赤竜、市民権を得る
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。
一緒に入学するために王都へ来た。
ビスタ
ユーフィリアスの長女で王女。
ラウとナタリーの同級生。
セキト
ラウと従属契約をしている赤竜。
セキトの活躍で街は守られた。
だが、ラウは安心出来なかった。
〔デュランダル、あの竜を知っているか?〕
[名前は暗黒竜ロスベルクだ]
名前は、という事は他の事は
良く分からないのだろう。
〔今日はありがとうな〕
[久しぶりの全力だったな。]
止めをさせなかったラウに
デュランダルの言葉が刺さる。
ロスベルクは生きている。
なぜ王都を襲ってきたのかも分からない。
不安の種を残してしまった事に
ラウはガラにもなく落ち込んでいた。
ユーフィリアスとソフィアは
街の事後処理のため
その場で出来ることをし始めた。
二人が忙しそうだったので
ラウとイリスは挨拶もそこそこに
競技場に戻った。
競技場に被害はなかった。
校長戦は途中だったが、
皆続きを求めたりはしなかった。
対抗戦の勝敗はついていたし
なによりどこから見ても
ラウ&イリス組が勝っていたからだ。
相手の校長と副校長も認めていた。
今起こった事を
イリスはスカーレットに説明し
スカーレットが皆に説明した。
「ということで対抗戦は
ユーシリアの勝ちとします。」
いまいち盛り上がりに欠ける。
それはそうだろう。
おそらく皆をこの場に縛り付けた犯人
ライスの姿は見えず、
街で何が起こったか詳細も分からない。
会場の皆が色々気になっている。
メディアの鼻っ柱を折る事には成功した。
今後はおとなしくなるだろう。
ましてや今回のユーフィリアスの活躍を
どこかから聞けば尚更だろう。
反省してくれればいいのだが。
こうして対抗戦はユーシリアの勝利で
幕を閉じた。
ラウには嬉しい事もあった。
ナタリーが何も被害を
受けなかった事もそうだが、
セキトが皆にいい意味で認知された事だ。
ユーフィリアスは街の被害を食い止めた
赤竜を城に招き、労った上報酬を与えた。
かなりの報酬だったようだ。
セキトのPT、クリオシタスの面々も
街を守ったという事で冒険者の皆共々
褒美を貰った。
そしてセキトはもう一つ報酬があった。
セキトがドラゴンとして市民権を得たのだ。
市民や冒険者の間で
セキトがドラゴンだったという話と共に
街や市民を守るために
必死で戦ったという話が拡まった。
その話は瞬く間に国中に拡がり、
特にセキトが戦う姿を直接見た西の商業区では
どの店に行っても
「店を守ってくれた英雄から金はとれない」
と、支払いをさせてくれなかったらしい。
そして良かったことがもう一つあった。
ユーフィリアスを始め、
勇者PTグラディウスの面々が
全盛期に勝るとも劣らない力を
持っている事が市民に再認識された。
王が自ら剣を取り、
暗黒竜を撃退したのを目の当たりにした。
そして大司教の癒しの力、
魔法学校校長の魔法の力。
それらを見た市民が、
やはりグラディウスは未だに強く
国は王都は守られている、と改めて認識した。
そしてそれはラウには困った事だった。
人々は言い始めた。
「グラディウスと共に戦った
あの少年は誰だ?!」
もちろんある程度は予想できた。
今考えると仮面を被ったり
ラウが誰だか分からないように
することも出来ただろう。
しかし被害を食い止める事を
優先してしまった。
大きな力には大きな責任が伴う。
人々がその力を知れば知るほど
責任や期待は大きくなることを
ラウは前世で嫌という程味わっていた。
今世は自分の為に生きると
決めているラウは、しばらく
目立たないようにするしかなかった。
次の週末。
ラウはセキトを労うために
ナタリーとビスタを誘って
4人で食事をとる事にした。
今日はラウとナタリーが
入学前にお世話になっていた女神亭だ。
ここも西の商業区にあった。
被害の中心地からは離れているので
大きくはないが被害はあったようだ。
壁の所々に焦げた跡がある。
街はほとんど元通りになり
人々は活気を取り戻していたが
全く同じではないだろう。
ラウがこの女神亭を選んだのも
フレイの料理を食べられるこの宿を
守りたかった気持ちもあったからだ。
