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いざ出発

毎日、魔法の練習・学習をしていた二人は

いよいよ村を旅立ちます。


読者の方々も期待を胸に出発してください(笑)


それからいくつかの季節が過ぎ、

ラウも11歳になった。


いよいよ王都に向かう時が近づいている。


魔法学園は誰でも入学できるが、

入学テストとして実技試験・筆記試験が行われる。


そして、それらの結果によって

成績順にクラスが編成される。


貴族達は階級によって

成績に少し上乗せがあるらしいが、

平民が上のクラスに入ることも

あるらしいので

加点はそれほどでもないのだろう。


もちろんラウやナタリーは田舎村出身なので

上乗せは期待できない。


だからこそ、

実技は毎日の練習がものをいうはずだ。

筆記の方も、二人で行くと決めたあの日から

お互いに支え合いながら、

しっかり学んできていた。


「ラウ、そろそろ支度しなさい。

 今日くらいナタリーちゃんを

 迎えに行ってあげたら?」


朝食を終えると母親が切り出す。

ここ数日、父も母も少し口数が少なかった。

一人息子のラウが王都に行くのだ。

寂しくないはずはなかった。

それと同時に、ラウも寂しさを感じていた。


転生意識が覚醒してからの約1年、

本当にかわいがってもらった。

家族の愛を知らないラウに、

たっぷりの愛情を注いでくれた。

家族愛とはどういうものか、

十分に教えてくれていた。


「そうしようかな」


ラウは応えると、父が引き継ぐ。


「お前の荷物は出しておいてやる。

 俺からの餞別も合わせて、な。」

「それなら安心だ!いってくる!」


真面目が服を着ているような父が

確認してくれるなら安心だ。


父はティガといい、村で鍛冶屋をしていた。

といっても田舎町なので鍛冶のみならず、

大工仕事の様なものもしている。


経営する「アンティガ」は

鎧から家具まで扱っていて出張補修も行う。


店名の「アン」は母の名前だ。

ラウは看板を見るたび、微笑ましく思っていた。




「ナタリー!迎えに来たよ!」


ナタリーの家の前に着くと、

ラウは玄関に向かって言った。


すると、窓から顔を出したナタリーの母が

驚いたように言った。


「あら!ラウが迎えに来てくれるなんて

 どういう風の吹き回し?!

 もしかして、嫁取りの挨拶かしら?」


この地方では、結婚の際、

婿が嫁を実家まで迎えに来て

両親に挨拶をする風習があった。


「やめてよ、おばさん。

 まだ僕たちそんな年じゃないよ」

「でも、ナタリーを一生守ってくれるんでしょ?」


「それは約束したけど・・・」

「だから私達、安心してナタリーを出せるんだから。

 ラウ、ナタリーをお願いね。」


「まかせて!」


それは自信ある。

記憶覚醒後は夕食後に剣の訓練もしていた。

そのおかげでシンの動きも戻ってきていた。

全盛期の30%くらいだろうか。

まだ少年の身体ではそれが限界だった。

少し違和感はある。

時に少年とは思えない力が出ることがあった。


もちろんこの世界では前世のシンは

「魔王と刺し違えた英雄」

ということになっている。


こんな片田舎の村でさえ、

皆が知っているのだから

勇者であるユー坊たちが

しっかり伝えてくれたのだろう。

この人達、俺の前世を知ったらどう思うだろうか。

もっと安心してもらえるだろう。


ただし、とてつもなく

面倒くさい説明がいるだろうし、

色々話をさせられること請け合いなので

誰にも言ってなかった。

特に口止めされてもいないので

女神的には問題はないのだろうが。


「ラウ兄ちゃん!」


ナタリーの2歳下の妹、バレリーが顔を出す。


「おねぇちゃんねぇ、

 昨日からすっごく気合入ってたよ!

 服から何から色々迷ってたみたい!」


9歳にしては少しませたことを言う。


「でもこれでラウ兄ちゃんが

 ほんとのお兄ちゃんになるんだね!

 バレ、お兄ちゃん欲しかったからうれしい!」


「こら、バレリー!なんてことを言うの!」


怒ってるのか照れているのか、

顔を真っ赤にしながらナタリーが顔を出す。


「ラウ!迎えに来てくれたの?!

 昨日はそんなこといってなかったのに!

 すぐ行くから待ってね!」


「わかった!待ってる!」


毎日迎えに来てくれていたのだ、

今日多少待つくらいどうってことはない。


しばらく待つとナタリーではなく

ナタリーの父が顔を出した。


「嫁取りの挨拶なら、私も挨拶しないとな。」


そう言うとにこやかにラウに話しかけた。


「ようこそラウ。

 どうぞナタリーを取っていってくれ。」

「だからまだ僕たちはそんな年じゃ・・・」


この世界では平均寿命の関係か

結婚出来る年齢は16歳からと早いが、

それでもまだ5年はあった。


しかもそんなに早く結婚するのは職人で

学生は婚約するのみで、表向きは学業に専念。

結婚は卒業してからが一般的だった。


「年は関係ないだろう。お互いの覚悟の問題だ。」


いや、関係あるだろ。


この家族は悪ノリが過ぎるな。

この様子ではナタリーも

昨日から散々からかわれていたのが想像出来る。


「もう、お父さんまで!」


とはいいつつ、

荷物をまとめて出てきたナタリーも

止めはしなかった。

見たことがないほど顔が赤くなっているのと、

まったく目が合わないのは気のせいだろう。


ラウはナタリーの荷物を自然に持つと、

ナタリーは向きを変えて両親に挨拶した。


「お父さん、お母さん!

 今までありがとうございました!

 頑張ってくるので安心してください!」


王都の学校に行き、学生寮に住むということは

田舎町出身の者にとってはかなり覚悟がいることだ。


1年に1回帰ってくるとはいえ

生活拠点を変えるのだ。

王都で就職でもしたらこの家を拠点とするのは

最後かもしれない。

11歳の少女にとってはかなりの決断だろう。


挨拶をしたナタリーの目には涙が溢れていた。

が・・・


「いや、馬車までみんなで見送りにいくよ。」


少しフライングだったようだ。




「それじゃあみんな、行ってくるね!」


村はずれに呼んでいた馬車に乗り込むと

ラウとナタリーはみんなに挨拶した。


フォーレはあまり大きくない村なので

ほとんどの人が見送りに来てくれていた。

やはり、田舎の村は温かい。


「ラウ、ナタリー元気でやるんだよ!」

「しっかりね!健康には気を付けてね!」


みんなの声が飛ぶ。


「ありがとう!しっかり勉強してくるよ!!」

「みんな~!元気でね~!」


ラウとナタリーは口をそろえて言う。


「それじゃ出発しまっせ。」


御者の声と共に馬車は二人を乗せて

王都に向かって走り始めた。

心地よい風が二人の乗った馬車と

村との間を吹き抜ける。

空は青く、果てしなく広がっていた。


今回は旅立ちの章です。

いよいよ王都に向かって旅立ちました。

期待を胸に旅立つ二人はどんな活躍を見せてくれるか。

私も楽しみです。

ぜひ、応援、フォロー、コメントお願いいたします。


※12/11改行等修正

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― 新着の感想 ―
さあラウの3回目の人生!?本格スタートですね、何が待っているのか?楽しみ(*´▽`*)
ナタリーが微笑ましいですね。 鍛冶屋アンティガはカッコイイ名前ですし、繁盛していそうなイメージを持ちました。里帰りの話などで出てくるのでしょうか? ラウとナタリーのこれからの生活が楽しみです。
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