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タビスー女神の刻印を持つ者ー  作者: オオオカ エピ
六章 金色の回想
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□月星暦一五三六年二月⑪〈生存者〉

 アウルムとアセルスの間に流れる張り詰めた空気。

 アウルムが出方を考えあぐねていたその時、半壊した家からがたん、と音がした。


「誰かいるのか?」


 馬を降りて入って行こうとするアウルムをウィルが押し留めた。


「わたしが行きます」

 ウィルと数名が代わった。


 ガタガタという音が屋内から断片的に響き、静かになる。

 出てきたウィルともう一人は、それぞれ足をばたつかせる少年少女を抱いていた。


「子ども?」


 アウルムは逃げ出そうと暴れる兄と見られる少年の方に視線を合わせた。


「落ち着いて。大丈夫、危害を加えないよ」


 怯える瞳に、アウルムは辛抱強く話しかける。


「よく生きていたね。二人だけかい?」

「……」

「親はいないのかい?」

「……しんだ」

「……何が、あったんだい?」

「いっぱい、ひとがきた。おおきなこえがしたんだ。いえのなかにもはいってきた。おかあさんが寝台ベッドのしたからでるなって、こえをだすなって。いもうととかくれてた」

「おかあさんがぎゃーって。でたら、うごかなくなっちゃった」


 妹の方も落ち着いたのか、たどたどしく説明に加わる。


「家の中には母親らしき遺体が……」

 ウィルが首を振りながら添える。


「……ごはんはどうしてたんだい?」

「しんでんのひとがくれる」

「どこで?」

「おしろのまえ」


 アウルムは、牛の様な大男を振り返った。


「タウロ!」

「解りました!」


 みなまで言わずとも、タウロは部下に指示を出す。


 この街の神殿が炊き出しを行える程には人員がおり、機能しているということだ。また、それを必要とする規模で人が生きていることを意味している。


 弓月隊には神官が所属している。神殿関係者と連携して、情報収集と支援に動き出した。

 女神信徒には、アンブルもジェイドも無い。


 アウルムは少年に向き直る。 


「よく頑張った。よく生き抜いた」

 頭を撫でると、少年達はわんわん泣き出した。


「預かります」

 弓月隊の隊員が申し出て、二人を連れて行く。

お読みいただきありがとうございます

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