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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
間章
340/374

◯月星暦一五九一年九月〈王立美術館開館〉

 アウルムは早速、美術館の構想を練った。


 立案者のサクヤは、最初の半年ほどは、積極的に尽力していたものの、急に実家のフェルター家に人が増えることになり、二年近く企画プロジェクトには参加出来なかった。


 その間に、先ずは建物の建設が始まった。

 展示品となる、貴族から寄贈された逸品などの選別は、モネの妹のダフネの主導で行われた。


 モネが外出を好む(アウトドア派)方なら、ダフネは室内インドア派と言えるだろう。

 日頃から書物をよく読み、知識を蓄え、美術品に通じ、自身も絵を嗜むダフネは、目も肥えており、うってつけの人材だった。


 復帰したサクヤは、『イディールとの約束』に集中した。

 『ジェイドの遺品』をどう展示するか、というのは、なかなか扱いの難しい課題であった。



 『木を隠すなら森の中』という言葉がある。


 正確には、木の根と言った方が良さそうだが、同じ血を持つ者の中に紛れてしまえば、目立たないと、サクヤは考えた。


 創国者ネートルか始まる、王家の家系図を洗い出し、該当する人物の肖像画を、城の倉庫や壁面の展示物の中から、一つ一つ探し出した。

 各人、可能な限り、経歴をまとめ上げ、ゆかりの品も紐付けて、一つの展示室内に収めるという方はを捻り出した。


 『アンブル派』と『ジェイド派』に限ってしまえば、アトラスの顔に似た顔立ちばかりのジェイドの系列は、あまりの類似点に疑念を持つ者も居るだろう。


 しかし、『ボレアデス家の系譜』にまで広げてみると、似たような顔立ちの人間は、ごろごろと居た。

 大きな系譜の『一部』にしたことで、違和感は相殺されたのである。


 ボレアデスの一部として、『ジェイド派の遺品』も分け隔てなく一緒に展示し、サクヤはイディールとの約束を果たすに至った。

 

 歴代のタビスもまた、月星を彩る歴史の一つとして展示されることになった。

 肖像画は王立セレス神殿から持ち込まれ、最後を飾るのは、二度と袖を通すことの無い訪問着姿のアトラスである。


   ※

 

 構想立案から五年、王立美術館は無事に開館を迎えた。

 サクヤとダフネは、それぞれ館長と副館長という肩書を得た。


 開館式典(セレモニー)では、館長のサクヤは大きな翠玉エメラルドのペンダントを身に着けて登場し、密かに招待されていたイディールに感謝されていた。



 美術館は貴族、庶民問わずに理解を得られた施設となった。


 モネが情報誌で、特集を組んだ効果もあり、観光スポットとしても集客を集めている。


 月の大祭時はデートスポットとしても若者達からも支持され、なかなかの盛況を博す場所となった。


 画期的だったのは、展示室の一部を企画展専用にし、毎回様々テーマを定めて期間展示をするようにしたことだろう。

 何度も足を運ぶ人間が増える。

 その度にモネが情報誌で取り上げる。両者は持ちつ持たれつの関係になったとも言えよう。


 また、サクヤは美術館の一画に、ギャラリー喫茶を設けた。

 駆け出しの画家や、画家志望の者の為に、喫茶室の壁を展示スペースとして提供した。

 休憩に来た客が気に入れば、購入も可能というシステムは、売りたい側、買いたい側両者から支持を得られた。

 絵画が王侯貴族の為のものだけではないと、敷居を下げたと言えるだろう。



挿絵(By みてみん)

お読み頂きありがとうございます


十四章では背中姿になってしまった『訪問着姿のアトラスの肖像画』です。

え? あの後ろ姿と服が繋がらない?

なんのことでしょう(^o^;)

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