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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
七章 偽りの王
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■月星暦一五四三年十一月㉓〈御業〉

 『アトラス』の姿の人物は、行くべき場所が解っているらしく、歩みに迷いが無い。


「アトラス様」

 ネウルスが追いついて来た。

「一体何がなんだか……」

「大丈夫、タビス()を信じろ」


 アトラスは、ネウルスには先に行ってアウルムの部屋の人払いをする様に頼んだ。

「モースさまも?」

「モースは居ても大丈夫」

 言いつつ、アトラスは隣を歩く人物を伺い見るが、否定はされなかった。

 構わないということだろう。


 (くだん)の人物は、寝台のアウルムを一目見るや、モースを見やった。


「竜血薬を使ったのか。良い判断だ」

「恐れ入ります」


 モースには、相手が誰なのか判っているようだった。眩しそうな視線を向けている、


 部分的に黄味がかった肌、荒い息づかい。脂汗の浮いた肌はまだ熱が下がっていないことを伺わせた。意識はあるようだが、朦朧としている。

 

 『アトラス』の姿の人物は、なぞるように掌を翳す。 

 銀とも蒼ともつかない灯りが指の隙間から洩れ、見る見るうちに、アウルムの顔色が良くなり生気が戻るのが判った。

 落ちた肉は戻らなかったが、毒素は排出され、均一に戻った肌の色に、内臓に起こっていたと見られる疾患まで治されたのが伺えた。


「ありがとう」

 声をかけるアトラスに、

「お前の為でもこの男の為でも無い」

 そう言って振り向いた時には、その者はよく知る姿をしていた。


 袖の無い古風な衣装。青銀の髪に紫水晶(アメジスト)の瞳の整いすぎた風貌。

「ユリウスか……」

 身体を起こしながらアウルムが呟く。

「それでも、感謝する」

「私は私の望みの為に動いているだけだ。私は人命救助はしない。今回は目的に沿ったに過ぎない」

 アウルムはふと、首を傾げる。

「どこかで会ったことが?」

「さてな」


 ユリウスはアウルムを見つめ、不意に微笑を向けた。

 アウルムもはっとした表情を浮かべると笑みを返す。

 二人は何か共有の悪戯を思い付いたような顔。


「アトラス、お前は私との盟約を思い出して、それを為せ。私の望みはそれだけだ」

 言い残して、ユリウスは部屋を出ていく。


 へたりこんでいたネウルスが慌てて後を追うも、廊下には誰も居なかった。

ユリウスとアウルムが共有した『何か』に、アトラスが気付くのは◯十七年後のことです。

第三部までお待ち下さい。

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