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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
九章 後継者
182/374

■□月星暦一五七六年一月末⑭〈叔父〉

■□視点アトラス→レクス

登場人物紹介はこちら↓

https://ncode.syosetu.com/n1669iy/14

「充分な成果だったと思いますよ」


 月星首都アンバルへの帰路の馬車の中でアトラスはレクスを労った。


 蒼樹星には多額の賠償金を請求する代わりに、捕虜の返還と冬を凌ぐ為の食料の供給、期間限定の漁猟許可を認める温情。


 同行したアトラスは、交渉の場では一言も喋らず、ただ黒衣を纏ってレクスの後ろに立っていただけだ。護衛の一人という体。


 だが、月星で黒衣の剣士と言えばタビスを示す。

 年齢が合わない為、直接当人と結びつける者はいなかっただろうがその存在を匂わすには充分だった。


 『月星に手を出したらタビスが黙っていない』という強烈なメッセージを、直接隣国蒼樹星の上層部に知らしめる。


 結局(バオム)とその叔父(ルート)には明かす羽目になったがそれはそれで構わない。


 わざわざ、勝者である月星側にから赴いたという形にはそういった意図もある。

 タビスが居ないから勝てるという勘違いは払拭されたはずだ。


   ※※※


「しかし、叔父上。今回の戦果は皆の助けがあったから。私は己の未熟を痛感しました」

「初陣なんてそんなものですよ。私の時はかなり露骨なお膳立てでした。タビスというお飾りを、それはもうきらびやかに持ち上げてくれたもんです」


 そう言って笑う叔父に目を向けながらレクスは考えてしまう。


 アトラス・ウル・ボレアデス・アンブル。竜護星の国主の配偶者となり、居を彼の国に移してなお、未だボレアデス姓を名乗る。


 タビスが月星を離れることを良しとしない世論との折り合いから、籍は月星に残したままの婚姻となった。籍があるから月星のものだという理屈で説得したという。


 また、王籍から抜くことをアウルムが許さなかった。故にアトラスは「王弟」であると同時に「王子」と呼ばれる立場にある。


 王位継承権は妻子のいないレクスに次いで第二位。

 経験豊富で実績もあり人望も厚く、英雄と称えられる人物。

 加えて男盛りの身体のまま年を取っていない。この姿を知れば人はさすがはタビス、女神の加護を体現していると人は言うだろう。


 レクスの父であるアウルムは大規模な農業改革を行い、月星ととれる作物は種類も量も何倍にもなった。

 技術革新にも力を入れ、様々なものが短い期間でより良いものが出来るようになった。


 良いものは売れる。流通が回れば豊かになる。当初アウルムが掲げたより良い食卓のための努力は目に見える形で成果となっており、アウルムは賢王と呼ばれている。


 レクスが持っているのはアウルム王の一人息子という事実と、王譲りの蜂蜜色の髪と顔立ちといった容姿だけだ。

お読みいただきありがとうございます

レクスはアトラスという弟のいなかったアウルム、アウルムやレイナ、タウロ達に会えなかったアトラスともいえます。根は素直なのですが、欠けたものが補完できていません。

アウルムは良い兄で良い為政者ではありますが、良い父なのかというと⋯⋯?アウルムも父親アセルスに愛された記憶も無く、距離感がよく判らないようです。

この甥っ子は三部もでてきますので宜しくお願いします。

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