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12話

パトレシア視点


「ねぇ、聞いて、昨日森の奥で薬草を見つけたの。きっといいお薬が出来るわよ」


 翌朝、私はマルクスとウィリアムと中庭で朝食をとりながら、話を切り出した。


「それでね、商人を紹介してほしいの」


「それは構わないが……どうして森の奥に薬草がある事を知ってるんだい?」


 マルクスは問い詰めるような口調で私に尋ねる。あれ? 何だか怒っている?


「えっと……たまたま森を散歩していたら見つけまして……」


「散歩? わざわざキングを連れて剣まで持って森に散歩をしに行ったのかい?」


「えっと……」


 ちらっとウィリアムの方を見て助けを求めようとしたが、目を逸らされてしまった。


「バトラ将軍から聞いたよ。バトルウルフを討伐したようだね。たった1人で……」


「あっ……はい……」


「パトレシア、君の行動力と国民を思う気持ちは本当に素晴らしい。だけどもっと自分を大切にしてほしい。一人で抱え込まずに僕に頼ってくれないか?」


「マルクス……」


「パトレシア、君に何かあったら僕は耐えられない……」


 マルクスは私の手をギュッと繋ぐと、真剣な眼差しでジィーッと見つめてきた。そして私を抱き寄せて……



「こほん!」



「「はっ‼︎」」



 ウィリアムがわざとらしく咳き込む。危ない危ない、2人だけの世界に行きそうだった……


「2人とも、そういうのは誰もいない場所でしてもらえるかな?」


「「はい……すみません」」


 マルクスは名残惜しそうに私から離れると、話を戻した。


「商人の紹介だったよね。分かった。イアンでも呼ぼうかな?」


「えっ、彼をですか?」


「そうだけど……あれ? 知ってるの?」


「えっと……何となく名前は……」

 

 私は適当に誤魔化すと、心の中でガッツポーズをした。イアンとはクレア妃時代に何度か会った事がある。


 なるほど、彼が来るならそれ相応の準備が必要ね……私は朝食を済ませると、部屋にこもって作戦を考えた。




* * *


数年前 イアン視点


「なぁ、なぁ、聞いたか? クレア妃が今度のパーティー用の酒を探してるんだって!」


 まだ駆け出しの商人のイアンは、いつもの酒場で同業者と情報を共有していた。


「まじかよ、でもそういう案件は俺たちには回ってこないだろ」


「どうせ大商人たちに先を越されるのが先だよ」


 仲間たちは鼻で笑ってすぐに諦めるが、どうしてもこのチャンスを見逃せなかった。


「マスター、ラム酒をお願いします!」


 追加の酒を頼むためにマスターに声をかけると、隣の女性も手を挙げた。


「すみません、私も同じのをお願いします」


 その女性は酒場には似合わない美女だった。顔を隠して安っぽい服を着ているが、その美しさは全く隠せていない。


「あの……嬢ちゃん、1人?」


 なんとなく興味が湧いて声をかけると、その女性はこっくりと頷いた。


「実は今度のパーティーで出すお酒を探していまして……」


「ほぉ〜 なるほど、それでこんな所に、ちなみにどれくらい必要なんですか?」


 どうせ小さな誕生日会でもするのだろうと思っていたが…… 


「ざっと3千人くらいは来ますね」


「えっ、なんだって⁉︎」


 予想をはるかに上回る人数に思わず聞き返してしまった。


「そうなると……商人の手を借りないと難しいでしょ」


「私もそうしたいのですが、ツテがないので……」


 女性は眉をひそめて、困ったように微笑む。その仕草さえも妙に品があって美しい。もしかしたらいい所のお嬢様なのかな?


「よし、だったら僕がなんとかしてあげるよ!」


 酒の勢いもあってか、考えるよりも先に口走っていた。女性はパァッと明るい笑みを浮かべる。


「おい、イアン、そんな数を集められるのか?」


「嬢ちゃん、もっと他を当たったらどうだ?」


 仲間たちは相変わらず弱気な発言をするが、自分の中に眠る商売魂がこれはチャンスだと叫んでいる。


「いいかい、商人たるもの絶対に損をしちゃダメなんだ。だから僕はこの2つのルールは死んでも守るって決めてるんだ」


「2つのルール? 一体なんですか?」


 仲間たちはまた始まったと言いたげな表情で顔を見合わせるが、女性は興味深そうに身を乗り出す。


「まず最初に、ルール1は絶対に損をしない事。そして……」


 僕はあえて間を置いて続きを話した。


「ルール2は、ルール1を忘れない事さ」


 女性は一瞬首を傾げたが、すぐに納得した様子で頷いて微笑んだ。その後も熱心に俺の話を聞いてくれるから、つい色々と喋り過ぎてしまった。


「だから僕は絶対に損を出さない。そういう気持ちで商売をしてるんだ」


「なるほど、貴重なお話が聞けてとても勉強になりました。お酒の事は後日、お伺いしますね」


 女性は深くお辞儀をしてお礼を言うと、会計を済ませて店を出て行った。


 そして翌日、二日酔いに悩まされながら目を覚ますと、王宮から一通の手紙が届いていた。

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