魔法学校の入学試験
【主要人物紹介】
ラウ
剣神シンから二度目の転生をして
魔法使いを目指す少年。
元々は尾崎進一郎という社畜。
ナタリー
ラウの幼馴染の少女。
ラウと共に魔法学校に入学するために上京。
ビスタ
ナタリーの友達。シンの義理の姪。
とても気持ちのいい目覚めだった。
小鳥たちの希望に満ちたコーラスが
朝の訪れを知らせてくれた。
今日は念願の魔法学校初日。
入学試験だ。
制服に袖を通しながら、
ラウは昨日のことを思い出していた。
昨日は驚く事ばかりだった。
しかし、よく考えてみると
どれも自然な流れだった。
魔王討伐の勇者が国を譲られるのは
大好きなRPGでもよくある流れだ。
公爵家から王妃になるのも
身分としては相応しいだろう。
一番以外なのはビスタが
同じ学年だという事かもしれない。
ビスタとラウはほぼ一年誕生日が違うが
ちょうど同じ学年になる範囲だった。
もうすぐラウの誕生日なので
あり得る話だろう。
昨日の帰り際は3人が同じ学年である事で
終始盛り上がった。
馬車で送ってもらった帰り道にも
ナタリーはずっと楽しそうに話していた。
これから3人の学園生活が始まる。
相変わらずナタリーの朝は早く、
部屋はすでに片付いていた。
もう食堂にいるだろう。
デュランダルを腰に差し、食堂に降りる。
シルの元気な声が聞こえてきた。
ラウはナタリーの姿を確認すると
同じテーブルに座る。
席に着くとすぐに料理が運ばれてきた。
今日はナタリーが気を利かせて
先に頼んでくれたらしい。
「はい!おまちどう!
今日の朝食だよ!」
今日はメープルトーストと
ソーセージのチーズがけに
オニオンスープだった。
美味しく平らげた二人は
宿を出払う準備をした。
セキトは昨日のうちに宿を出ていた。
ラウはユーフィリアス王経由で
新しい屋敷を手配してもらっていた。
支払いは褒美の小切手で十分だった。
セキトもラウ達が寮に入るため
いつまでも宿に泊まっては居られない。
屋敷を買ったことを告げると
さっそく昨日のうちに
引っ越していったのだ。
多少のお金を渡してあったが
家具類がどうなっているのかは
まるで分からない。
また週末にでも見に行こう。
一緒に冒険するのもいいかもしれない。
宿の清算を終え、シルにお礼をいった。
「たまには顔を出しておくれ。」
シルの気遣いがありがたい。
2人は学校に向けて歩き出した。
いよいよ学園生活の始まりだ。
「楽しみだね!
同じクラスになれるかな?」
歩きながらナタリーが言う。
制服がとても似合っている。
風に揺れるブラウンの長髪に
青い宝石の髪飾りが良く映えている。
立派なカバンはビスタからの贈り物だ。
こうして改めて見ると、
ティアの少女時代と遜色のないほどだ。
「そうだね。
多分大丈夫だと思うけど」
実際ナタリーの魔法の才能は凄い。
魔法の能力に関しては現段階では
ナタリーの方が上だと認めざるを得なかった。
本当に女神はラウに魔法の才能をくれたのか
疑いたくなるほどだ。
そして努力家でもあった。
教科書もすでにほとんど覚えているだろう。
学校に着くとまずは寮に案内された。
ラウ達は平民寮でビスタは貴族寮なので
ここで会う事はないだろう。
荷物を置き、集合させられたのは
広い中庭だった。
まずは実技試験が行われる。
人数の関係で貴族2班と平民3班の
それぞれ50人ほどの5グループで行われた。
魔法には属性があり、
火・水・風・土・光・闇の6属性。
それから無属性には
転移魔法・召喚魔法等がある。
他にも組み合わせで新たな属性のような
魔法を使う事が出来た。
水と風で氷魔法、
火と土で流星魔法という具合だ。
その組み合わせを考えるのも
個々の魔法使いの腕の見せ所なのだ。
その点、イリスは天才だった。
シンのPTメンバーの魔法使いだ。
魔法を学べば学ぶほど、
イリスは天才だと思い知らされた。
彼女は多彩な魔法を使っていたが
書物で彼女の魔法を見たことがなかった。
それだけオリジナルな魔法を使っていた
ということに他ならない。
今は何をしているのだろうか。
試験は最初に属性の適性を測る。
殆どの人はこの適正は生涯変化しないが
まれに成長する者もいる。
試験官がナタリーを呼ぶ。
「ナタリーさん!測定器の前に。」
思った通りナタリーは
すべての適性が高く
特に水・風・光は、すでに最高値を示した。
「おおおおお!」
「すげー!全部高いぞ!」
「みっつも最高値だ!!記録じゃないか?!」
「しかも光属性だ!」
「とんでもない数値だ!」
四方から歓声が上がった。
