赤竜トラベル
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。
一緒に入学するために王都へ来た。
ビスタ
勇者王ユーフィリアスの長女で王女。
ラウとナタリーの同級生。
ナタリーとの話の後、
二人はしばらく沈黙してしまった。
時折ナタリーが鼻をすする音が聞こえる。
落ち着いたのかナタリーが話し始めた。
「全然関係ないんだけどいい?」
ラウも少し気恥ずかしかったので
話題が変わる事を歓迎する。
「うん、もちろん。」
「セキトの事考えてたんだけど、
鞍つくってもらったでしょ?」
「そうだね、乗りやすくなったね」
「だよね。
で、セキトがドラゴンだって
皆が分かっちゃったよね?」
「そうだね、バレちゃったね」
「ドラゴンに乗りたい人
多いと思わない?」
それは間違いない。
「絶対多いと思う」
「でしょ!
早いし、かっこいいし。」
なによりドラゴンは
その圧倒的力による畏怖と
デザインの美しさによる敬意をもって
人々はある意味恐れ
ある意味憧れている存在だった。
今回セキトは、明らかに人の側で
街や人々を守るために戦った。
人々の中には感謝と憧れしかないだろう。
「でね。」
ナタリーが続ける。
「ラウのお父さんが造ってくれた
鞍があるでしょ?
あれなら誰でも乗れると思わない?」
たしかにそうだ。
ラウはナタリーが言いたいことが
だんだん分かってきた。
「セキトが嫌じゃなかったらだけど
馬車みたいに乗って移動出来たら
人気になると思うんだけど
どうかな?
私達がポートグラスに行ったみたいに。」
「本当にいいかもしれない!
いや、それいいな!」
ラウは二つ返事で同意した。
これから調べたい事がたくさんある。
セキトが色々な場所に行ってくれたら
情報収集出来るはずだ。
ライスの事も気になっていた。
あの後王都中を探したが
痕跡すら見つけられずにいた。
ナタリーの案なら、
ラウは王都を守りながら情報を集めたり
学校の図書館で歴史や知識を調べられる。
セキトが今起きている事の情報を集める。
色々な人と知り合えるだろうし
人の出入りも分かるだろう。
それを仕事として出来るのだ。
今後の事を考えても、
ラウにはとてもいい案に感じた。
「ナタリー天才だよ!
明日セキトに話してみよう!」
次の日の朝。
ラウが目覚めると
珍しくナタリーもまだ寝ていた。
ラウが起き出すと、
その気配で起きたのか
ナタリーも動き出した。
「おはよう、ナタリー」
「おはよう、ラウ。」
よく見ると今起きたという感じではない。
目覚めてはいたが
ベッドに横になっていたようだった。
「具合が悪いの?」
ラウはナタリーが
目覚めたのに活動してなかった事を心配した。
「ううん。
色々考えてただけ。」
「それなら良かった」
表情を見ても調子が悪い訳ではなさそうだ。
「さっそく昨日の話してみよう!」
ラウはローブを羽織ると
ナタリーが着替える時間を取るために
そそくさと部屋を出て食堂に向かった。
いつもと逆だな。
新鮮でなにやら不思議な感覚だった。
食堂の奥のキッチンでは
セキトがすでに朝食の準備をしていた。
まだビスタも起きていないようだった。
「おはよう、セキト」
「ご主人様、おはよう!」
セキトは手を止めずに返す。
「手伝おうか?」
「いやいや、おもてなししたいから
ご主人様は座ってて。」
セキトが言うので
お言葉に甘える事にする。
セキトはとても手際が良かった。
ドラゴンは皆料理上手なのか?
そんな訳はない。
「セキト、料理上手くない?」
「そうでしょ!!
