魔法を使いたい!
いよいよ本編の始まりです。
よろしくお願いします。
目覚めると来たことのある光の空間だった。
ん?目覚める?
俺は死んだのでは・・・
首を振り、意識を明確にするよう努力する。
目の前には一度見たことのある美しい女性がいた。
「また死んじゃったねぇ」
俺が最初に転生したときに会った、
女神様というやつらしい。
「そうだな。でも今回は世界を救えたから満足だな」
「そうね。
だから今回もご褒美に
転生させてあげるよ。」
なんだと!?
「でも前回は転生したはいいが、
ずっと憧れの魔法がある
世界に転生したのに
剣の才能があったらしく、
魔法使いになれなかったぞ?」
「そんなことはないよ。
魔法をちゃんと学んでたら
かなり使えたはずだよ?」
「本当かよ!
剣は前の人生でもあるからな。
もちろんシンほどの使い手はいないが。
でも魔法は現実にはなかったから
せっかく転生したからには
魔法使いになりたかったのだが」
「じゃあ、そーだなー。
分かりやすく
魔法の才能持って生まれ変わる?
今回はご褒美に私達レベルに
してあげてもいいよ?」
「いや、修行しながら少しずつ強くなりたい。
あと学校で学園生活も送ってみたい。
前世では楽しくなかったのか、
なにも覚えてないからな。
青春ってやつを味わってみたい。
でも今迄の修行の成果も捨てたくないな。
悩むところだな」
「それなら今までのスキルを持ったまま
魔法の素質だけさらにあげとくね。
ちゃんと魔法の勉強するんだよー」
お?それは強くてニューゲームというやつでは?
それはナイスな提案だ。
ありがたい。
「おっと。
あとはせっかくだから俺が救った
世界で頼む!」
前世は全くいい思い出がない。
今更どこに転生するかのガチャはごめんだ。
「おーけー」
今度の人生は自分のために楽しもう。
そんなことを考えてるうちに、俺は意識が薄れていった。
しばらくすると俺は目を覚ました。
うまく転生したみたいだ。
体は・・・少し幼いか?
ベッドから起き上がると
目の前にある鏡で自分の姿を確認した。
年は10歳くらいか?
服からすると中流階級だろうか。
「目が覚めたかな?」
どこからともなく女神の声が聞こえる。
「君はラウディース。
田舎の鍛冶屋の息子で、10歳。
小学校も終わりの年だよ。
0歳に転生すると色々問題があると思って、
10歳まで記憶を封印しておいたよ。
今から、ここまでの10年分の記憶を戻すよ。
ちょっと酔うかもしれないけど。」
言葉とともに少年の記憶が流れ込んでくる。
たしかに少しフラフラする感じはあるが
耐えられないほどではない。
「さて、私の手助けはこれで終わり。
この人生はご褒美の人生だから
しっかり楽しんでね。」
言われなくてもそのつもりだったが、
女神のお墨付きをもらったのは安心だ。
ありがとうーーー
感謝の言葉は女神に届いたかどうか
返事がないので分からないが
俺はこの人生をめいっぱい楽しもう!
と大きく伸びをした。
「ラウ、起きたの?おはよう!」
元気な若い女性の声が聞こえる。
この少年の母の声だ。
この少年というのは変だな。俺の、だな。
「おはよう」
部屋から出ながら俺は答えた。
パンの香りがほんのり流れてきた。
「早く顔洗ってきなさい。朝御飯よ。」
「はーい」
少年の記憶のせいか自然と子供らしく答えると
少し照れ臭かった。
親子とはこんなものか。
これだけで少し幸せだな。
心が温かくなるのを感じる。
顔を洗って食卓に着くと父が座っていた。
「ラウ、おはよう。」
「おはようございます」
大きな手の優しそうな父親だ。
と思うとともに愛情があふれた。
この少年は、もとい、俺は両親が好きなのだな。
母がミルクをもって食卓に着くと、
祈りの後、食事が始まった。
ただのパンと目玉焼き、ハム、ミルクだが、
久しぶりの団らんの食事は本当においしかった。
傍から見れば、ただの平凡な朝の風景だ。
しかし俺は、一生この食事を
忘れることはないだろう。
しばらく食事を楽しんでいると
玄関をノックする音が聞こえた。
コンコン。
「あらナタリーちゃんが来たわね。
ラウ、忘れ物はない?」
「ないとおもう!」
本当に自然に子ども口調になるんだな。
とても不思議だ。
荷物を持って玄関に出ると
そこには同じ年代位の女の子が立っていた。
素朴な身なりだが、整った顔立ちをしている。
幼馴染のナタリーだ。
「おはよう!ラウ!」
「おはよう、ナタリー」
「学校にいくよ!」
「うん!お父さんお母さん、いってきます!」
「いってらっしゃい!」
いつもの朝。
しかしいつもと違う朝だ。
今日から新しい人生だ。
溢れんばかりの朝日を浴びながら、
俺は跳ねるように小走りに学校へ旅立った。
今回はまだ導入です。
次回は明日の昼にアップします。
是非読んで下さい。
※改行等修正12/11