十三繋目:商売人の心得
「階段を降りたら目に見えて魔物が強くなったッス!」
「そうですね、ガタイも良くなってきている気がします」
第一層から第七層を飛ばしているのであまりそうは感じなかったが、口には出さなかった。
空気悪くなりそうだしね。
シェリンは冒険者というものに誇りを持っているらしいので、第七層まで飛ばしたと知れば
『冒険者の風上にも置けないッスね!』とか言われてしまいそうだ。
「階層ごとに強敵でもいるかと思ったら、そんなことないんだな」
「いや、この階層から所謂『ボス』って奴らが各階層ごとに出てくるッス!」
「じゃあそいつの素材を取ることが今日の目標かな」
「良いところ剥ぎ取ってやるッス!」
可愛らしい見た目でなんてバイオレンスな事を言うんだこの子は…
「それにしてもサクサクッスねー、ここが危険な場所だってこと忘れそうッス…」
「バリア無くそっか?」
私がそういうと、シェリンは慌てたような顔をして
「しなくていいッス!やめてくださいッス!」
と、食い気味に答えた。
シェリンの実力なら第八層なら死ぬことはないだろうが、第九層となると流石に命が脅かされるらしい。
第八層と第九層にはそれほどまでに壁があった。
「あれは…」
「他の冒険者でしょうか…結構大人数ですけど」
行をなして蛇のように歩いている人達は、パッと見でも10人以上はいるだろうか。
一般的に、パーティーを組むなら多くても6人とかだったので、ここまで大人数だと統率などの面で心配がありそうだ。
「商人としての血が騒ぐッス!行ってきても良いッスか?」
「焔様、いかが致しますか?」
「良いんじゃないか?ただし、私達も一緒に行くことになるが」
「焔さんから半径3メートル以内にはずっといることにするって決めてるッス…」
今にも走り出しそうなポーズを取っていたシェリンだったが、私から離れると魔物に襲われる可能性があることを思い出したようだ。
「じゃあ一緒についてきて欲しいッス……すいませーん!食料足りてるッスか?」
「ん?商人か」
先頭に立っていたいかにも強そうな見た目の男性がシェリンの方へ向き、仲間と思われる人たちのもとに視線を飛ばした。
「流石に歩きっぱなしだったからな、人数分の水をくれ」
「やったッス!売れたッスよ!」
私達の方へ向きまたもや無い胸を張るシェリン。
「んー」
シェリンは目を瞑り、手を前に出すと、目の前に黒い空間が出現した。
伸ばした手を暗闇の中に突っ込むと、黒い空間から水が握られた手が戻ってきた。
10回程繰り返し、人数分の水を取り出すと、兵士のような格好をして座っていた一人ひとりに水を差し出し始めた。
「確かに全員分…報酬は?」
「一つにつき、銀貨一つッス!」
「随分と安いんだな」
「ダンジョン価格は詐欺ッス!そんな事するやつは商売人じゃないッス!」
地上で売られている価格と殆ど変わらない価格で水を提供すると、シェリンは笑顔で「ありがとうございましたッス!」と言い、兵士たちは先へと進んでいってしまった。
どうもLrmyです。
一話について1000字以上を目標にしているので、頑張りたいと思います。
誰かに宣言するって大事。
一人で決めるとやらなくなったりするからね。
以上で後書きを〆ます。ではでは〜