こんな時の為に普段から
PTの食事担当してるの!」
「へー、それはありがたいな」
普段の努力の賜物だったようだ。
しばらくセキトの手際を見ていると
ナタリーが着替えて降りてきた。
「おはようセキト。」
「おはよう、ナタリー。」
「あれ?ビスタはまだ?」
「うん。まだみたい。
もうすぐ出来るから
起こしてきてくれない?」
「はーい!」
ナタリーは返事をすると
降りてきた時よりやや早足で
二階に戻って行った。
ラウも今のうちに着替えを済ませようと
少し遅れて部屋に戻った。
着替えて食堂に戻ると
起きてきたビスタとナタリーが
楽しそうに談笑しながら皿を並べていた。
「あ、ラウ。
おはよう!」
「おはよう、ビスタ」
ラウが戻るとすぐに準備は終わった。
セキトが座るのを待って食事を始める。
「「いただきまーす!」」
セキトが作った朝食は
大柄なドラゴンからは想像出来ない程
繊細で美味しかった。
「でさ、さっき聞いたんだけど。」
ビスタが話し始める。
「あなたたちにしては頑張ったわね。」
昨日の話の事を言っていると
気付いたラウは吹き出しそうになる。
「そ、それよりセキト」
「なに?ご主人様。」
セキトが笑いながらこちらを向く。
どこまで話が漏れているのか
心配になりながら続けた。
「昨日ナタリーが言ってたんだけど」
「うん。」
「セキトが良かったら、
旅行会社やってみない?」
「「なに旅行会社って?」」
ビスタとセキトが異口同音に聞き返す。
この世界には馬車の御者がいるだけで
旅行会社など無いのだ。
「みんな馬車で移動してるけど
セキトに乗ればすぐに着くでしょ?」
「うん。」
「みんながどこか行きたい時、
例えばこの前、僕たちを
ポートグラスに連れて行ってくれたみたいに
セキトが連れて行ってくれたら
移動に使ってる時間を目的地で使えるよね?」
「そうだね。」
「それって、みんな喜ぶと思うんだ。
喜ぶって事は、お金を払ってくれるでしょ?」
「うん、多分そうだね。」
「結構な額を稼げると思うんだ。
馬車の3倍くらいの値段でも
払う人は沢山いると思う。」
「たしかに。」
「そういう仕事をするのを
旅行会社っていうんだよ」
「へー。」
旅行会社については理解してもらえたようだが
あまり気乗りしていない様子だ。
「それにさ」
「うん。」
「みんなドラゴンに乗るのは
憧れがあると思うんだよ」
「そうかな?」
「フォーレ村でも
みんなセキトに乗りたがったでしょ?」
「たしかに。
あれは大変だったよ。」
フォーレ村では村人のほぼ全員が
セキトに乗りたがっていて
一時期フォーレ村上空一周が
村のアクディビティになっていたほど
人気があった。
「時間短縮とドラゴンに乗ってみたいを
両方を叶えられるんだ、
絶対に流行るよ!」
「う~ん。
ご主人様は僕に
それをやってほしいわけ?」
「まぁそうなるかな?」
ラウが返事すると
セキトは考えている様子だった。
しばらく考えていると
誰かがスプーンでも落としたのか
金属音が響いた。
それをきっかけにするように
セキトが応える。
「ご主人様達は特別で
本当はあんまり、知らない人を
乗せたくないんだけど・・・
ご主人様がやってほしいなら
やってみるよ!」
「おお!
やってくれるんだね!」
それからはその旅行会社の名前やら
行先の話やらでみんなで盛り上がった。
全員で相談した結果
会社名は赤竜トラベルと決まった。
ビスタは最後まで赤竜の騎士を推していたが。
楽しい食事が終わり、
片付けをしているタイミングで
ラウはセキトに耳打ちした。
「実はさっきの件には続きがあるんだ」
「なに?」
「仕事をしながら情報を集めて欲しい」
「いいけどなんの?」
「この間の黒竜、
暗黒竜ロスベルクについてだ」
「僕も気になってた。
納得いったよ、了解。」
「あと、そのタイミングで
学生が一人消えているんだ。
僕たちの学校の生徒で
ライスという男の子だ。
僕たちはその子に動きを止められて
現場に駆けつけるのが遅くなってしまった。
関連は分からないけど
おそらく無関係ではないと思う。
その情報もあったらお願い」
「合点承知!ご主人様!」
お願いしたことに対しての反応としては
軽いのが気にはなったが、
いつもの明るいノリとして受け止める。
片付けも終わり、今日の予定の話になると
ビスタが驚く事を言い始めた。
「私はセキトと一緒に
その会社?とやらの準備をしますわ。
ね、セキト。」
「そういう事になりました。」
どんな密約があったのか分からないが
何やら2人の間で話がまとまっているようだ。
「というわけであなた達は今日一日
しっかりデートして仲を深めて下さいね!」
しっかりデートとは
何をすればいいのだろうか。
だが確かにビスタが会社設立に
協力してくれるとなれば
これ以上心強い味方はいない。
ビスタは権力者になればなるほど
顔が効くからだ。
「それではお二人ともごきげんよう。
さぁ、セキト行きましょう!」
「う、うん。
またね、ご主人様、ナタリー。」
終始押され気味のセキトを伴って
ビスタはそそくさと行ってしまった。
ラウはナタリーと顔を見合わせると
二人とも思わず吹き出してしまった。
ふとビスタのセリフを思い出して
ラウはぎこちなく目を逸らす。
ナタリーもラウ様子を察したのか
頬を赤らめて俯いた。
「ナタリー、調べたい事があるんだけど」
照れ隠しの為に口を開く。
「な・・・なぁに?」
「この間の黒い竜の事なんだ」
今回もお読みいただきありがとうございます。
いいね、ブックマーク、コメント頂けたら嬉しいです。
励みになります。
体調を崩してしまい、更新が遅れた事をお詫びします。
こんな私の作品ですが、
楽しみにしてくれた方が居ましたら
本当に申し訳ございませんでした。
まだ全快したわけではないので
ペースが遅くなるかもしれませんが
確実に更新していきますので
よろしければブックマークして
お待ちいただけるとたいへん嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
次回もよろしくお願いします。




