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24話

ララ視点


「これで全員終わったな」


 バトラ将軍は木刀をしまうと、地面に倒れている志願兵を見下ろした。私とあれだけ激しい手合わせをしたのに、バトラ将軍は全く疲れた様子がない。やはり格が違う……


「よし、早速合否を発表する!」


 バトラ将軍は全員を並べると、より一層厳しい目で全員を見渡した。訓練場に緊張感が張り詰める。


「まずはララ、合格だ」


「ありがとうございます」


 私は軽く息を吐くと軽く頭を下げた。とりあえずこれで第一目標は達成……周りから拍手が送られて歓声が上がる。


「それから……ルーク、お前も合格だ」


「えっ、ほっ本当ですか⁉︎ ありがとうございます!」


 ルークは私の方を見ると、ピースサインをした。


「今回の合格者はこの2名だ。だが全員三日間よくやった。残りの者は俺の直属の部隊に入るか、元の場所に戻るか選んでくれ」


 バトラ将軍はそう言い残すと、訓練場を後にした。


「ララ、やったな! 俺たち近衛兵だよ!」


「うっ、うん、そうだね……」


「どうしたの? もっと喜ばないの?」


「うん……ちょっと緊張してるだけ」


「そっか……そうだよね……これから大変だもんね……」


 大変なんてものじゃない……私にとってはこれはただのスタート地点に過ぎない。私の目的はパトレシア妃を殺すこと。でも……


(本当に殺さないといけないの?)


 この三日間は大変だったけど凄く楽しかった。最初はうるさいだけの奴らだと思っていたけど、みんな素直で良い人ばかりだった。彼らを裏切るような真似はしたくない……


「これからもよろしくね、ララ!」


「こちらこそ……」


 私はルークと握手を交わすと、無理やり笑顔を作った。もしもルークが私の邪魔をしてきたら……一体どうしたらいいの?




* * *


パトレシア視点


「パトレシア様、少々よろしいですか?」


「はい、大丈夫ですよ」


 自分の部屋で薬草の調合をしながら過ごしていると、バトラ将軍がやってきた。


「もしかして近衛兵の事ですか?」


「はい、その通りです。実はララという人物を近衛兵に任命したのですが……」


「ララ……可愛らしい名前の子ね。まさか女の子なの?」


「はい、そうです……俺も途中までは気づきませんでしたが……腕は確かです。それに王妃と同じ女性同士の方が、護衛をする際に何かといいかと思いまして……」


「そうね、私としても助かるわ。ありがとう。早速その子に会ってみたいわ」


「もちろんです。すぐに呼んできますので、俺はこれで失礼します」


 バトラ将軍は私に深く頭を下げて部屋を出て行った。そしてしばらくすると、ララが部屋に入って来た。


「失礼します……」


 その女性は確かにパッと見た感じだと男性のように見える。髪は短いし、晒しで胸を押さえつけているみたいだけど、ならだかな肩と可愛らしい声が明らかに女性のものだった。


「貴方がララね。バトラ将軍から話は聞いたわ。もう性別を隠す必要はないわよ」


「えっ? バレていたのですか?」


「ふふっ、そうみたいね。ねぇ、貴方はどこに住んでいるの? ここではあまりみない顔ね」


「えっと……はい、生まれはここではありません。なので実はこの国の事はあまり詳しくなくて……」


「でしたら、もう1人の合格者のルークに街を案内してもらったら? 今日の護衛はいいから、まずはこの国の土地を覚えてきて」


「はい、分かりました」


 ララは私に頭を下げると部屋を出て行った。


「緊張していたのかしら?」


 目線を合わせようとしても逸らされてしまう。まるで隠し事がバレないようにドキドキしているような緊張感が伝わってきた。


「少し気になるわね……」




* * *


ララ視点


「お待たせ」


 翌日、私はパトレシア様に言われた通り、ルークに街を案内してもらう事にした。


「おはよう……ってララだよね? めちゃくちゃ美人さんだね!」


「そっ、そうかしら?」


 もう性別を隠す必要がないため、かつらを外して晒しも解いてみた。正直自分の見た目に興味はないけど、美人と言われると嬉しくなる。


「じゃあ早速、街を案内するね」


 アルバード王国は私が生まれ育ったウェルタニア王国とは違って活気があった。貧民街も紹介してもらったけど、そこに住む子たちも楽しそうに笑いながら何かを作っていた。


「ねぇ、子供達は何をしているの?」


「あれは薬草を調合しているんだよ。パトレシア様は国民の健康を守る事に熱心なんだ。だから子供たちにも協力してもらってるんだよ」


「でも、子供が作った薬なんて信頼できるの?」


「心配いらないよ、パトレシア様が直々に指導しているからね。僕も最初は不安だっけど、あの子たちの知識は大人以上だよ」


 ルークは子供たちを見つめると、説明を続けた。


「それに、パトレシア様は子供たちに仕事を与えて下さったんだ。子供達はこの国の宝物なんだって」


 そう語るルークの口調はとても誇らしげだった。


「パトレシア様の事を尊敬しているのね」


「もちろん! こんなに国民に寄り添ってくれる王妃は他にはいない。皆んなパトレシア様の事が好きなんだよ!」


「皆んなパトレシア様の事が好き……」


 貧民街の子供たちに知識を教え、仕事を与え、国民の健康まで考えているなんて……そんな素晴らしい人をどうして殺さないといけないの?


「どうしたのララ? 浮かない顔してるよ?」


「大丈夫。なんでもないわ。他も紹介して」


「もちろん、じゃあそろそろお昼にしよっか!」

 

 ルークの行きつけのお店は、出来立てのピザが絶品のお店だった。


「ここはパトレシア様も好きな店なんだよ」


「確かに……こんなに美味しいピザは初めて食べたわ」


 食事なんて満腹になればなんでもよかった。だからこんな風にちゃんと味わって食べたのは久しぶりな気がする。


「なんだかデートをしているみたいだね」


 ルークは冗談っぽい口調で笑いながらピザを頬張る。


「デート……」


「ごめん、嫌だった?」


「そっ、そんな事ない。ただ……こんなに楽しくていいのかな? って思って……」


「誰だって楽しく生きていいに決まってるよ!」


 ルークはピザを飲み込むと、即答で答えた。でも本当にいいの? 私は殺し屋なのに……こんなに幸せな生活を望んでもいいの?


「ララが昔どうだったのか知らないけど、そんな事は関係ない! 大事なのは今でしょ?」


 ルークのまっすぐな言葉がじんわりと心に響いて、目元が熱くなるのを感じる。


「ありがとう……ルーク」


 素直に感謝の気持ちを伝えると、なぜかルークは照れくさそうに顔を掻きながら頷く。そして……


「ほっ、ほら、ピザが冷めちゃうから早く食べようよ!」


 恥ずかしさを紛らわすように、急いで頬張った。


「それじゃあ次の場所を紹介するね」


 ルークはしれっと私の食事代まで払うと、次の場所を案内してくれた。確かにこれだとデートをしているみたいね……

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