表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
九章 後継者
175/374

■月星暦一五七六年一月末⑦〈仕込み〉

登場人物紹介はこちら↓

https://ncode.syosetu.com/n1669iy/12

「これは懐かしい面子(めんつ)ばかりだ」


 入ってきた者達を見て、面白そうにつぶやいたのはアウルム。

 アトラスに呼ばれ、彼の従者でもあるサンクが連れてきた古参の者達は次々に目礼して、急遽用意された簡易椅子に着席する。


 アウルムよりも年嵩(としかさ)の者も多い。

 よく見ると外套だけが黒で統一していたが、下に着込んでいる物は様々である。


 現役の者達からは溜息が漏れた。

 アトラスやアウルムと共に、激動の時代を文字通り駆け抜けた者達である。


「おや、隊長。覆面はもう良いので?」


 からかう様に言うのは元弓月隊の副隊長タウロ・アウダース。アトラスの副官だった男である。六十代半ばになろうという歳の筈だが、筋肉質の大きな体躯は未だ維持されている。


「兄には一目でばれたよ」

「だから言ったじゃないですか。気にしなくて良いって」


 がははと大口を開けて笑うタウロの気やすさに、場が和んだ。


「外は寒くて、老骨には腰が辛うございますわ」


 ボヤいたのは元新月隊五席のペンテ。元十六夜隊の三席のトレスが苦笑いで同意する。二人ともそれぞれ弓の名手として名を馳せた人物である。


 天幕の外に待機している者も含め、総勢三十ニ名と聞いてアウルムが感心する。


「短期間でよく集めたな」

「弓月隊は隊長の為なら、いつだって再結成しますよ」


 タウロが微笑し、「アトラス様の華麗な作戦がまた見られるなら、喜んで参加させていただきます」と、かつて秘密の夜襲に付き合わされたノイやペンテなどは嬉しそうですらある。


「神殿の伝手、ファルタンの伝手に竜と、総動員でさすがに大変でしたけどね」


 アトラスは苦笑する。

 

「アトラス様、お久しぶりでございます」


 アトラスに声をかける者がいた。ずっと軍議の席で待機していた、主力部隊の現隊長。今回はレクスを司令官とし、その副官という立場にあたる。


「若い頃、稽古をつけていただいたことがあります、オクトです」

「覚えている。たしか十六夜の八席だったか。出世したな」


 オクトの頬が緩む。覚えられていたことが純粋に嬉しいという顔。


「恐れながらお聞きします。この十年余りというものお姿を拝見することはなく、亡くなられているという噂さえありました。何をされていたかを伺っても?」


「こんな(なり)の原因を捜していた」


 微妙な言い回し。

 (さぐ)って、でなく()()()と言った。

 まるで、原因は解っているかのような言いよう。


「……その死亡説とやらが、向こうさんに勝てるかも知れないという勘違いをさせてしまった一因だ。そんなことはないと、しっかり身を持って知ってもらわねばならない」


 それ以上の追求を許さず、いきなりアトラスのは本題に持っていく。


「ノイ、例の仕込みは?」

「完了しています」


 名を呼ばれたノイ・モントは、かつてあった奇襲を得意とする新月隊に所属し、ネウルスが辞した後は隊長をしていた。


「殿下、差し出がましいかとは思いましたが、ちょっとした策を講じました」


 負傷兵の救助、散乱した武器の回収部隊に紛れて、戦場に仕掛けを施してきたと話すノイは、皺の刻まれた口元に笑みを浮かべてレクスを見やる。


「今晩は冷え込みます。うまくハマれば、面白いものが見られますよ」

お読みいただきありがとうございます

参考地図

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