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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
十章 盟約
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■月星歴1573年6月⑦〈古傷〉☆

 猫が小動物をいたぶるような乱暴さで、小柄な女性の姿のユリウスにアトラスは転がされた。


「⋯⋯っぐぁ!」

 思わず呻き声が漏れる。


 傷めた腕が下にならない様にという配慮はあったが、腫れ上がった腕はどこに触れても痛みが走った。


「後ろには、大してないだろうよ」

 枕に顔を埋めてアトラスは呟いた。


 ユリウスが傷痕を(いじ)っているのはさすがに理解していたが、意図は判らない。


「矢傷が二箇所。一つは無理やり抜いたな?傷痕が裂けて盛り上がっている。もう一つは矢尻が中に残ったのを、切開して抜き取ったのか。縫ってあるな」


「そうだよ。抜いたら傷口が広がったとめちゃめちゃ怒られたんだ。だから次は触らなかったら、今度はタビスが矢を生やすなと怒られたヤツだよ」


 顔が見えないと、少しは口が緩んだ。


「あんたは何なんだ?一体、何がしたいんだ?人の古傷を抉るのが目的か?」


 どの傷にも苦い思い出しかない。

 ユリウスは答えず、冷たい舌で傷痕をなぞり続けている。


「今更唾を付けて治るもんでもない。放っておいてくれ」


 言いつつも、冷んやりとした温度は不快ではないのが、腹立たしかった。

 ユリウスが冷たいのか、自身が熱いのか、正直アトラスにはよく判らなくなっていた。


 肩にかかる冷たい吐息に、ユリウスも息をして生きる存在なのだなと、アトラスは摩耗した頭で、どうでもいいことを考えていた。


お読みいただきありがとうございます

次話も【閲覧注意】です

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