□月星歴1573年6月⑨〈条件〉☆
□ユリウス
【□ユリウス】
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ユリウスにとって、人間の身体は面白いとしか言いようが無かった。
構造上、脆い部分に触れると、いくら本人か拒んでいてもびくんと反応する。
食いしばって、声を漏らすまいとするアトラスの眦には涙が滲んでいた。
その表情に、また一つユリウスの心が跳ねた。
アトラスが浮かべている表情は羞恥だ。通常よりも速い鼓動に、朱く染まる耳。
羞恥に歪む顔が愛おしい。
ユリウスの中で、また一つ一片が揃った。
これは「愛しい」という感情。
こんなに追い求めていたものを何故忘れていられたのだろう。
「そうか。そうだったっ……!」
思わず、声が洩れ出た。
胸の奥にあたたかいものが広がる。
なんて、柔らかく優しい感情。
ユリウスは、暫しその感情を噛み締め、酔いしれた。
断片は揃った。
これが条件だった。
「愛しい」と、そうユリウス自身が思った者の手でしか、ユリウスの望みは叶わない。
そういう呪いがあの剣にはかけられていたことを、ユリウスは思い出した。
お読みいただきありがとうございます
キリが悪いので短いです。
息切れしてますね。作者が。
次話は大丈夫、いや【閲覧注意】、かな?
ただ、けっこう大事な話をします。