表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
六章 金色の回想
98/374

□月星暦一五三六年二月③〈不調〉

登場人物紹介はこちら↓

https://ncode.syosetu.com/n1669iy/10

 アトラスの部屋は香が焚かれていたが、誤魔化しきれない汗と吐瀉物の匂いがした。


 アトラスの熱は下がっており、意識もあったが酷い目眩で起き上がれない状態だった。

 常に船酔いが続いているようなもので、起き上がると吐き気をもよおす。


 蜂蜜や湯に溶いた蕎麦粉など流動食しか受け付けていないと、看病しているテネルが説明した。


 テネルは神殿が用意した、アトラスの従者であり護衛である。


「兄上、タウロ……」


 二人を認めて、アトラスは起き上がろうとしたが、ぐらりとよろけてすぐに寝台に倒れ込んだ。回る視界を堪えるように強く目をつむる。


「お見苦しいところを、すみません……」

 顔色が悪い。頬も痩けたように見える。


 アウルムは腰を降ろし、視線をアトラスに合わせた。


「気にせずに休んでいろ。こちらのことは私とタウロでやっておく」


 アウルムを見つめるアトラスの瞳から涙が零れた。


「おい、どうした?」

「なんでも、ありません。()()()()……」


 アトラスは両手で顔を覆う。荒い息遣いが嗚咽に聞こえた。



「お二人共、申し訳ありませんがそろそろ」


 テネルが上掛けをかけ直しながら頭を下げてくる。


「すまないね。頼むよ」

「隊長、お大事に」



 部屋を後にして、大きな声が特長のタウロが声を潜めて言った。


「ライネス王になにか言われたんでしょうかね。あんな隊長、初めて見ます」

「身体は正直と言うことだろう。無理が祟ったんだ」

「そう、ですね。今迄、相当無理してきましたから」


 上司(アトラス)想いの副官(タウロ)の、その口調には悔しさが滲み出ていた。


「いくらタビスだからって、王は無理をさせすぎで。でも隊長、真面目だから。いつもボロボロになって。わたしらにまで気を遣って」


 タウロが心からアトラスを心配しているのが伺えた。


 この男なら信用できると踏んだアウルムは、タウロをそのまま大神官の部屋まで誘った。

お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