暗黒竜来襲
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。
一緒に入学するために王都へ来た。
セキト
ラウと従属契約をしている赤竜。
普段は角の生えた人の姿で
冒険者として生活している。
考えることに集中したラウの
思考は高速で答えを導いた。
これはライスの魔法と同じ現象だ。
しかしなぜこの状況になるまで
気付かなかったのか。
目の前の相手に
集中してしまっていたのは事実だ。
そしてこれも原因の一つだが
今も敵意は感じない。
影に気付かなかったのは天気の影響もあった。
雲の影でモノの影は見えない。
目を凝らすと身体を昇っている蛇の様な
影が見える程度だ。
そしてこの魔法は恐らくライスの
オリジナルであるはずだ。
という事は今起こっている事は
ライスの仕業だという事だ。
ラウはもう一度気を張りめぐらせ
あたりの様子を探る。
これは人を特定できる程便利なものではなく
基本的には敵意や悪意を探るものだ。
周りに敵意はない。
が、やはり市街地の西側に
相当大きな敵意がある。
その時、耳鳴りのような金属音が響く。
《ご主人様?大丈夫??》
セキトだ。
《セキト。
大丈夫ではないが今はとりあえず
危険なわけではない》
《なんか空から来てる!》
《そいつか!ものすごい敵意だ》
《ご主人様が動けないなら
僕が代わりに戦っておくよ。》
《頼む》
セキトの存在は本当に心強かった。
ここにはおそらく国の主要戦力の
ほとんどが捕獲されている。
最大戦力である
ユーフィリアスをはじめとする
元勇者PTの全員。
そして本来戦力になるであろう
魔法学校と剣士学校の皆。
特に先生達は大きな戦力だ。
その全員がこの会場に縛られている。
偶然にしては出来すぎている。
何かの意図を感じる。
ふと気付きラウは愛剣に話しかけた。
〔デュランダル動けるか?〕
[ああ]
〔セキトのところに行って
武器になってやってくれ〕
[ここはいいのか?]
〔ああ何とかする〕
[承知した]
愛剣は小さな矢になって
飛んで行った。
少し前、セキトとその仲間は
冒険を終えギルドに報告に来ていた。
「今日はなかなかの儲けだな。」
戦士でリーダーのジェリコが言う。
盗賊のディーノが答えた。
「途中の宝箱は危なかった。」
罠が仕掛けられた宝箱で
解除し損なったPTは
毒を食らっていた。
「でも何とかなったし。」
その毒を解除したマリアが言う。
PTでは紅一点で僧侶だ。
「みんな強いから。」
セキトが楽しそうに言った。
心強い仲間達だった。
冒険者ギルドは市街地の西側、
西門から入ってすぐの商業区にある。
ギルドへの報告を終え、
報酬の分配をすると
昼を過ぎていた。
「とりあえず一杯飲むか。」
「いいねぇ。」
セキトは酒を飲まないが
仲間達との、この時間が好きだ。
皆が何杯か平らげ
酔いが回ってきた頃だった。
セキトはラウと従属契約をしている。
ラウに危機が迫ると気配で分かる。
契約をしてから初めて、
ラウの焦燥を感じたセキトは驚いた。
《ご主人様?大丈夫??》
《セキト。
大丈夫ではないが今はとりあえず
危険なわけではない》
それならばいい。
とセキトは空からの咆哮を聞く。
「なんだ、この声は?」
ジェリコが反応する。
先程までの酔っ払いは
そこにはいない。
皆装備を手に取り、
ギルトから出ると
すぐに戦闘態勢を取る。
ギルドにいた他のPTや
ギルドの役員も飛び出してきた。
ギルドの役員には歴戦の冒険者も多い。
普段ならかなりの戦力だ。
ギルドに所属している冒険者は
街の危機には優先して対応することに
なっている。
そのために門の近くにギルドがあるのだ。
しかし今回は相手が悪かった。
空を覆う黒い翼が降りてくる。
まるで空から
絶望が降ってきたようだった。
「ドラゴン・・・」
その絶望とは巨大な黒い
ドラゴンだった。
両翼を広げると30mは
あろうかという大きさだ。
咄嗟にセキトはドラゴン語で
会話を試みた。
辺りに金属音の様な
ドラゴンの言語が響く。
しかし無視しているのか
通じていないのか反応はない。
黒竜は問答無用で暴れ始めた。
鋭い爪や頑強な尻尾で
襲い掛かってくる。
「クリオシタス!
