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覚醒

【主要人物紹介】

ラウ

 剣神シンから転生した少年。

ナタリー

 ラウと共に上京した幼馴染。

ビスタ

 ナタリーの友達で王女。



「サンダー!」


ゲイルが電撃魔法をフライング気味に放つ。

読んでいたのかナタリーは反応していた。


「ディフェンド!」


ゲイルが杖を振るのとほぼ同時に

防御魔法を唱える。

魔法はゲイルより早く発動する。


イメージの具現化スピードは

魔法の戦いにおいて重要だ。


サンダーは広範囲の攻撃魔法だが

ナタリーは難なく弾いた。


「ファイア!」


「アクア!」


「サンダーボルト!」


最初の魔法をはじかれて焦ったのか

ゲイルが連続で呪文を唱える。


しかしナタリーには届かない。

すべて途中ではじかれていた。


ゲイルはペースを渡すまいと

連続で攻撃する。

試合はしばらくゲイルのペースで

進んでいるように見えた。

実際、ナタリーは防戦一方だ。


しかしラウにはナタリーが

初めての実践を楽しんでいるように見えた。


「アイス!」


ゲイルの攻撃を全てしのいだナタリーは

次は自分の番、と攻撃に転じる。


無数の氷のかけらがゲイルを襲う。

ゲイルはなんとか防御魔法でしのぐ。


「ファイアボール!」


相当な大きさのファイヤーボールが飛ぶ。

ゲイルはフットワークと防御魔法で

ギリギリ避ける。


次の瞬間。


アイスの氷の塊とファイアボールが

同時にゲイルを襲った。


ラウは度肝を抜かれる。

おそらくアラモンド先生もだろう。


魔法の同時発動は()()()でしかできない。

しかし無詠唱は一つの呪文でも

かなり難易度が上がる。


さらに二つ同時となれば尚更だ。

何も習っていないナタリーが

それをこなしているのは僥倖といえた。


すでに才能の片鱗を見せてはいたが

ここまでとは誰も予想していなかったろう。

ラウですら気付かなかった程の成長だ。



ゲイルは何とかアイスに対して防御したものの

連続で襲い掛かるファイアボールを

さばき切れずに直撃を許した。


「それまで!」


アラモンド先生が試合を止める。

誰が見ても明らかに

負けているのにも関わらず

先生の防護壁によってノーダメージのゲイルは

負けを認めずに続けようとしていた。


「終わりです、ゲイル。

 あなたの負けです。」


無理やり引き離されて

また暴れるゲイルをよそに

先生がナタリーの手を取った。


「ナタリーの勝利!

 お互いに礼!」


ナタリーの手を挙げて

勝利を宣言する。

真剣だったナタリーの顔がほころぶ。


その後の礼もおざなりにゲイルが叫ぶ。


「おい、平民!

 お前ズルしただろ!

 あんな速さ、魔道具かなにかだろ!!」


引き離されても往生際悪く喚いている。


貴族達てさえ呆れる様子をみて

首を振りながらソルが止めた。


「もうよすんだゲイル。

 どう見てもお前の負けだった。

 これ以上は恥の上塗りだぞ。」


まだ何か言おうとするゲイルを制して

ソルがナタリーに言う。


「すばらしい腕前だ。

 今度は僕と一戦お願いする。」


ナタリーは軽く頷くと、ラウの隣へ戻った。


しかし、やはりセンスがない連中は困る。

今の戦いで実力差が分からないのは

経験不足なのか圧倒的にセンスがないのか。


この場でナタリーに勝てる可能性があるのは

アラモンド先生とラウだけだろう。

ラウが勝つにはシンのフットワークや

体術を使って、という条件が付く。

素の魔法勝負ではかなり厳しい。


それほどの実力だった。

しかも氷魔法である”アイス”は水と風の混成魔法、

さらに火魔法のファイヤーボール。

3属性同時の無詠唱魔法である。

生半可なレベルではない。


「ナタリー無詠唱とは凄いね!」

「さすが私のお友達!

