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26話

ララ視点


「ララから離れろ!」


 ルークはアモンに剣を向けると、一気に距離を詰めて振り下ろした。


「おっと……危ねぇーな!」


 アモンは私から離れると、獣のように姿勢を落として警戒した目でルークを睨みつける。


「ルーク、どうしてここに?」


「ララが謝る声が聞こえたんだ。大丈夫?」


 ルークは剣を構えたまま私の方をチラッと確認した。


「くそ、邪魔しやがって……お前は誰なんだよ?」


「ララと同じパトレシア妃を守る近衛兵に任命された兵士さ」


「ほぉ〜そうか、ならいい事を教えてやる。ララの目的はパトレシアを殺すことなんだぜ」


「嘘をつくなよ! そんなわけないだろ!」


「さぁ、どうかな? 直接本人に聞いてみたらどうだ?」


「そんなわけ……ララ、違うよな?」


「……………」


「なぁ、違うって言ってくれよ」


「……………ごめんなさい」


 私は目を逸らして俯くと、小さな声で謝った。不意に視界が滲み出して大粒の涙がこぼれ落ちる。


「ルーク……私は殺し屋なの。アモンの言う通り私の目的はパトレシア妃を殺すことなの……」


 出来ればルークには知られないままアモンに殺されたかった……どうして助けに来ちゃったの?


「失望したでしょ? 近衛兵に入団希望をしたのもパトレシア妃に近づいて殺すためだったのよ」


 私は自嘲気味に笑いながら淡々と答えた。もういいや……知られてしまったら隠す必要がない。だからせめて……


「ルーク……あなたはパトレシア様を守る近衛兵なのよ。だから……私を殺して」


「……………」


 もうこれしか道はない……この数日間は本当に楽しかった。最後に死ぬ前にこんな素敵な体験が出来て幸せだった。


「私……ルークに会えて本当によかったよ。短い間だったけどありがとね」


 私は両手を広げると、軽く目を瞑った。覚悟はもう出来た。言い残すこともない。


「ララ、君は本当にパトレシア様を殺そうと思っているの?」


「……………」


「答えてよ、ララ!」


「……………私だって殺したくないわ……こんなに国民から愛されている王妃を殺すなんて嫌よ……」


「そうか……分かった……」


 ルークは剣をしまうと、両手を広げて目を閉じている私に抱きついてきた。


「えっ!?!?! 何⁉︎」


「その答えが聞けてよかったよ」


 ルークは私の耳元でそっと囁くと、アモンに剣を向けた。


「おいおい、剣を向ける相手が違うだろ? ララは殺し屋なんだぜ?」


「違う! 僕と同じ近衛兵だ!」


 ルークは距離を詰めてアモンに剣を振り下ろすと、はっきりとした口調で答えた。私が近衛兵?


「おい、何を言ってるんだ?」


 アモンはルークの剣を真正面から防ぐと、鼻で笑った。


「ララが昔どうだったのかは関係ない! 大事なのは今だ!」


 ルークはチラッと私の方を見て微笑んだ。その言葉がじんわりと心に響いて私を優しく包み込む。


「もうこれ以上ララに関わるな! もうララは殺し屋なんかじゃない! これからは一緒に王妃を守る近衛兵だ!」


 ルークの鋭い剣捌きがあのアモンを追い詰めていく。もしもこんな私の我がままが許されるのなら……


「ララ!」


「うん!……はぁあああ!!!!」


 私は剣を抜くと、過去を断ち切る気持ちで剣を振り下ろした。渾身の一撃はアモンのガードを崩して左肩に当たった。


「っ……調子に乗りやがって!」


 アモンは腕を掴んで引っ張ると、剣を振り下ろした。


「危ない!」


 すかさずルークが助けに入ってくれたけど、驚異的なパワーに押されて2人まとめて吹き飛ばされてしまう……


「たった2人で俺に勝てると思ったのか?」


 正直、ルークと一緒なら倒せると思っていた。だけど、アモンの強さは異常だった。とても私たちだけでは敵わない……





「じゃあ、もう1人増えたらどうかしら?」


 諦めかけていたまさにその時、不意に女性の声が聞こえてきた。えっ、まさかだけど……


「王妃⁉︎ どうしてここに?」


 すかさずルークが起き上がって膝をつく。


「ちょっとララの様子が気になって後をつけていたの。とにかく今はこの男をどうにかするわよ!」


 パトレシア様は剣を構えると、臆する事なく私たちの前に立ってアモンと対峙する。


「ちぃ………流石に3人相手は聞いてねぇーよ」


 アモンはめんどくさそうにため息をつくと、私たちに背を向けて夜の街に消えていった。




* * *


「ふぅ……とりあえずもう大丈夫そうね……」


 パトレシア様は剣をしまうと、警戒していた表情を緩めて私に向き合った。


「ララ、何となく話は聞こえてきたけど……殺し屋だったのね」


「……………はい」


「だけど……もう私を殺すつもりはないんでしょ?」


「はい! もう誰も殺したくありません」


「そう、なら近衛兵としてこれからよろしくね」


 パトレシア様は目を細めて微笑むと、私に手を差し出した。


「本当に宜しいのですか? 私は王妃を殺そうとしていたのですよ?」


「でもそれは昔の話でしょ? これからはその力を私のために使って」

 

 パトレシア様は迷う事なくさらっと答えた。私は本気で王妃を殺そうと考えていたのに……なんて心が広い方なのだろう……


「分かりました。今後はパトレシア様を守るためにこの力を使います!」


 今までは人を殺すことだけが私の唯一の存在理由だと思っていた。でも、パトレシア様が私に生きる理由を授けてくれた。これからは王妃を守るために生きていこう。


「それから……ちょっと耳を貸して」


 パトレシア様は私に手招きをすると、小さな声で囁いた。


「ルークの事は大切にしなさい。自分の事を大切にしてくれる人に出会えたのは幸運な事なのよ」


「そっ、そうですね」


 チラッとルークの方を見ると、本人はキョトンっとした顔で首を傾げていた。自分の事を大切にしてくれる人……確かにルークはいつも私を気にかけてくれた。


 なぜかルークを見ていると心が温まる。でも胸が少し締め付けられて苦しい。この気持ちは一体……


 パトレシア様は、優しい目で私を見つめると、今度はルークの方に向き合った。


「ルーク、あなたのその勇敢な姿勢は本当に素晴らしいわ。これからもよろしくね」


「はい、もちろんです!」


 ルークは元気よく答えると膝をついて頭を下げた。


「では、今日から2人を近衛兵として任命します」


「「よろしくお願いします!」」


 私たちは声を揃えて挨拶をすると、これから従う主人に敬意を示した。 




* * *


アモン視点


「ララが敵国に寝返った⁉︎ どういう事だアモン!」


 ウェルタニア王国のグレイオス陛下は開始早々怒鳴り声をあげた。


「今、説明した通りです。ララがアルバード王国の王妃パトレシアに寝返りました」


 グレイオス陛下は顔を真っ赤に染めてギシギシと歯軋りをする。


「だったら、そろそろ本格的に始めるとするか……」


「始める? 何をですか?」


 グレイオス陛下は欲望に満ちた目を見開くと、剣を抜いて立ち上がった。


「アルバード王国に宣戦布告をする!」

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