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6話

数年前 ウィリアム第二王子視点


「クレアお姉様! これ、あげる!」


 昼下がりの王宮の中庭で、第二王子のウィリアムは、花を編んで作った冠をクレア妃に渡した。 

   

「あら? 私にくれるの? ありがとね」


 クレアお姉様は花の冠を受け取ると、頭に乗せてボクの事をギュッーっと抱きしめてくれた。


 時間が空いた時はいつも遊んでくれる優しいお姉様、ボクはそんなお姉様の事が大好きだった。それに仕事の時のお姉様はとてもカッコいい。


『国民の役に立てない王妃は必要ありません!』


 クレアお姉様はよくそう口にする。そのため国民からの人気は凄まじかった。それなのに……


──残念ながら……クレア妃は亡くなられました……


 ベットに眠るお姉様を見つめて国一番の医者が力無く首を振る。


「嘘だ……信じられない! どうしてお姉様が!」


 ボクはお姉様の手を握ると必死に呼びかけた。いつもの明るくて美しかった面影はどこにもなく、昔のような温かみを感じられない……その手は氷のように冷たかった。




* * *


現在 ウィリアム視点


「クレアお姉様!」


 自分の叫び声に起こされて目を覚ますと、そこはボクの部屋だった。あれは……夢か……


 クレアお姉様が亡くなってから定期的に昔の夢を見る。夢の内容は大体同じで、決まって最悪な気分になる。背中は汗で濡れているし喉もカラカラ、おまけに目元も赤くなっていた。


「認めない……ボクはパトレシアなんか認めない!」


 お兄様が近いうちに結婚する。その噂は瞬く間に王宮に広がった。みんなどことなくお祝いムードだけど、ボクは絶対に認めない。


 王妃はクレアお姉様以外ありえない。だいたいパトレシアは村の娘らしい。そんな田舎者に王妃が務まるわけがない!


「ウィリアム様、朝食を持って来ました」


メイドはパンとスープを乗せたトレーをテーブルにおいた。ここ最近、シェフが変わったのか料理が美味しくなった。それに体調も良くなった気がする。


「ねぇ、兄さんの結婚式はいつなの?」


「えっと……来週には行うとの事です」


「そうか……分かった」


 ボクはメイドを部屋から追い出すと、朝食をとりながら思考を巡らせた。


 きっと貴族たちもパトレシアの事をよく思っていないはずだ。絶対に結婚を阻止してやる!




* * *


 時間はあっという間に過ぎていき、ついに当日を迎えた。大ホールには貴族や令嬢たちが、新たな王妃を一目見ようと大勢集まっていた。


 会場には様々な料理が並び、とても優雅な雰囲気が漂っている。でも貴族たちは眉を顰めると、こそこそと王妃に対する不満を口にしていた。


「知ってるか? 今回の王妃は村の娘らしい」


「あぁ……知ってる、噂になってるからな……」


「マルクス王子も一体何を考えているんだ? 田舎娘に王妃が務まるわけがないだろ」


 耳を澄ますと、あちこちで次期王妃パトレシアに対する不満の声が聞こえる。やっぱりボクの思った通りだ。こいつらを味方に付けたら、絶対に式を失敗させられる!


「王妃、パトレシア様のご入場です」


 司会者の声と共にゆっくりと扉が開いた。そしてお兄様にエスコートされながら一人の女性が現れた。その瞬間、ザワザワしていた会場は静まり返り、ただ茫然と彼女を見つめる事しか出来なかった。


 誰しもが田舎娘だと馬鹿にして期待しなかった分、その反動はあまりにも大きかった。銀色に輝く長い髪を花の形をした髪留めで一つにまとめ、ピンク色を基調とした華やかなドレスが抜群に似合っている。


 露出した肩はなだらかな曲線を描き、引き締まったウエストと豊満な胸は理想的な女性の体型をしていた。


 背中を伸ばして堂々と歩く姿には、絶対的な自信と魅力が溢れている。さっきまで文句を言っていたはずの貴族たちもこれには感嘆の言葉を溢した。


「皆様、本日は集まっていただき、ありがとうございます」


 静まり返った会場に澄んだ声が会場に響く。全員が固唾を飲んでパトレシアを見守る中、一瞬ボクと目があって笑った気がする。


(くそ、ちょっと容姿がいいからって、調子に乗りやがって!)


 ボクは貴族たちを押し退けて前に出ると、パトレシアを見上げて声を荒げた。


「待て! こんなの認めない! どこの馬の骨かもわからない田舎娘に王妃が務まるわけないだろ!」

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