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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
十章 盟約
190/374

□月星暦1573年6月⑥〈眼差し〉☆

□視点ユリウス

【□ユリウス】

ーーーーーーーーーーーーーー

 ユリウスが姿を借りている小柄で痩躯の女性は、小突くだけで簡単に吹っ飛んでしまいそうな程、華奢である。


 伸し掛かるのその身体に、アトラスは床に縫い付けられたようにびくとも動けない。

 見かけと中身が違うことは充分理解しているはずなのに、その事実を受け入れられないらしい。


「どけ」

「やめろ」

「触るな」


 散々文句を言いながら、アトラスは頑なに身体に力を入れ、もがき、爪でシーツを引っ掻いては抜けだそうと足掻いていた。


 無駄であることがなぜ解らないのか、ユリウスは怪訝に思う。


 アトラスは物分かりの悪い方ではない筈なのに、何を拒んでいるのだろうか。


 男の姿を嫌がったからこの姿を採っているというのに、アトラスは一体何を嫌がっているのだろうか。


 ユリウスには判らない。


 煩わしく思いながらも無視していたら、やがて押さえつけた身体からすっと力を抜けるのが判った。


 どうやってもどうにもならないと、体力の無駄遣いでしかないことをやっと悟ったのだろう。


「好きにするがいい」

 青灰色(そらいろ)の瞳が仄暗い光を帯びる。

「どうせ、お前のおかげで生き繋いでいる身体だ」


 アトラスは抵抗はやめたが拒むことを止めてはいない。


 思い通りにならない状況に打ちひしがれながらも、折されない眼差しは変らない。


ーーそう。変らない。


 あの男もそうだったと、ユリウスは遠い昔に想いを馳せた。


 状況に打ち負けても、通したは間違いではなかったと、去るしか選択肢がなくなっても、折れない心で先を見据えていた青年の眼差し。


 その勁い瞳が好ましかった。


 そうだ、「好き」だ。


 その感情をユリウスは思い出した。


お読みいただきありがとうございます

何を読まされているのだと思わていそうですね。

ユリウスには必要なプロセスのようです。

次話も【閲覧注意】です

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