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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
四章 三人の『兄』
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■月星暦一五四二年十月大祭後三日目①〈早とちり〉

「今日はこちらをお召しください」

 翌朝プロトが用意したのは訪問用の神官服だった。


 基本の形は通常の神官服と変わらないが、その素材は婚礼衣装くらいにしか用途が思い浮かばない程ずっしりとした上質な絹で、大神官とタビスにしか使われない。

 大神官用とは違い、帯は白ではなく紫色である。

 外掛けには袖や裾等に複雑な柄や刺繍の入ったテープが施されており、この色や模様もタビス専用に考案されている。


「いつ作ったんだ、こんなものまで」

「サイズを頂いてましたので、頼まれていた黒衣と共に作ったそうですよ」


 タビスだと宣伝して歩くような装いにアトラスは眉をしかめる。


「本当にこれを着なきゃ駄目か?」

「本日は城下の神殿に視察に行くと聞いています」

「視察って……。ちょっと覗いてくるだけのつもりだったのだが」

「駄目です。先方には既に連絡してあります。()()()()()()来訪してください」


 タビスに幻想を持っているプロト少年は、神殿が関わることに関してはちょっと厳しい。

 逆らわない方がいいと、諦めてアトラスは神官服に袖を通した。


「ご準備出来ましたか? 馬車の用意は整いました」

 元気に入ってきたサンクも今日は神官服を身につけている。

 なんでこうなった? と視線で問うと、サンクは肩をすくめてプロトを見た。


 プロトが早とちりしたのが想像できる。


 プロトはそんなやり取りにはきづかず、サンクに大きな包みを預けた。


「それは?」

「お菓子です。今日は城下の神殿で勉強会が開かれますから、配って貰おうと思って。……ちゃんと、タビス様からと言って渡してくださいね」


 最後の言葉はサンクに対して念押しである。

 よく気の回る少年である。


「昨日、夕方になって急に言うんですもん。おかげで徹夜ですよ。僕は寝ます」


 いってらっしゃいと、見送りの言葉も曖昧にプロトは自室へと下がって行く。 

 おぼつかない足取りに、本当に限界なのだろう。


「僕の伝え方が悪かったみたいです」

 サンクが気まずそうに呟く。

「あとで土産でも買ってきてやろう」


 アトラスも苦笑交じりに応じて、馬車に乗り込んだ。

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