3適性が最高値は珍しいらしい。
ナタリーは小躍りしてラウに笑顔を向けた。
ラウの番になった。
「ラウディース君!測定器の前に。」
女神は才能をくれたと言っていた。
全てが最高値では目立ちすぎる。
正直気乗りしなかったが
測定しない訳にもいかず
恐る恐る測定器に近付いた。
ところがその心配は杞憂に終わった。
全て拍子抜けするほど平凡な数値だった。
ただすべて同じ数値だったことに安心する。
得意がない代わりに苦手もない。
それにしても女神はちゃんと仕事したのだろうか。
全員が測定を終えると
実技試験が始まった。
正面の的に向かって思い思いの
魔法を2つ、順番に飛ばす。
的の傷みを考慮し、
測定が下の者からということで
ラウは後ろから10番目、
ナタリーは最後だった。
ラウも意外に測定の成績は良かったらしい。
全て同じ適性ということが利いたのだろう。
「次はラウの番だね!頑張って!」
正直こちらは自信があった。
なんといっても杖はデュランダルである。
杖を構えると脳内で話しかけた。
〔そういえば魔法の相方としては初めてだな
頼むぞ、ぶっ放してくれ〕
[誰に言っている。任せておけ。]
「ファイアーボール!」
火属性の基本呪文だ。
しかしその速さと大きさは
今までの受験者に比べて群を抜いていた。
大きめのテントくらいの大きさの火球は
素早く飛んでいき的を焦がした。
「ウインドカッター!」
風魔法の基本攻撃呪文を唱える。
魔法で強化された的を切り刻む。
「おおお!彼もすごいぞ!」
「実践向きなのか威力が凄い!」
「すごいよ!さすがラウ!!」
多少目立った感はあるが、
この分だとナタリーは間違いなく
一番上のクラスに入るだろう。
同じクラスになるためには
ここで点を稼いでおきたかったので
背に腹は変えられない。
それから数人が終わったが
ラウを超える者は現れず
ナタリーの番が来た。
「私の番だ!よく見ててね!」
「うん!がんばって!」
「アクア!」
ナタリーはやはり凄かった。
初心者用の杖で
25mプールを埋めるほどの水を飛ばす。
「シャイン!」
光が粒となって的を攻撃する。
呪文が命中しても的はしばらく光っていた。
「なにあれ?」
試験の後、ラウは
見た事のない魔法に驚いて聞いた。
「光魔法に少し工夫したんだ!」
「凄いね!いつの間に練習したの?」
「ラウを驚かせようと思って
少しずつ練習してたんだけど
うまくいって良かった!」
「よーし、僕も学科頑張るぞ!」
「私も負けないよ!」
ラウは知っていた。
入学試験レベルなら
ナタリーは満点を取るだろう。
次は学科試験だった。
教室に移動するとすぐに試験は始まった。
問題は比較的簡単だった。
ラウは何度も見直した。
こういう所は社畜時代の習性だろう。
試験が終わると昼食だった。
広間の食堂に一同が会す。
今日は一年生しかいないので
だだっぴろい食堂の1テーブルだけ
人口密度が高い。
「お二人さん、すごかったね!
特に実技はびっくりしたよ!」
そばかすのある少年が
二人に話しかけてきた。
栗色の髪をすっきり整えている。
「僕はアストン。
僕も自信あったんだけど、
二人にはかなわないな!」
素直そうな笑顔で好感が持てた。
「ほんとに!!
私も自信があったんだけど
見事にへし折られたわ。」
横から話しかけてきた少女は
意志の強そうな口調だ。
金髪を赤いシュシュで束ねている。
「私はオルフェリア。
オルフェでいいわ。よろしくね!」
「私はナタリー、こっちはラウ。
こちらこそよろしく。」
聞くと二人はナタリーの前と
その前に実技試験をしたらしい。
という事はラウよりも
魔法適性値が高かったという事だ。
その後も二人のおかげで
楽しく昼食をとることが出来た。
それにしても・・・
ビスタの姿が見えない。
本当に入学するのだろうか。
しばらく談笑していると
先生が前に出てきて言った。
「はい、新入生のみなさん!
お待ちかねのクラス発表をします!
今から壁に張り出しますので
各自確認して、こちらから5クラスに
分かれて着席するように!
特別な場合を除いて、
一年間そのクラスで活動します!
いいですね!」
「「「はい!」」」
新入生が異口同音に返事する。
それを聞いて
先生は大きく横に杖を振った。
と、右側の壁に
クラス分け表が張り出された。
ラウはナタリーに手を引かれて
クラス分け表を見に行った。
今回はようやく入学試験です。
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