表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
十一章 兆し
200/374

□月星暦一五七三年六月①〈音信不通〉

十章終話あたりに絡みます

□視点マイヤ

マイヤ一人称口調から通常運転に戻ります

 アトラスと半年程音信不通状態が続くと、マイヤにしては珍しくかなり怒った。


「半年も音信不通……以前にもこんなことがありましたな」(※1)

 

 そう言ったのはライ・ド・ネルト。

 ライはアトラスの補佐官として辣腕をふるっていたが、不在の時はマイヤの為に働くよう、アトラスに言われている。

 ライの実家ファルタン家は竜護星の貿易の要、港街ファタルの領主である為、竜護星王家に仕える立場にある。


 異例だが、ファルタンの人間はアウルム(アトラスの兄)個人と直接契約してアトラスの後ろ盾という立場にある。ファルタン家の本質は商人。対価は月星のリメール港の専用の停泊場だった。アトラスが存命中は適応される契約である。


 ファルタン家は伝手(つて)が多いので、調べごとに強い。

 アトラスの捜索にはライも方方に手を回して頑張ってくれたが、本人が帰還するまで接触は結局叶わなかった。


 目撃情報があっても、到着した頃には既にいない。


 月星側も神殿の情報網を駆使して協力してくれたが、神殿は基本アトラス、すなわちタビスの意志は女神の意志というスタンスである為、どこどこで無事を確認したという事後報告しかしてこない。


   ※※※


 冬至も過ぎた六月ある明け方(※2)、突然その画はマイヤに捉えられた。


『風呂に入りたいな。マイヤに伝わらないかな』という、なんとも脱力する内容のアトラスの呟き。

 心配していたこちらの気も知らないで、と安堵よりも怒りの方が勝ってくる。


 風呂の準備をさせると、マイヤは湖側の通用門へ向かった。

 程なくして、視えた装いのままのアトラスが現れる。

 目が合うと、開口一番マイヤは怒鳴った。


「半年も連絡も寄越さないで、こちらからお話がしたい時もあるのです」

「すまなかったな」と謝るアトラスの声に張りが無い。

「お父様、どうしました?」


 マイヤは怪訝な声を出した。


「なんだかやつれているように見えますが」

「小言は後で聞く。少し休ませてくれ」


 アトラスは本当に疲れているようだった。眼の下には隈が浮かんでおり、顔色が悪い。

 ここまで消耗しているアトラスは珍しい。聞きたいことは山程あったが、道を開ける。


 ささやかな抵抗とばかりに、マイヤはふんと鼻を鳴らし、「お風呂の用意はしてあります」と言うと、アトラスは微かに笑ったようだった。


  ※


 翌朝になっても、昼が近くなってもアトラスは自室からでてこなかった。

 流石に心配になり、マイヤは筆頭医官のエブルを向かわせた。

お読みいただきありがとうございます

※1)2章 剣を探しに半年行方不明

※2)竜護星は南半球にあります

人物紹介

https://ncode.syosetu.com/n1669iy/17/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