いくぞ!
他のPTは市民を守れ!」
ジェリコが指示をする。
クリオシタスとは
ジェリコがリーダーを務める
セキトが所属しているパーティー名だ。
今いる冒険者の中では
クリオシタスが最上位PTだ。
ジェリコの指示を受け
黒竜を攻撃する。
セキトが何とか爪の一撃を止め
その間にジェリコが斬りかかり
ディーノが矢を放つ。
しかしジェリコの剣もディーノの弓も
ダメージを与えているようには見えない。
他のPTやたまたまギルドにいた
冒険者達は市民に犠牲を出さないよう
避難誘導する。
黒竜はクリオシタスを無視して
爪や尻尾で店を破壊し、
人々を襲う。
多くの冒険者がなんとか市民と
自分の身を守ろうとするが
あまりうまくいっていない。
このままでは犠牲が大きくなる。
セキトは自分が
ドラゴンだという事を隠していた。
クリオシタスのメンバー達にも
言っていない。
人として暮らしたかったからだ。
しかしこの状況を打開出来るのは
自分しかいない。
人々は蟻のように蹴散らされている。
仲間と街を守るためにセキトは決心した。
ラウとも約束したのだ。
セキトは赤竜に変わった。
というより戻った。
これが本来の姿だ。
ジェリコ達は驚く。
PTメンバーがドラゴンだったのだ
それも当然だろう。
急に現れた赤竜を見て
ようやく黒竜はこちらに反応した。
セキトの方を向いて排除しようとする。
赤竜に戻ったとはいえ
黒竜はセキトよりふたまわりは大きかった。
しかしセキトに戸惑いはもうない。
全力で爪の一撃を食らわす。
だが赤竜の鋭い爪をもってしても
黒竜の鱗に傷をつけられない。
固い鱗にはじかれる。
反対に黒竜の爪はセキトの固い鱗を
傷付け、ダメージを与えた。
竜になったセキトをもってしても
かなり厳しい戦いだった。
しかし、傷口からは血が流れない。
セキトは一人ではなかった。
マリアが癒してくれている。
ジェリコの声がする。
「街の脅威に立ち向かってくれている。
あれは間違いなく俺たちのセキトだ。
全力で援護するぞ!」
クリオシタスのメンバーは
セキトのありのままも
受け入れてくれていた。
それがセキトに力を与える。
爪や尻尾で攻撃を加える。
しかしセキトはドラゴンとしてはまだ若い。
対して相手のドラゴンは
大人としても大きなドラゴンだ。
セキトの攻撃は相手の鱗に弾かれる。
そして黒竜の反撃は痛い。
セキトの鱗は黒竜相手の
鎧にはなってくれない。
それでもセキトの心は折れない。
マリアの回復が間に合っていない。
止血するので精一杯だ。
何度爪を当てても、尻尾を当てても
黒竜にダメージが入っている様子はない。
固い鎧がセキトの攻撃を無効化する。
だが、セキトの攻撃は
黒竜の気を逸らす事には成功している。
街は市民への被害は止まっていた。
黒竜もセキトに集中していたからだ。
気が付くとセキトの左耳は
黒竜の爪に剝ぎ取られ
無くなっていた。
首も顔も怪我だらけだ。
しかしまだ動ける。
マリアのおかげで
傷みも最小限で済んでいる。
そしてセキトの攻撃が報われる。
顔を切り付けてきた
黒竜の手を嚙んで捕まえる。
固い生物でも可動部はやや柔らかい。
セキトは黒竜の指を嚙みちぎった。
「ギヤァ!」
初めてダメージを受けた黒竜は
声を上げた。
大したダメージだとは思えないが
まずは一歩前進だ。
「いいぞ、セキト!」
ジェリコとディーノの声がする。
しかし怒った黒竜の爪の一撃が
セキトの肩口に深い傷を負わせた。
「グゥ!」
痛みに一瞬動きが鈍る。
やはり勝ち筋は見えないが
負けるわけにはいかない。
その時だった。
光の矢が飛んできたと思うと
辺りに金属音が響く。
次の瞬間、セキトの右手に
銀色に輝く爪が装着されていた。
デュランダルだ。
セキトは渾身の一撃を食らわせた。
黒竜の肩をデュランダルが切り裂く。
「ギャァ!」
驚きからか痛みからか
黒竜が一歩引いた。
これで五分に戦える。
セキトはさらに力が湧いてくるのを
感じていた。
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