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4話

パトレシア視点


「おはようございますマルクス様、ご気分はいかがですか?」


 私は朝食とお薬を準備して王室に向かった。ベットには痩せ細ったマルクスが静かに眠っている。


「おはようパトレシア。うん、とてもいいよ」


 マルクスはゆっくりと起きると、私を見て微笑んだ。大丈夫とは言ってるけど、とてもそうは思えない。まるで老人の様に見える。


「朝食をお持ちしました。体に良い薬草を使いました。よく食べて元気になって下さいね」


「うん……気持ちは嬉しいけど、まだ食欲がなくて……」


「では、中庭で一緒に食事をしませんか?」


「えっ、君と一緒にかい?」


「えぇ、そうですけど、もしかして嫌でしたか?」


「とっ、とんでもない! すぐに行こう!」


 私はマルクスを支えて部屋を出ると、中庭にあるテラス席に腰を下ろした。久しぶりに王宮の中庭を見たけど、相変わらずよく手入れされている。やっぱり体調が悪い時は自然の中に行くのがいいわね。


「どうですか? お口にあいますか?」


「うん、とても美味しいよ!」


「本当ですか? ありがとうございます! 実は私の手作りなんです」


 森で取れた薬草に、食欲をそそる香辛料を加えて作ったスープは大好評だった。焼き立てのパンもペロリと平らげていく。


「あの……せっかくいい天気なので、少し歩きませんか?」


 体調が悪い時は寝るのもいいけど、ずっと部屋に篭るのも良くない。私はマルクスの横に立つと、ゆっくりと中庭を探索した。


「不思議だな……もう何度もみた光景なのに、君と一緒に見ると新鮮に感じる」


 マルクスは目を細めると、中庭を見渡した。


 天気がいい日は一緒に散歩をして、雨の日は部屋でおしゃべりをする。食事も一緒にして、出来るだけ側に居続けた。


 体調がすぐれない時は誰でも不安になる。そんな時に誰かが近くにいてくれると、それだけで安心できる。

 

 少しずつではあるが、マルクスは日に日に回復していった。




* * *


「マルクス様、そろそろ私は村に戻りますね」


 初めは老人のように痩せほせていたが、看病を続けたおかげでマルクスは無事に回復した。青白かった肌に張りと艶やかさが戻り、虚ろだった瞳が今はキリッとしている。


 できる事ならずっと側に居たいけど、今の私はただの村の娘……身分があまりにも違い過ぎる。


 本来なら面会すら許されないけど、今回は看病をする為、一時的に会えただけ。無事に回復したら私はもう用済み。お別れの時間ね……


「待ってくれパトレシア、君には本当にお世話になった。せめてお礼をさせてくれないか?」


 マルクスは悲しげな目で私を見つめると、村に帰ろうとする私を引き留めた。


「そうだ、街に出かけないか? まだ君にこの国の紹介をしていなかったからね」


「そういえば、そうでしたね」


 正直、この国の事は全て把握しているつもりだけど……せっかくのお誘いを断るのは失礼よね?


「では、お願いします」


 マルクスは嬉しそうに頷くと、まず、中央にある噴水広場に案内してくれた。


「ここはね……街の職人たちを集めて作った噴水なんだよ。実はここでクレアに告白をしてね……」


 マルクスは昔を思い出す様にぼんやりと噴水を見つめると、ふちに腰を下ろした。


「それはもう……緊張したよ。でもね、無事に成功したんだ」


「そっ、そうなのですね……」


 改めて過去の自分の告白を聞かされるのは恥ずかしい……あの日の事は今でもよく覚えている。


「そうだ、この近くにおすすめの店があるんだ。紹介させてくれ」


 マルクスが案内してくれた店は私がよく知っている場所だった。よかった〜 まだやっていたのね。


「ここは、クレアのお気に入りの店なんだ。特に好きだったのが……」


「すみません! この特製ピザを下さい!」


 私はマルクスの説明を差し押さえて、注文をした。


「はっ、すみません、つい……」


「いや、いいんだよ。実はそのメニューは……クレアの好物だったんだよ。それでね……」


「一緒に食べに行くのを口実にデートに誘ったのですか?」


 私はマルクスが言おうとした事を先読みして答えた。


「なっ⁉︎ どうしてそれを?」


「女の勘です」


(もちろんそれは嘘。だって私は……以下省略)


「お待たせしました。特製ピザです」


 数年ぶりの特製ピザは昔のままの味だった。とろ〜り溶けたチーズが凄く美味しい。それにトマトソースの酸味とバジルの香りが合わさって無限に食べれてしまう。これは罪深い食べ物ね。


 夢中になって頬張っていると、マルクスが私をジィーっと見つめていた。


「すみません、つい美味しくて……」


「いや、いいんだ。君を見ていると、本当にクレアを思い出すよ」


 マルクスは軽く咳払いをすると、元妻の私に向かって馴れ初めを説明してくれた。

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