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王都と少女とお嬢様

【主要人物紹介】

ラウ

 剣神シンから二度目の転生をして

 魔法使いを目指す少年。

 元々は尾崎進一郎という社畜。

ナタリー

 ラウの幼馴染の少女。

 ラウと共に魔法学校に入学するために上京。

ビスタ

 ナタリーの友達。お金持ちらしい。


しばらくドラゴンの背中の景色を

楽しんでいると王都が見えてきた。


人生初のドラゴンの背中は

乗り心地が良かった訳ではない。


鞍がもなく不安定で鱗も固くゴツゴツしていた。

それでもドラゴンに乗っている、

という事実でラウは高揚感を抑えられなかった。


ドラゴンは魔力で補完して飛んでいるらしい。

少し大きめに魔力を使うと

乗っている我々まで包めるので

落ちる心配はないとの事だった。

それを聞いても少女達は

ずっと悲鳴をあげていた。


ドラゴンが見られると騒ぎになりそうなので

王都の少し手前で降りると

セキトは人型になり徒歩で王都に入った。


門番にはラウの保護者という事にしておいた。


王都に着くとおろおろしている

ビスタの従者がいた。

慌てて近づいてくる。


「ビスタ様!

 どれだけ心配したことか!」


ビスタを引き渡す。

後でこってり絞られるだろう。

ビスタがナタリーに言った。


「今日はありがとう。

 ナタリー、友達になってくれてありがとう。

 カバン、ちゃんと使ってね。」


ラウに向き直って言う。


「ラウさん、助けてくれてありがとう。

 おかげで命拾いしました。

 ひどく驚く事ばかりで

 今日は何もできませんでしたが

 お礼はまた改めてさせて頂きますね。」


礼儀正しく従者と共にお辞儀をすると

行ってしまった。

今日はもう大丈夫だろう。


ラウとナタリーは宿に帰る。

本当に今日は色々あって

少年のラウは少し疲れていた。


ジグロス王国の首都、スターンレイトは

さまざまな種族が暮らす他種族国家だ。

とはいえ、人間の王都、住民の6~7割は人間だ。


あとの3割ほどはドワーフ、エルフ等の

亜人と呼ばれる種族で、

ごく少数、高知能の魔物の亜種もいる。

爬虫類型、鳥類型、哺乳類型など

本当にさまざまだ。


基本的には身分が保証されているか、

言語によるコミュニケーションが出来、

住民登録さえすれば誰でも住むことが出来る。


セキトが人型でさえいれば

特に問題なく滞在出来るだろう。

ただし、長期滞在するのであれば

住民登録に行った方がいい。

セキトに説明すると、

明日にでも行って来るとのことだった。


今回はラウの保護者という事にして入国できたが

それはそれで治安上どうなのだろう、

という疑問が湧いてくる。

多種族国家ゆえ

そこは多少仕方ないのかもしれない。



セキトに聞きたい事も山ほどあるが

とにかく今日は疲れた。

明日からおいおい聞くことにしよう。


宿に戻ると、三人で食事をし、

セキトは部屋をとる。


人型のセキトは何も問題なく宿を取れた。


セキトの当面の生活費や活動費は

ラウが出すことにした。

使役されていた身で金銭は持っていない。


あとで返すと言ってきかなかったが

ラウにはシンの有り余る程の財産がある。

正直どちらでも良かった。


食事の時には、ナタリーがアルバイトを決めた事

その流れでビスタと友人になった事を聞いた。

それにしても街中で襲われたのは気になる。


セキトは明日住民登録をしてくると息巻いていた。


ラウはナタリーの生活費も出したかったが

アルバイトもいい社会経験だと思ったので

口出しはしないでおく。


入浴を終えそれぞれの部屋に戻り

眠りについた。



それから数日は穏やかに過ぎた。

時には宿にこもって

魔法の座学の復習もした。


セキトの方も順調で、住民登録も終え

ぴったりの仕事も探してきた。


冒険者だ。


セキト程の戦闘力があれば

かなりの難易度のクエストが出来るだろうし

冒険者は本当に色々な種族がいる。

PTをうまく組めるのか少し不安はあるが

冒険者はセキトに向いているだろう。



入学試験の前日、

ラウはナタリーをアクセサリー店に誘った。

『絆の指輪』を買った店だ。

ナタリーが見とれていた髪飾りを

入学前にプレゼントしたい。


あの時は持ち合わせがなかったが

今はラウの財布は充実している。

早めに買おうと決めていた。


店に着くとナタリーは、

ラウが買い物に来たと思ったのか

ラウから離れて色々見て回っている。


「やっぱり綺麗~。」


ナタリーはこの間の髪飾り前で足を止める。

ラウは店主に言った。


「この髪飾り下さい!」

「はい、毎度!!」


言うとすぐに梱包を始める。

手を動かしながら店主が言う。


「贈り物ですか?」

「はい!とても・・・大切な・・・」


ラウは思わず口ごもった。

友達に、ではせっかくのプレゼントが

