エピローグ クレハの休日
昼前、目覚めて体を起こすといつの間にか眠ってしまっていたのだろう。
俺はベッドではなく椅子の背にもたれ掛かっていた。
そして今日も薄手のシーツに体を包まれているのに気付く。
寝ぼけた頭にはうっすらと甘い香りが残っているようにも感じる。
ここ数日はこんな調子で、誰からなのかわからないが気遣ってもらっているようだ。
定休日なこともあってこの店には誰もいない。
ジラルドやミツキはもちろん、フェリスとスゥの二人は一緒に買い物に行くと言っていた。
たまには静かな店もいいな。
軽めの食事をとったあと俺も出掛けることにした。
しばらくの間、道具屋や宿屋、ギルドなどで店の評判を聞いてまわる。
これと言って否定的な意見は聞かれない。
むしろ歓迎されているような声が多かったように思う。
俺達のしてきたことは、決して間違いではなかったのだとひとまずは証明されたわけだ。
「親父、この剣をくれないか」
「おやおや、誰かと思えば酒場の店主じゃないか。冒険者でもないのに得物が要り様なのかね?」
「ああ、これから必要になるんだ」
日も落ちかけた帰り道、店に着く頃にはフェリスも帰ってきていることだろう。
果物や食料品の入った紙袋を両腕で抱え、腰元には新品の鞘が揺れ動いている。
思い立ったが吉日。
この日最後に訪れた武器屋で、俺は一振りのショートソードを手に入れた。




