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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
九章 後継者
180/374

□月星暦一五七六年一月末⑫〈祈祷〉

□視点レクス

登場人物紹介はこちら↓

https://ncode.syosetu.com/n1669iy/14

 人払いをした応接室に場所を移して、バオム王とレクスが卓を挟んで向かいあって座った。司令官を名乗っていた叔父のルートとレクスの護衛をしていた黒衣の男がそれぞれの背後に立つ。


「それで御用とは?」

「陛下に用があるのは私では無く……」


 レクスは謁見中、ずっと背後に控えていた黒衣の人物を示した。


「お初にお目にかかります。私はアトラス・ウル・ボレアデスと申します。こちらのレクス殿下の叔父にあたります」

「アトラス……殿?」


 バオムの、落ち窪んだ眼下の下で、生気の乏しい目が見開かれる。


「そ、そんな莫迦な、アトラス殿は亡くなったと聞いた。それにお齢が……」

「驚かれるのも無理はないと思います。これでも神官の端くれでございましてね。この(なり)も、女神の加護なのでしょうかね」


 微笑しながらアトラスは右袖を捲ってみせる。


「痣……。本物……の、タビス……?」

「ご存知でしたか。はい、月星ではこの痣を持つ者はタビスと呼ばれております」


 バオムの後ろで、叔父(ルート)がやはりという顔をした。


「女神の代弁者が、私に何の用です? まさか、月星を侵したと女神の裁きでも加えるつもりなのか?」


 バオムは身構えるが、アトラスは首を振る。


「とんでもございません。差し出がましいとは思いますが、陛下は大層お疲れのご様子。心労に効くご祈祷をさせていただけないかと思った次第でしてね」


 アトラスは笑みを絶やさず、じっとバオムの反応を伺った。


「頭痛や耳鳴り、幻聴などはございませんか?」


 バオムは虚を突かれた顔をした。


「今回の件も、根拠もなく妙にやらなければならないと、強迫観念に駆られたのではございませんか?」

「それ、は……」


 覚えがあるらしい。

 アトラスは次に王の叔父(ルート)に射抜くような視線を投げた。

 年代も近いこの男の方が、タビスの意味を理解してると踏んだ。

 叔父のルートのも思うところがあったのか、賛同する。


「陛下、タビスとは月星では最高位の神官様です。なかなかこんな機会はございません。やって頂いたらいかがですか?」

「そうか。叔父上が言うならやってもらおうか。アトラス殿、お願いしよう」

「では、失礼して」


 アトラスは、座る王の前に行くと、屈んで左の掌でバオムの顔を翳した。

 レクスも『タビスの祈祷』など知らない。何が始まるのかと興味深く見守る。


「目を閉じて、身体の力を抜いてください。深く息をしましょう」


 アトラスに言われるままに息を整えるバオム。すうっ……はぁ……と規則正しい呼吸が繰り返される。

 アトラスは空いていた右手で、腰の後ろ側に挿していた白い鞘から剣を引き抜き、いきなりバオムの身体を貫いた。


「なっ……」

「叔父上っ!」


 レクスも王のルートも何が起きたか頭が追いつかない。


 アトラスはすぐさま剣を身体から抜き、鞘に納めた。その際、半透明の刃から青白い光がちりっと弾けたのをレクスは見た。

お読みいただきありがとうございます

久しぶりに「胡散臭いアトラス全開」です 笑

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