ナタリーの実力
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。
一緒に入学するために王都へ来た。
ビスタ
ユーフィリアスの長女で王女。
ラウとナタリーの同級生。
相手のアーテルは銀のマントだった。
他の代表選手が金のマントなので
ユーシリアと同じ仕組みなら
彼は他の代表選手より一学年下だ。
ラウは最初は校長の息子だから
コネで代表になったのだと思っていた。
がすぐにそれが間違っていた事に
気付かされた。
開始の合図と共に構えると
これがなかなか隙のない良い構えだ。
先ほどの選手とは違い
しっかり構えて様子を見る。
ラウ、というかシンも
相手の実力が分からない、
もしくは同等の場合同じ様にする。
先ほどの選手の様に
いきなり切りかかるのは
愚の骨頂だ。
そんなのは実力差がかなりないと
通用しない。
避けられた際、隙になるからだ。
剣での戦いは攻撃時、
自分よりも相手の体勢が
悪くなるように進めなければならない。
「ディフェンド。」
ナタリーが防御魔法を展開する。
こちらも物理相手のセオリーだ。
ナタリーがラウを見る。
その一瞬の隙を
アーテルは見逃さない。
左右の切り払いからの
突きの三連撃を繰り出す。
次の瞬間。
ラウは目を疑った。
魔法防御に依存せず
左右の切り払いを
紙一重で避けたナタリーは
次の突きを大きくかわして
アーテルの後ろまで回り込む。
「瞬歩・・・」
そう、ナタリーは足に魔力を流し
瞬歩を使って回り込んだのだ。
もちろんまだまだ
ラウのスピードには及ばない。
しかし、シンが剣の指南をした中で
瞬歩を使えたのは死ぬまで稽古を付けていた
ユー坊、つまりこの試合の審判をしている
勇者ユーフィリアスのみで
弟のセルマでさえ身に付けられていない。
シンの剣術の基本ともいえる技だが
それは人外への入口であり
とてつもない動きへの一歩だった。
それを何の指導もしていないナタリーが
まがりなりにも形にするとは
ラウにとって意外な事だった。
そしてそれは審判である
ユーフィリアスにも
同じ驚きを与えていた。
面白いほど目を見開いている。
「アクア!」
後ろに回り込んだ隙に
大量の水がアーテルを襲う。
勇者の加護のおかげで
ダメージは無いようだが
それでも大きく吹き飛ばされた。
吹き飛ばされ立ち上がる
アーテルの動きも素早い。
しかしナタリーの魔法発動速度は
それを上回った。
氷の水槽をまわりに作ると
アーテルを閉じ込めて
その水槽を水で満たす。
ナタリーはそれらの発動を
無詠唱で行った。
アーテルは何とか脱出しようと
水槽を攻撃する。
水槽にヒビは入るのだが
それを一瞬で直していく
ナタリーの氷魔法。
アーテルはなんとかしようと
必死にもがいていたが
動けば動くほど息を使う。
すでに勝負は決していた。
ユーフィリアスが氷の水槽を
剣で一撃する。
ナタリーもそれを見て
水槽を新たに作るのをやめた。
水が会場に漏れると
アーテルは大きく息をした。
「それまで!
勝者、ナタリー!!」
ユーフィリアスが試合を止める。
ナタリーの勝利だ。
勝ち名乗りを受け、
戻ってきたナタリーは
得意気な顔をしてラウを見る。
「見てくれた?」
「もちろん」
いつもの笑顔に戻る。
「ずっと練習してたんだ。
ラウのあれ、凄いなって思って。」
冗談だろ。
あれを指導なしでやるのか?
確かに魔法を学んだ今
魔法側からのアプローチの方が
身に付けやすいかもしれない事は分かる。
魔力のコントロールだからだ。
しかしイリスでさえ、
真似してやってみたのを
見たことがなかった。
ラウは今、とてつもない才能を
目の前にしているのかもしれない。
ユーフィリアスも
口を開けたままこちらを見ている。
ユー坊が瞬歩を使えたのは
勇者として魔法が使えるのと
体術の才能があったのが大きい。
それでも瞬歩をマスターするまで
3年かかっている。
驚きは人一倍だろう。
もちろんナタリーもまだまだ
マスターしたというには程遠いが、
それでも入口には立っている。
戦いでは体術は全てを凌駕する。
魔法にしろ物理にしろ
当たらなければどうという事はない、のだ。
「ずっと練習してたから
ラウの前で出来て良かった!」
「素晴らしかったよ」
「すごぉぉぉぉぉぉい!!!」
審判の娘が飛びついてきた。
客席にいられずに
こちらに回ってきたのだろう。
「ビスタ!!
見てくれてた?!」
「当然!!」
父が審判をしているのだ。
誰より真剣に見ていただろう。
「あの、ヒュンって移動するの
どうやったの?
ラウみたいだった!!」
「魔力を足に溜めて・・・」
二人が話していると
ラウにイリスが話しかけてきた。
「あの子、危険。
才能がありすぎる。
正しい方向に導かないと
とんでもない事になるかも。」
「大丈夫だ。俺がいる」
ラウはとたんにシンの口調になってしまう。
「そしてお前も」
「ん。
とにかく気にかけて。」
言われなくても気にかけている。
前世の記憶を取り戻してからずっと。
ラウは改めて考えると
女神がシンをラウとして転生させた意味が
分かったような気がした。
「次、第三試合!
ユーシリア代表!
ラウディース・マルテル!」
「おおお!
うちのホープのもう一人だ!!」
「彼の体術は凄い!!!」
魔法使いなんですけど。
「シリアス代表!
ミェーチ・クラブリー!」
「うちの裏ボスの登場だ!」
「ここで勝たないと負けだぞ!」
相手が発表された。
ラウはナタリーと向き合う。
「行ってくるね」
「いってらっしゃい。
決めてきて。」
ラウの実力を知っているナタリーは
余裕の表情だ。
「あんまりイジメちゃだめだよ?」
ビスタも勝つ前提で話をしている。
ラウは頷くと入場した。
「怪我しないで帰って来いよ!!」
「これで負けてもまだリードだ!」
ラウの実力を知らない上級生から
応援とも取れない応援が飛ぶ。
ラウは相手を見回す。
立派な剣と金のマント。
最上級生だろう。
審判のユー坊に耳打ちする。
「さっきは立派な王だったな」
「ありがとうございます。」
そして戦闘の準備をする。
といってもリラックスするだけだ。
ラウはこの戦いを
どう進めるか考えていた。
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