魔法使いと元剣神
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
魔法学校の二年生。
ナタリー
ラウの幼馴染。フォーレ村出身。
一緒に入学するために王都へ来た。
ポルックス・レダ
カストル・レダ
銀マント(六年生)の双子。
ラウ達の予選の相手。
ラウは混乱していた。
一対一なら魔法使いとして
戦えばよかっただろう。
でも今は?
複数人の戦いは
前衛後衛と分けた方が
確実に効率がいい。
しかし前衛をやるという事は
剣士の戦いをする事だった。
どちらにすればいいのか
判断が付かなかったラウは
イリス校長の顔を見た。
イリスはラウと目が合うと
首を振った。
魔法使いとして
前衛で戦えという事だ。
先ほどのスカーレット先生の言葉が
蘇ってくる。
「魔法力と応用力で」
それはそれで楽しそうだった。
まずは壁役に徹してみよう。
相手はカストルとポルックスの
双子のレダ兄弟。
二人のコンビネーションは
学校でも随一だ。
魔法使いの複数戦の
参考にもなるだろう。
アラモンド先生が近付いてきて
説明をする。
「校長や私が
ダメージを見て試合を止めます。
守られた方が負けです。」
イリスが見ているなら安心だ。
「即死魔法は何であれ禁止です。
では試合開始!」
アラモンド先生の声が響く。
レダ兄弟は左右に陣取り
フォーレ村組は前後に陣取る。
「フェニックス!」
一番最初に魔法を唱えたのは
ナタリーだった。
ラウの身体を炎が包む。
「なにこれ?」
「上手くいってれば
ダメージバリアになるはず。」
そんな呪文があったとは知らなかった。
「アイス!」
「ウォーター!」
ほぼ同時にレダ兄弟が呪文を唱える。
正確にラウの中心部に
魔法は飛んできている。
炎に氷と水は定石だ。
魔法を選ぶ判断力も流石だった。
しかも打ち合わせなしで
違う呪文を同時に打ち込んできた。
ラウはナタリーの魔法の効果を
確かめてみることにした。
炎の衣にだけ当たるように
呪文を受けてみる。
氷も水も、炎の衣に当たると同時に
書き消えていた。
「すごいよ、ナタリー!
相手の魔法が消える!!」
ナタリーは
相手から目を逸らすことなく
ラウに微笑んだ。
ラウと違って
余裕がある訳ではないらしい。
「チェーンフロスト!」
「エレクトリカルパレード!」
レダ兄弟は初撃でラウから
ナタリーに目標を変えた。
素早い判断力と阿吽の呼吸だ。
ナタリーは詠唱することなく
ディフェンドの魔法を展開する。
「約束!攻撃!」
理解したのかラウと目を合わせると
防衛に振っていた意識を
攻撃に向ける。
ラウは降り注ぐ氷の塊と雷撃から
ナタリーを守るように動く。
雷撃はかなり速く
常人では視認することは難しい。
しかし、ラウは難なくこなしていく。
こと戦いにおいて味方と
ペースを合わせる事は重要だ。
味方同士で合わせる事はもちろん
相手のペースに飲まれると
いいことは何一つない。
ラウもナタリーに合わせるために
出来るだけ短い言葉で指示をした。
「ウォール!」
レダ兄弟を
人の二倍ほどの高さの壁が覆う。
「アクア!」
その壁を水で満たす。
さながら深いプールのように
レダ兄弟を飲み込んだ。
直接攻撃しないとは
実にナタリーらしい戦い方だ。
ようやく水面から顔を出した
ポルックスが呪文を唱えて壁を壊す。
闘技場一面に水が拡がっていく。
息を整える間もなく
ナタリーの攻勢は続く。
「フローズン!」
氷点下の吹雪がレダ兄弟を襲った。
濡れている身体に
これは応えるだろう。
「ファイヤーウォール!」
「ウインド!」
レダ兄弟は凍りかけた体で
何とか呪文を唱える。
炎の壁で出来た熱気を
風で運び周りの空気を温めた。
流石の対応力だが
二人が防御にまわったという事だ。
「ファイヤーストーム!」
ナタリーはその隙を見逃さず
炎の渦を作り出して二人を包む。
その瞬間、ナタリーが作った
炎の竜巻は何かにかき消された。
「それまで!」
これ以上は危ないと判断したのか
アラモンド先生が止めた。
「勝者!
フォーレ村コンビ!!」
コンビ?!
お笑い芸人の様な呼ばれ方に
ラウは納得いかなかったが
ナタリーが嬉しそうだったので
勝ち名乗りを受け入れた。
見ると、心なしか
イリスも嬉しそうだ。
「凄かったぁ!」
客席に戻ると
ビスタが叫びながら寄ってきた。
「銀マントに勝つとか
強すぎでしょ!」
「ナタリーの魔法、さすがだわ!」
アストンとオルフェも
二人を称賛する。
「まぁ私は」
ビスタが得意気に言った。
「二人が勝つと思ってたけどね!」
アストンとオルフェが
顔を見合わせて苦笑いするのが見えた。
「本校代表を発表します!」
全ての試合を終え、
大広間に集まった生徒の前で
スカーレット副校長が言った。
あれから同学年はおろか
三・四年生まで集まってきて
銀マントに勝った緑マントに
称賛の雨あられを
口々に浴びせてくれた。
ソル一行や、ルイーズ、アロマまでもが
褒めちぎってきた。
やっとの思いで大広間に
着いた頃には
ナタリーは疲れた様子だった。
「本校代表!
金からフレール!
そしてベネジクト!」
広間を歓声が包む。
「そして、紫からライス!」
皆がざわめいた。
確かにいい戦いをしていたが
ライスはまだ五年生だったからだ。
「そして、さらに下級生から、
緑のナタリー!ラウ!」
広間は割れんばかりの
拍手喝采だった。
しかし、レダ兄弟が
選ばれなかったのが
ラウは少し気の毒だった。
相手がラウでなければ
かなりいい勝負をしていただろう。
有効打が一つもなかったのは
ラウが壁役として動いたからで
良い攻撃をしていた。
申し訳ない気持ちで
レダ兄弟に視線を向けると
こちらに駆け寄ってきていた。
「おめでとう!」
「おめでとう!」
例によって異口同音で
話しかけてくる。
ラウは正直まだ
見分けも付かない。
「俺たちに勝ったんだ。
選ばれると思ってたぜ!」
レダ兄弟の右側が言った。
「対抗戦も頑張ってくれよな!」
今度は左側だ。
「それじゃあな!!」
気持ちの良い兄弟で
ラウは安心した。
それでもまだ見分けが付かなかった。
その日はそのまま大広間で
夕食になった。
「ラウ、ありがとう!」
祝福の嵐にもみくちゃにされて
話が出来なかったナタリーが
ようやく落ち着いて話しかけてきた。
「うん、こちらこそありがとう」
ラウもお礼を返す。
「それにしてもいつの間に
あんな凄い呪文開発したの?」
フェニックスの事だ。
「あれは前から考えてて・・・」
ナタリーの口調は歯切れが悪い。
「それより、途中で
”約束”って言ってくれたよね。」
「うん、言ったね」
「あれって村でした
”あの約束”のことだよね?」
「そうだよ」
「あれは戦闘中も有効なのね。」
「もちろん、そうだよ」
「ありがとう!」
当たり前の事を聞かれただけの
気がしたが、ナタリーはかなり
嬉しそうな表情をしている。
その日ラウは
とても満ち足りた気分で
眠りにつくことが出来た。
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