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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
二章 王女来訪編
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■月星暦一五四二年一月②〈学者〉

 その日は、若い学者がしどろもどろに演説をしていた。

 気の毒なくらい、閑古鳥が鳴いている。


 無理も無い。


 彼の講義は各国の神々についてだった。


 竜護星国民の心に、守護者はいるが神が居ない。理解しづらいのだ。


 話は太陽信仰のある海風星、月星の女神信仰から竜護星へと移った。


「この国、竜護星には主神がいません。しかし、ありとあらゆるものに、感謝を捧げます。万物に宿るモノへの感謝……精霊信仰というのが一番近いでしょう。極めて特殊な例だと考えます。


――竜護星王家は、アシエラという白金髪と澄んだ深い青色の瞳を持つ女性を起源とします。彼女は元々この土地の生まれではなく、当時まだ村としか言えない状態にあったこの地の長的役割を担っていたブライトという老人が樹海にて拾ってきた娘でした。その頃、この土地には特定の呼び名はなく、アセラというのはアシエラに由来して付けられた地名と云われています。


――アシエラは人並みはずれた勘の良さと行動力、及び他者へのいたわりを持った心優しい娘だったと伝えられています。そんな彼女だったからこそ、竜の護りを受け、竜との共存を可能とする道を見いだせたと言えるでしょう。


――当時、民にとって竜は狩猟の標的にすぎませんでした。竜の血肉はどんな難病をも治すとされ、また格好の精力剤とも考えられており、食べ続ければ長寿および若さを保つことさえも可能と信じていた者もいたようです。


――しかし、竜の乱獲と比例して、一つの現象が人々の中に広まっていました。簡単に言うと、《《狂う》》のです。我を忘れて、欲や暴力などの残虐性を強め、欲求のままに行動する様になるのというものでした。


――アシエラは竜の知能が考えていた以上に高く、この現象は竜が意図的に起こしたものということを見抜きます。つまり彼らは自らの負の感情を昂らせ、それを媒体に発生したモノを人間に憑かせるという手段で身を守ろうとしたのです。


――アシエラは竜と人との間に立ち、竜の狩猟をほぼ全面的に禁止しました。そんなおり、青銀の髪と紫の瞳を持つ青年が現れます。青年はアシエラの功績を称え、国を治める為にと未来視さきみの能力を授けました。その者の名をユリウスと言い、後には竜護星を見守る者とも解釈されるようになりました。また、彼によって、王が竜を護る限り、竜は王に従うという契約したと伝えられます。この国が竜護星というのも、王に竜の加護がある国という意味です」


 そこまで聞いて、アトラスは学者を食事に誘った。


参照画像 禁域図アシエラ

挿絵(By みてみん)

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