■月星暦一五四三年五月①〈ファタル到着〉
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ファタルに到着すると、同行していたライの案内でファタル領主ファルタンの屋敷に案内された。
街の中心に位置し、アセラの城をも凌駕しそうな貫禄の佇まい。門から玄関までの距離を馬車から見ただけでも、凝った庭づくりがされているのが伺える。
黄昏の迫る空の下、領主ジル・ド・ネイト・ファルタンは自ら迎えに出てきた。
六十歳近いはずだが、がっしりとした体躯になかなか鋭い眼光の男だった。
アトラスが直接会うのは初めてである。
ジル・ド・ネルト・ファルタンは三人の息子達を改めて紹介した。
領主補佐の長兄はカイ・ド・ネルト・ファルタン。鋭い茶色の目はジルと良く似ている。恰幅が良く背が高い。
商人として辣腕をふるうのは次男のサイ・ド・ネルト・ファルタン。ライとよく似た黒髪にがっしりとした体躯、海に出ることも多い為か、良く日に焼けている。
そして、城に出仕宮中の三男、ライ・ド・ネルト・ファルタン。
三人はそれぞれに歓迎と祝辞を口に、一行を館に招き入れた。
※
渡来品の調度品の数々に彩られた部屋にアトラスとレイナは通され、そのまま夕食となった。
領主は如才ない話術で二人をもてなした。
卓には三兄弟に加えてペルラも同席していた。レイナを慮ってのことであろう。
他の者は別室で摂っている。
食事には多地域の食材がふんだんに使われ、贅を凝らした心憎いばかりの創意工夫がされている。
各地の料理を口にし、本場の味を知るアトラスとレイナであるが、素直に舌鼓を打った。