表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/39

15話

パトレシア視点


 ちょうど時刻も夕暮れで仕事終わりの人たちで溢れていた。確かここは……私がまだクレア妃だった頃に訪れたお店ね。ここで初めてイアンと出会って3千本のお酒を注文したわね。


「マスターいつものラム酒を頼むよ」


 イアンはカウンター席に座ると、ちょび髭を生やした店主に声をかけた。


「私も同じのでお願いします!」


 イアンは驚いた表情で私を見て警告を入れる。 


「王妃、流石に女性にこの酒は……」


「心配いりません!」


 私は警告を無視して出されたラム酒を飲み干すと、追加を頼んだ。これには周りでみていた人たちも目を丸くする。


「凄い飲みっぷりだな〜 僕も追加を頼むよ!」


 商談の細かい打合せをするはずだったのに、気がついたら飲み比べが始まっていた。一杯、また一杯と飲み干すたびに歓声が上がり謎の盛り上がりが起きる。そしてついに決着がついた。


「ダメだ〜 僕の負けだ、その体でどうして平気なんだよ〜」


 イアンは顔を真っ赤にしてカウンターにうつ伏せる。あれ? もう終わり?


「よければこの薬をどうぞ、二日酔いを軽減させる事が出来ますよ」


「これはご親切にどうも」


 イアンは手を震わせながら薬を受け取ると、水と共に飲み干した。そして寝落ちしてしまった。


「マスターさん、お金は置いておきますね」


「毎度あり」


「ちなみに、この人はどうずればいいですか?」


「そのうち仲間が迎えに来るはずさ。貴方はそろそろ家に戻りなさい。それと年頃の女性がこんな所に来るのはおよしなさい」


「すみません、気をつけます」


 外に出るとすっかり真夜中になっていた。まずい、門限をとっくに過ぎてる!


 急いで王宮に戻ったが、やはり門は閉まっていた。その門の前で黒い人影が体を埋めて座っている。あれはまさか……


「パトレシア、こんな夜遅くまで何をしていたんだい?」


 黒い人影の正体はなんとマルクスだった。


「えっと……酒屋に行ってまして……」


「なっ、なんだって⁉︎ こんな夜遅くに行ったら危ないじゃないか!」


 マルクスは仰天して声を荒げる。ごもっとも過ぎて何も言い返せない……


「ごめんなさい。本当はもっと早く帰る予定だったのですが……」


「何か変な事はされなかったかい?」


「大丈夫でしたよ。イアンさんと行ったので」


「イアン⁉︎ 男と2人で出かけたのかい?」


「えっと……商談の続きを話したかったので……」


「………そうか……とりあえず、もう遅いから部屋に戻ろう」


 マルクスは明らかに拗ねた様子で頬を膨らませると、私を寝室に招いた。そして少し強引にベットに押し倒すと、長めのキスをした。


「んんっ‼︎」


 それは口を開いた濃密なものだった。まるで雷に撃たれたような衝撃が全身に駆け巡り、体が震える。


「心配したんだよ……パトレシア……」


 そのまま流れるようにドレスを脱がされて両手首を掴まれた。窓から差し込む月明かりに照らされて露出した肌がマルクスの目にはっきりと映る。


「ねぇ……ちょっと痛い……」


「ごめん、他の人にパトレシアが取られるのが怖くて……」


「大丈夫ですよ。私はもう何処にもいきません。ずっと側にいますよ」


 クレア妃の頃はマルクスを置いて先に死んでしまった。でも今回は違う! これからはずっと彼の側にいよう。彼と第二の人生を共に歩んでいきたい。途中で死ぬような真似は絶対にしない!


「マルクス……好きよ」


 私は背中に腕を回して抱きつくと、大切な贈り物を渡すようにそっとキスを交わした。普段はされる側だったけど、いざする側になると少し恥ずかしい……


 でも、気持ちが伝わったのか、マルクスの瞳から一筋の涙が溢れて頬を濡らした。


 そして、割れ物を扱うような繊細な手つきで私の頬を撫でると、覆い被さるように抱きついてきた。


「もう君を離さない……」


 2人の体がこれ以上ないくらい密着する。少し重たいけど、守られているような気がして心地よい。私は肩の力を抜くと、マルクスの全てを受け入れた。


「愛してるよ……パトレシア」 


 溶けてしまいそうな幸せな一時に浸っていると、マルクスが私の耳元で愛を囁いてきた。おかしいな……お酒には全然酔わなかったのに……


「……………私もよ……」


 その夜はマルクスに散々酔わされてしまった。

ご覧いただきありがとうございました!


【読者の皆様へのお願い】


・面白そう!

・続きが気になる!

・応援してあげてもいいかな?


と感じていただけましたら、


広告の下にある星マークを押して、高評価をしてもらえると嬉しいです。ブックマークをしていただけると凄く、凄く!嬉しいです


皆様の応援が励みになりますので、なにとぞ、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