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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
十四章 翡翠の残響
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■月星暦一五八六年二月⑮〈襲撃〉

 予想通り、襲撃者はアウルムの泊まる貴賓室《二一四号室》に現れた。

 襲撃者も予想に違わず、『二〇一号室』宿泊中のアイン・マールだった。


 時間は未明。

 一階のラウンジが深夜迄営業していた為、客が寝静まるのを待ってからの侵入だった。


 警備隊は各階段の上下に二人ずつ。各棟の出入り口、玄関、門扉、貴賓室の入口に配備している。 


 『二〇一号室』から警備隊に姿を見られずに貴賓室に行く経路は一つしか無い。


 即ち、屋根伝いに露台バルコニーからの侵入のみ。

 床下からの発見物に鈎縄を見つけたことから、確信していた。

 

 貴賓室に設置している露台の数は多い。

 さすがに怪しまれずに侵入口を絞りこませることは難しかった為、取った対処法は露台のある窓の内側、窓から死角の位置に一人ずつ張り付いた。


 貴賓室内の扉は全て開け放っておいた。広い貴賓室内、各人が侵入に気付きやすくする為である。

 

 担当した露台が侵入口になった場合とならない場合で、予め次にとる行動は決めてあった。

即ち、退路を塞ぐ役と確保する役である。


 侵入に使われた露台を担当していたのはモネだった。


 露台が一つしかない、小さい方の居間に待機していたモネは、侵入者が出入口に向かう迄息を殺して待機した。


 出入口で警戒して足を止める背中に向かって花瓶と花瓶台を続けさまに投げつけたモネは、「対象侵入!男です」と叫んだ。


「貴様……」


 花瓶は反れ、壁にぶつかって割れたが、花瓶台を強かに背中に受けた男は、血走った目でモネを振り返った。その両手には、それぞれに短剣があった。


 侵入された窓を閉め、待ち構えるモネに向かう男に、背後から足払いをしたのは一番に駆けつけたサクヤ。


 体勢を崩した男を、アトラスが容赦なく蹴り上げた。


 家具にぶつかりながら、床に倒れ込む男から、モネとサクヤがそれぞれ短剣を蹴り飛ばす。


 アトラスは呻いて立ち上がれない男を後ろ手に縛りあげ、確保した。


 あまりに呆気ない捕獲劇だった。


「ご苦労さん」


 その様子を後ろから眺めていたアウルムが満足気に頷いていた。


「アイン・マールだな?」

 アトラスかま尋ねるが、男はだんまりをきめこんでいる。

 

「聞いていた特徴とは一致します」


 代わりにルネが答えた。


 艶の無い白い髪に、中背で痩せている。

 武器を扱ってきたのが判る堅い掌をしていたが、それにしては対応が悪かった。

 顔も頬が痩け、血色が悪い。

 何か病に侵されているのかも知れない。



 簡単に身体検査をするが、他に武器の類は出てこなかった。鍵も旅券も出てこなかったので、宿屋の主人を呼びアインであることを確認した。


 主人には騒がないように言い含め、『二〇一号室』を調べて来るよう、人を遣った。



 警備隊員やルネ達を下がらせると、アインを前にアトラスはアウルムと二人きりになった。


 アインはギラついた目で二人を睨みつけている。


 執拗に狂気じみた執念に、どうしても考えてしまう可能性がアトラスにはある。


 白い鞘から半透明の刀身の剣を抜いて、アトラスはアインを躊躇なく刺した。

挿絵(By みてみん)

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