 素晴らしかったわよ!」


素直にラウは感心した。

ビスタも歓喜して迎えた。


「へへへ。ちょっとやってみたかったんだ!」


ナタリーも素直に喜んでいる。

聞けば、防御魔法を使っている間に

詠唱を発動が抜いた気がしたので

無詠唱が出来ると感じたらしい。

せっかくだから多重呪文にしたみたそうだ。


とんでもない才能だな。


これはイリスを抜くのは

ナタリーが先かもしれない、と

ラウは思わざるを得なかった。



その日は学校中が大盛り上がりだった。

他のクラスにも噂が広まったのか

食事の席では他のクラスの生徒、

特に平民組がナタリーを褒めちぎり

さながら祝賀パーティの様だった。


そして貴族からも

祝福の言葉をもらっていた。


どうやらソルの腰巾着として

ゲイルはなかなかの鬱陶しさを

発揮していたらしい。


貴族の者にも不評を買っていた様だ。


特にビスタの喜び方は凄かった。

学年最強はナタリー、だの

学園始まって以来の天才、だの

思いつく限りの言葉で

ナタリーを褒めまくっていた。


それを見聞きしながら

悔しさを隠そうともしないゲイルが

途中で何度か襲い掛かろうという素振りをみせ

そのたびにソルとフィーゴが抑える

という事を繰り返していた。


寮に帰るとさらに歓迎された。


「やはり君は平民の希望だ!!」

「ナタリー万歳!!」


貴族を完膚なきまでにやっつけた

ナタリーを囲んで大騒ぎは夜中まで続いた。


しばらくはその話題で

ナタリーはどこに行っても

ヒロインのようだった。



ナタリーの決闘の話題も

ひとしきり落ち着いた頃、

学生達は夏休みの予定の話になってきた。


ラウ、ナタリー、ビスタも

夏休みの予定について話していた。


「あなたたちは田舎に帰るの?」

「悩んでるの。

 パパたちは帰って来いっていうけど

 ここにいた方が勉強に集中出来るし、

 お仕事もあるし。」


お金の心配はなくなったナタリーだが

本屋の主人ペリエに恩義を感じていたらしく

アルバイトを続けていた。


「ラウはどうしたい?」


ナタリーに聞かれたが、

ラウにはまだ気になっている事と

やりたい事があった。


魔法の上達のための練習はもちろんしたいが

それよりもセキトの元主人の男が

使っていたような転移魔法を覚えたかった。


しかし調べてみると

それは5年生で習う呪文で

1年生のラウには難しいことが分かった。

それでも設定した場所に移動するだけで、

自由な場所への転移となると7年生の魔法だった。

今覚えるには()()が必要だ。


もう一つはシンの父、オクタヴィア公に

会いたいという事だった。

さすがにそこにナタリーは連れていけない。


悩んだ末に転移魔法の()()を優先する

気持ちが大きくなっていた。


「色々悩んだけど、僕は残る事にするよ」


ラウは答えると

ナタリーが間髪入れずに言う。


「それなら私も残る!」


「私は帰ろうかしら。

 父上、母上とも会いたいし。

 ナタリー達とはいつでも会えるし。」


ここは王都。

ビスタの実家である王城は王都内にある。


「いい事考えた!

 休みの間にお城でお食事会をしましょう!

 それから、もう一つ。

 お城の外へ遊びに行きましょう!

 いいかな?」


断る理由もない二人は二つ返事で了承する。


「それじゃ約束よ!

 夏の思い出を作りましょう!」

「うん!約束ね!」


二人にとっても楽しみが増えた。

特に城の外へ遊びに行くのは大賛成だ。

セキトに乗ればかなり遠くまで行けるだろう。


そんなことを考えて過ごすと

すぐに夏休みに入った。



夏休みに入り、

ラウとナタリーは休みを楽しんだ。

もちろん勉学・実技は毎日鍛えた。


セキトにも久しぶりに会った。


ナタリーはまだ少し、

セキトといると緊張してしまうようだった。

心なしか固くなっている。


セキトは話を貯めていたのか

色々な話をしてきた。

主に最近の報告だ。


セキトは冒険者としても相当活躍していた。

かなり有名なPTのメンバーになったらしい。


セキトの戦闘力を考えれば

当然の事だろう。


「ご主人様、学校は楽しい?」

「うん、まぁまぁだよ」


「ところでセキト。

 今度城の外に遊びに行こうと

 思ってるんだけど、乗せてくれる?」

「当たり前でしょ。

 君はご主人様なんだから。

 僕が命令を断ることはないよ。」


「命令ではないけど」

「じゃあ命令してくれればいいよ。」


それを聞いてラウの中に色々な計画が浮かぶ。

どれもなかなか良さそうなアイデアだ。


「それに一度くらい村に帰るのもいいかも。

 ねぇナタリー。」

「う、うん。」


緊張しているナタリーも同意してくれた。


それから、ラウは初めて自分の家に行った。

セキトのために買った家だ。


「どうぞ我が家へ。

 君の家だけど。」


笑いながらセキトが言う。

不思議そうにラウを見るナタリーに


「ビスタの時にもらった報酬で

 セキト用に買ったんだ。」


と説明する。


「へぇ~。

 でも確かにセキトは家もないものね。

 ラウはもう家も持ってるのね~。」


感心しているナタリーとラウを

セキトが案内した。


家具やインテリア等を心配していたが、

セキトはなかなかのセンスだった。


「ご主人様の好みが分からなかったから

 必要最低限にしておいたよ。」


言葉通り最低限の家具とカーテン。

インテリアはほとんどないが

それでも殺風景だと感じないほどには飾られている。


リビングには数人が座れるテーブルとイス。

自炊もしているのか、

キッチンには一通りのものが揃っていた。


「最近ね、冒険者の仕事で

 少しお金が入るようになったから

 だんだん揃えたんだ。

 ご主人様にも

 あと少しで返済できるよ。」

「それは本当にいらないから。

 好きなものを買って」


せっかくの提案を拒否されて

不満そうなセキトをよそに

ラウは初めて見る自分の家を見て回る。

ラウ達が泊まる事を想定しているのか

ゲストルームにベッドも置いてある。

シーツ類もちゃんと洗濯してあるらしく

清潔に保たれていた。


その日の夕食はセキトが張り切って

料理を腕を振るった。


なかなかの味だった。

三人で食べるのは久しぶりだ。

三人は食事を楽しんだ。


食事を終えると

セキトは泊まって行けとうるさかった。


学校が休みという事もあり、

寮は外泊に厳しくはない。


しかし、安全管理のため

無断での外泊は禁止されている。

届け出をしていない今日は無理だった。


理由を説明して、

「またの機会に」というと

やっとセキトは引き下がった。


二人も後ろ髪引かれる思いだったが、

門限までには寮に帰った。



次の日。

ナタリーはアルバイトに出かけた。

ラウは計画を実行することにした。


今回もお読みいただきありがとうございます。


基本的には土日を除く月~金の昼に更新する予定ですが

年末で仕事が忙しく、

スケジュールが厳しくなっています。

出来る限りアップしますが、

年末年始、お休みさせて頂くかもしれません。


見逃さないよう、ブックマークをお願いします!


また、いいね、コメント頂けたら嬉しいです。

励みになります。


次回もよろしくお願いします。

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