人様。

 全然なんだよ。」


「いやいや、ついででいいんだから

 謝らないでよ」


「ありがとう。

 でもちゃんと気にはしておくから。」


「頼むね」


残念ながら情報は更新されていないようだ。


「ねぇラウ。」


後ろからナタリーが声を掛けてきた。


「明日は図書館に行かない?」


「うん、そうしよう!」


ビスタが割って入る。


「二人は図書館デートね。

 私達は明日も忙しいから。

 ね、セキト。」


「そうだね~。」


いたずらっぽくセキトに笑いかけると

セキトも笑いながらこちらを向く。


ともあれ赤竜トラベルが

軌道に乗りそうで安心した。


明日の予定も決まり、

片付けも終えると

三人は食堂で宿題をした。


分からない所は

ナタリーが教えてくれるが

二人ともほとんど自力で解けた。


宿題を終え順番に風呂に入ると

皆それぞれの床につく。


ラウは平和な生活で

気を緩めすぎないよう引き締める。


次に黒竜が姿を見せるまでに

何か掴んでおきたかった。


今回もお読みいただきありがとうございます。


いいね、ブックマーク、コメント頂けたら嬉しいです。

励みになります。


基本的には土日祝を除く月~金の昼に更新します。

次回もよろしくお願いします。

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