シルが運んでくれたアセードを
皆掲げて乾杯をする。
「かんぱーい!」
このアセードなる飲み物は
甘味の中に酸味があって美味しい。
4人は誰一人酒を飲めない。
セキトは下戸で、後の三人は
未成年である。
見た目も美しいアセードは
お祝いの席でも人気で
よく使われている飲み物だった。
ビスタが口火を切る。
「それにしてもセキト。
父上が褒めていたわ。
誰も犠牲にならなかったのは
セキトのおかげだって。
素晴らしい働きだったって。」
「ありがとう。
まぁご主人様に任されたし。」
セキトは褒められて嬉しそうだ。
「さすがよね、セキト。
心が強いって尊敬しちゃう。」
ナタリーが言う。
そう、状況は皆が言う程簡単ではない。
ラウ達が到着するのが少し遅れたら
セキトは命の危険があった。
ドラゴンは強い。
この世界において、ドラゴン程
神に愛された種族は無いだろう。
生まれながらの戦闘力、
人から見ると永遠ともとれる長い寿命。
全てにおいて別格の存在だ。
しかし今回は相手もドラゴンだった。
おそらく、暗黒竜は赤竜よりも
格上の存在だろう。
セキトが踏ん張れていたのは
守るものがある強さで
いつ倒されてもおかしくなかったのだ。
「セキト。
ちゃんと言ってなかったけど
今回は本当にありがとう。
今日は好きなだけ飲んで食べて
楽しく過ごそう!」
ラウに礼を言われて
セキトはこの日一番の笑顔を見せた。
宴を終えて、シルに挨拶をする。
テーブルは空き皿で一杯だった。
会計は見た事がない金額だったが
それだけセキトが満足してくれたなら
今日の目的は達成だ。
「ねぇご主人様。
今日こそは泊って行ってよ?」
今日はラウもそのつもりで
ナタリーもビスタも含め
寮に外泊することを伝えていた。
「もちろんだよ」
「やったぁ!!!」
「私達もお邪魔します。
よろしくね、セキト。」
「わぁお!
ナタリーとビスタも!!
嬉しすぎる~~~!」
無邪気にはしゃぐセキトを
ラウは初めて可愛いと思った。
セキトの家でありラウの別邸である
家に着くと、前と様相が変わっていた。
シンプルだった前の内装と比べて
豪華な内装になっていた。
「ご褒美ももらったし、
被害にあったお店の応援したくて
いっぱい買い物しちゃった。」
本当にラウがやりたい事を
このドラゴンは代わりにやってくれる。
ありがたかった。
「それでさ、ご主人様。
この家のお金と渡してくれたお金
お返ししたいんだけど。」
「その話はなしね。
前にも断ったはずだけど」
セキトは一瞬うつむいたが諦めたのか、
内装に興味深々の女性陣の相手をし始めた。
「これはね~
ビルのお店のカーテンでね~
これはね~・・・」
全ての家具を説明したら日が明けてしまう。
いいところで切り上げるために
ラウは話を逸らした。
「お風呂に入って寝よう」
「はぁ~い」
皆一様に返事をすると
順番にお風呂に入った。
家にはラウ用とナタリー用の
着替えまで用意されていた。
ひとりで準備しているセキトを想像して
今迄泊まりに来なかった事を反省した。
これからはもっと泊まりに来よう。
ビスタはナタリー用の着替えが
ぴったりの様子でいたく気に入っていた。
「気に入ったならそれ、
ビスタ用にしよう。」
セキトはビスタまで
度々泊めようとしていた。
「おやすみなさ~い。」
全員がベッドにつこうと部屋に入ると
当然の様にナタリーは
ラウと同じ部屋に入ってこようとした。
もちろんこの広い家には
整えられたゲストルームが
いくつもあった。
「え?一緒に寝るの?」
驚いたラウがつい言ってしまった。
「え?違うの?
せっかく一緒にいられるのに。」
良くない言い方をしてしまったかと
慌てたラウだったが、
ナタリーの顔をみると
単純に不思議そうな顔をしている。
気に障ったというよりは
驚いているようだった。
「ごめんごめん。
そうだよね」
ナタリーは安心したような顔をして
一緒に部屋に入った。
中にはちゃんとベッドが二つある。
それぞれ横になると
ナタリーが言った。
「あのね、ラウ。
ちょっと話したいことがあるんだけど
いいかな?」
「もちろん」
そしてナタリーは話し始めた。
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