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異世界恋愛系 作品いろいろ

舐めきった態度、許されません!

作者: 四季

 資産家の娘リーナ・フルベルンは、数日前、二十歳の誕生日を迎えた。

 しかし彼女は今悩みを抱いている。


 彼女にはアイスンという婚約者がいるのだが、彼が、どうやら別の女性と親しくしているようなのだ。


 リーナが会いに行っても、アイスンは「今は会えない」と顔を合わせることを拒むことが多い。以前はそんなことはなかっただけに、異変を感じていた。そんな時、彼が女性と交流しているという噂を聞いて。リーナは不安になったのだ。


 そういう事情もあって、リーナは今、調査員にアイスンの調査を行ってもらっている。

 だがその結果がまだ届かずもやもやしている。


「今日も浮かない顔ね、リーナ」

「結果が届くのが遅いの!」

「あぁ、その話ね。そのうち届くはずよ。きっと。だから、少し忘れていても良いんじゃない?」

「どうしてもどうしても気になる……」

「お茶でも飲んだら? この前新しい茶葉買っておいたわよ」

「ありがとう、母さん」


 リーナの両親はこの件を知っている。

 調査員に婚約者の調査を頼んでみたら、と提案したのも、彼女の両親である。


「しかし、まさかこんなことになるとは。驚いたわねぇ。……はい、クッキーあげる」

「ありがとう。……そうよ、幸せになれると信じていたのに」


 リーナにとって、両親が協力してくれたのはありがたいことだった。一人寂しく苦しむよりかは楽になれる。周りが全員敵というシチュエーションよりはずっとましだ。だが、両親が味方してくれたからといってアイスンが妙なことをしなくなるというわけではない。そのため、解決するまで苦しさがあることに変わりはない。


「早く結果届かないかなー」

「そうね」



 ◆



 数日後、結果が届いた。


 やはりアイスンは別の女性と親しくしているそうだ。

 二人で手を繋いで道を歩いたり、お茶をしたり、街で買い物をしたり。さらには、路地裏で一歩進んだことをしたりもしていたとのこと。


「やはりこういう結果になってしまったか……」


 調査報告を受け、リーナの父親ははぁと溜め息をつく。

 リーナも同じ思いだった。


「残念ねぇ。この調子じゃ駄目ね」

「あぁ。やはりあの男にリーナを渡すことはできん」

「証拠も得られたことだ、婚約破棄するとしよう」

「待って、あなた。その前に一度、私が彼に話をしてみるわ。婚約破棄するとしても、それからにしましょう」

「分かった」


 こうしてリーナの母親が一度彼に会うこととなった。


 父親の方はすぐにでも縁を切りたいと考えているようだったが、母親はそうではなく、婚約破棄するしない関係なく一度話をしてみてから決めようと考えていたのだ。そして父親が折れて。母親の意見が通ることとなったのである。


「心配するなよリーナ。我々がどうにかするからな」

「助かるわ」

「そうよ! 親に任せて!」

「ありがとう」



 ◆



 数日後、予定を合わせ、リーナの母親がアイスンと話をすることとなった。

 その会はすんなり開催された。


 だが結果は望ましいものではなかった。というのも、アイスンが舐めきっているような態度をとったのである。


 帰ってきた母親はいつになく激怒していた。

 そして「婚約破棄よ!」と言っていた。


 その時の母親に迷いはなかった。もはや、躊躇いも何もない。もしかしたらを信じていた小さな気持ちは崩れ去り。母親はもう、アイスンに情けをかける気はなかった。


「リーナ、何なのあの人! 感じ悪過ぎよ!」


 帰ってきた母親の第一声は怒りに満ちていた。

 それはもう、リーナが動揺したほどに。


「感じ悪かったの……?」

「こんなこと言っちゃ駄目かもしれないけれど……生意気にも程があるわ!」


 リーナが知っているアイスンはべつにそんなに感じが悪い男性ではなかった。若干優しすぎる感じはあったけれど。だからこそ、母親がこんな風に怒っているのを見て驚きを隠せなかった。そんなにか、と。


 そして、それと同時に、悲しくもなった。


 自分が見てきたアイスンは本当のアイスンではなかったのか、と。



 ◆



 結局、歩み寄ることはできず、リーナとアイスンの婚約は破棄となった。


 アイスンも彼の親も、一度も謝罪はしなかった。それどころか、近所の人にリーナ一家の悪口を言いふらしていたらしい。だが、本当の話が既に流れていたこともあって、リーナ一家が変に思われることはほとんどなかった。


 その後、アイスン側に非があるとして、慰謝料の支払いが命じられる。


 アイスンは慰謝料は仕方なく支払った。が、罪を罪と認めることはなかった。アイスンは、単に遊んでいただけとか何とかいって婚約破棄されるようなことはしていないと訴え続けた。しかし、調査による動かぬ証拠があったから、嘘が事実となることはなかった。



 ◆



 数ヶ月後。


 悪い評判が拡散したため、アイスンの父親が営んでいた店の売り上げは落ちて。あっという間に閉店に追い込まれた。また、ほぼ嘘の悪口を言いふらしていたことで近所の人たちから白い目で見られるようになってしまった。


 ちなみに、アイスンの妹は婚約者から婚約破棄を告げられてしまった。

 この件に関しては完全にとばっちりで、気の毒である。


 結局、アイスン一家はその地域に居づらくなって、遠くへ引っ越した。だが、彼らがどこへ引っ越したのか、それを聞いた者はいない。


 一方、リーナはというと、調査員だった男性と親しくなる。


 そして数年後結婚した。



◆終わり◆

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