恩返しと修行
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから転生した少年。
ソフィア
シンのPTメンバーの僧侶。
今では聖女としてあがめられている。
イリス
シンのPTメンバーの魔法使い。
ラウの魔法の師匠。
セキト
赤竜。人型になっている。
ソフィアはオクト公に説明する。
「オクタヴィア公、
庭の一角に転移魔法陣を
敷かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
転移魔法は2種類ある。
魔法陣へのみ飛べる「マタスト」と
どこでも自由に飛べる「テレポ」だ。
ソフィアはマタストのみしか
使えなかった。
飛ぶには陣が必要だ。
「そんなに遠慮することはない。
シンの部屋がそのままになっている。
そこを使うがいい。」
「ありがとうございます。」
これは破格の待遇と言えた。
ソフィアが庭の一角、と言ったのは
玄関から来客として入るためで
シンの部屋はもちろん屋敷の内部だ。
オクタヴィア公は
屋敷にいつでも無断で入ってよい、
と言ってくれたのだった。
「ありがとうございます、父上」
「お前の部屋だ。
今後も自由に使いなさい。」
メリットもセルマも頷いている。
姿が変わった息子を苦々しく思うどころか
喜んでくれているのが笑顔から伝わる。
ここにも自分の居場所がある。
やはり会いに来て良かったと
ラウは心から思えた。
「今日はもう遅い。
明日に備えて皆休むがよい。」
挨拶を終えてラウは自分の部屋に引っ込む。
ソフィアとセキトも一緒だ。
オクト公はああは言っていたが、
被害状況確認等今からも忙しいのだろう。
「ソフィア、いい考えとは?」
ラウは着替えをまとめながら
ソフィアに聞いた。
「明日になってのお楽しみよ。
それよりここに魔法陣を張ってもいいかしら?」
ソフィアも2人になり聖女様ではなく
僧侶ソフィアにすっかり戻っている。
昔を思い出してしまう。
「もちろんだ。
その魔法陣は俺が魔法を覚えた際にも
使えるのか?」
「いいえ。
自分の魔法と自分が作った魔道具だけ。
じゃなきゃすぐ
泥棒だらけになっちゃうでしょ。
仕組みは分からないけど。」
「そうか。
自分で敷かないといけないんだな。
もう一つ聞きたいのだが
テレポの方は使えないのか?
ソフィアが使えない魔法があるのが
違和感があるのだが」
「テレポは私は使えない。
イリスとは違うの。
皆が全部の魔法を使えるわけじゃない。
私の魔力の源は信仰だから
属性魔法も基本的には使えないの。」
「そういうものなのか。
分かった、ありがとう」
僧侶の魔法と魔法使いの魔法とでは
違いがあるらしい。
それからラウとセキトは
風呂に入るために部屋を出た。
ソフィアは陣を敷いてからにするらしい。
風呂を終え、部屋に戻るとソフィアは居なかったが
一足先に寝ることにした。
次の朝。
昔話に花を咲かせながら朝食をとる。
誰も一番聞きたいだろう魔王戦の
話は聞こうとしなかった。
魔王を倒した、という結果だけあれば
シンの最後の話を聞きたくないのだろう。
朝食を終えるとティアを帰すために
転移魔法で城に行くことにした。
セキトは部屋で待たせておく。
シンの部屋は興味を惹いたのか
セキトは喜んで留守番を買って出た。
「この部屋面白いものばっかりだね!」
シンの遺品に興味津々のセキトを置いて
城の王室に転移する。
ユー坊は席を外していた。
ティアに協力のお礼を言うと
自分も両親の顔が見れたので、と
逆にお礼まで言われた。
ティアに感謝して、
王によろしく、と伝え
オクトに帰るために再び転移した。
と思ったのだが、着いた先は
学校の校長室だった。
まだ少し眠そうなイリスがそこにいた。
「ラウ、ソフィアおはよ。
何かあった?
ラウの修行?」
「おはようございます、イリス。
ちょっと相談がありまして。」
「ラウの修行がてら探索に行きませんか?」
「いく」
2秒で話はまとまってしまったが
付き合わせてる身のラウは口を挟めない。
お楽しみとはこれか。
まったくソフィアにも困ったものだ。
イリスも何も聞かずに即答とは。
ソフィアはイリスに状況を説明したが
そもそも調査にいくのだ。
伝えるような情報はほとんどない。
まずはセキトを迎えにシンの部屋に行く。
「これは誰?」
イリスの疑問も当然だ。
今度はラウがセキトの説明をする。
こちらの方が話が長いくらいだった。
それにしてもセキトにいきなりこれとは。
相手がドラゴンだと知っても意に介さずだ。
セキトが全く気にしていないのが救いである。
「それでイリス。
魔の森まで皆で転生出来る?」
「いけるけど、細かい場所は無理。
見たことないから。」
それでも馬車で一日近くは
かかるだろうから相当助かる。
「ではお願いします。」
「ん。」
全員が緑がかった魔力に包まれたと
思うやいなや、
目の前に見知らぬ森が現れた。
魔の森だ。
数多の冒険者達を返り討ちにするべく
怪しいオーラを漂わせている。
まだ朝だというのに薄暗かった。
もちろん一行には脅しにならない。
魔王城の圧倒的な威圧感に比べれば
なんでもなかった。
しかしさすがは魔の森。
入ってすぐにそこら中から魔物の気配がした。
「とりあえず魔物の気配が
強い方へ行ってみよう」
ラウ達は魔物の気配が強い方へ進む。
すぐに魔物が襲い掛かってきた。
とはいってもまだ入り口近くだからか
ゴブリンやオークがほとんどだ。
普通の冒険者PTでも
Cランクもあれば楽勝だろう。
ラウが魔法で露払いをしながら進むと
ウォーウルフの群れが襲ってきた。
この敵はなかなか手強い。
乱戦になれば初心者PTでは全滅だろう。
しかし、ラウは”散”で一瞬で片付ける。
「ひとついっておくことある。」
イリスが渋い顔で口を開く。
「ラウの修行の件。
魔法を覚えるのにシンの技は邪魔。
命賭けないで強くなれない。
今後、本当に命の危険ない限り
移動以外のシンの技使うの禁止。」
確かにイリスの言う通りだ。
ラウは反省すると返事をする。
「了解、師匠」
考えてみれば
聖女と天才魔法使いがいるこの状況は
願ってもいない成長のチャンスだ。
それからはラウは魔法のみで戦った。
相変わらず森は様々な魔物で溢れていたが
師匠であるイリスの的確な指示もあり
ラウの魔法のみでも戦えた。
イリスだけではなく
セキトもソフィアも空気を読んだのか
ほとんど手を出さなかった。
しばらく進むと、山が見えてきた。
魔の森に抉りこむように入っている
ローグ山脈だ。
岩山の麓に着くと
岩肌にぽっかり穴が空いていた。
そこから魔物の気配は強く感じられる。
地下迷宮だ。
「ここだな」
一行はラウの言葉に頷くと
ダンジョンに足を踏み入れた。
深い穴が一行を飲み込む。
魔の森には怪鳥の不気味な鳴き声が
こだましていた。
今回もお読みいただきありがとうございます。
年末年始はお休みさせて頂いておりました。
インフルにもかかり、刺激的な年明けでした。
本日からまた、再会させて頂きます。
本年もよろしくお願いいたします。
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