台無しになるような気がした。


「・・・人に」


ナタリーは驚いている。

ラウはナタリーが

何に驚いているのか分からなかった。


店主から袋を受け取り、支払いをすると

ナタリーに向かって言った。


「これ、欲しそうだったから

 プレゼント!」

「こんなに素敵なもの・・・

 ありがとう!」


頬を赤らめながら、満面の笑みで

ナタリーが言う。


「でもこんなに高い物大丈夫?」


お金はどうしたの?という意味だろう。

そのために昨日の夜、

セキトと口裏合わせをした。

朝からセキトの冒険に付き合って、

そこで思わぬ臨時収入あったことにしておいた。


本当はセキトの装備の買い物だったのだが。


「昨日の臨時収入だよ!」

「そうなのね!

 本当にありがとう!

 大切にするね!」


ナタリーは、ラウが見たかった以上の笑顔で

返してくれた。

プレゼントしてよかったと思う。


二人はそれぞれ幸せな気分で店を出る。

ナタリーはさっそく髪飾りを付けている。


「これ欲しかったんだ!

 でも結構高かったから

 お金を貯めて、いつか買おうって思って。

 でもラウのプレゼントなら余計嬉しい。

 ・・・似合ってる?」


本当は少女には少し大人びていて

あと何年か後の方が似合うだろう。


しかし青く透き通った宝石は

ナタリーのイメージにぴったりで

とても似合っているように思う。


「とっても似合ってるよ!」


ラウが言うとナタリーは

さらに踊るような仕草を見せた。


髪飾りで盛り上がりながら

どこへともなく歩く。

そろそろ陽も高くなり

それぞれの飲食店から

食欲をそそる香りが漂ってきていた。


と明らかに高級そうな馬車が通る。

窓のある小部屋の様な造りで

白塗りの壁には馬と花が金で装飾されている。


「素敵な馬車ね。」


ナタリーが言う。

すると二人を抜いたところで馬車が止まる。


中からはビスタが飛び出てきた。


「ナタリー!ラウ!

 探しましたわ!」


聞くとあれから毎日

街中を探し回っていたらしい。


「お二人は今日は

 何か予定がおありですの?」

「いや、とくにないけど・・・」


「それでは是非

 この間のお礼をさせて頂けないかしら?」


ナタリーと顔を見合わせる。

せっかく探してくれたのだ。

断る理由もなかった。


「お昼はお済みかしら?

 今からでもご都合よろしければ

 お乗りになって。」


ビスタの誘導で馬車に乗る。


見るからに高級な馬車に

ナタリーは分かりやすく緊張していた。


三人が乗り込むとこの間の従者がいた。

ビスタが紹介する。


「こちら私の執事のセバスチャン。

 セバスチャン、ナタリーとラウよ。」

「ご紹介に預かりました、

 セバスチャンと申します。」

「ラウディースです」

「ナタリーです。」


「この間はお嬢様を

 お助け頂いたにもかかわらず

 ご挨拶しそびれてしまい

 大変失礼いたしました。

 まことにありがとうございました。」

「いえ、なんでもありません」


挨拶を済ませて走り出した馬車に揺られながら

ナタリーの髪飾りにビスタが気付く。


「あら、ナタリー。

 素敵な髪飾りね!」

「ありがとう、ビスタ。

 これは大切な・・・ラウにもらったの!」


大切なもの、と、ラウにもらったの、と

ごっちゃになっている。

ラウは笑ってしまった。


ビスタは何かを察したように微笑む。


「ラウさん、とてもいいセンスね!」

「ありがとう!

 ラウでいいよ」


「それなら私もビスタでおねがいしますね!

 改めてよろしく、ラウ。」

「よろしく、ビスタ」


そんな会話をしていると馬車が止まった。


「皆様到着しました。

 馬車をお降りください。」


セバスチャンに促されて三人は馬車を降りる。


ナタリーは息を飲んでいる。


圧倒されるほどにそびえたつ建物。

美しい薄青い壁に装飾が施された入口。

両脇には衛兵が立ち、その後ろには

国旗と騎士団旗がなびいている。

庭には豪華な噴水があり、

その中心には立派な女神の彫刻がある。


「ラウディース様、ナタリー様

 ようこそスターンレイト城へ!」


そこはスターンレイト城、

この国の王城だった。


今回はビスタのお礼に招かれた二人。

次回はさらなる展開が待ち受けています。

是非読んで頂けたら嬉しいです。


いいね、ブックマーク、コメント頂けたら嬉しいです。

励みになります。


基本的には土日を除く月~金の昼に更新します。

次回もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ビスタってお姫様だったのか……。 何かあったなら、セバスチャンの首が飛んでいたのかも? お咎め無しで良かった〜。
ビスタさんお姫様だった?(;^ω^)
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