包み込む愛
前話までのあらすじ。
ボクはレイ。
魔力がない身体で、精霊に取り憑かれないように、女の子の格好で暮らしてます。
でも友達を助けるために火の精霊ナスタを身体に入れた時から、精霊憑きの人を助ける英雄としてがんばってます!
それでは最終回『包み込む愛』、よろしくお願いします!
「今日聞いた話だけど……」
学校で聞いたウワサについて、部屋でみんなと話し合う。
外と違って聞かれる心配がないから、安心して話せる。
『今度は裸の土人形事件、とでも呼ぶべきですわね……』
『女そっくりの裸の土人形を道に作るだけって、何がしてぇんだそいつは?』
『……恥ずかしがるの、見たい、のかな……』
『へーんなの!』
「まぁ今回は毎回同じ場所で起きてるから、犯人を見つけるのは簡単そうだけどね」
今度は土の精霊憑きかな。
がんばって解決しないとね。
「レイ、お風呂入っちゃいなさい」
「あ、お母様。はーい、今行きます」
扉を開けるとお母様がにこにこしていた。
お母様はいつもにこにこしている。
お母様のにこにこ顔を見てると、ボクも嬉しくなる。
「お、レイ、お風呂かい?」
「あ、お父様」
「そうだ、久しぶりに今日は一緒に入ろうか」
「はい!」
お父様はとってもカッコいい。
子どもの時は、国で一番の美少年って言われてたんだって。
優しくて、カッコよくて、大好き!
「あなた、いけませんわ。学校に行く歳の娘が父親とお風呂に入るなんて不自然ですよ」
「そう? お風呂場には精霊除けがあるから大丈夫じゃない?」
「そういう油断が大事に繋がるんですのよ。もし入口で精霊に見られたらどうしますの?」
もういるんだけどね。四人も。
ボクの身体の中にいるから精霊除けも効かないし。
「なら三人一緒に入ろうか」
「え……。ちょ、ちょっと、あなた!」
「三人で入れば問題ないでしょ?」
「そ、そうです、けど……。私、こんな歳で……」
「関係ないよ。いくつになってもロディアは魅力的さ」
「キセロ……!」
お父様とお母様はいつも仲良しだ。
お父様は子どものころからお母様の事が好きで、反対する周りの人を全部説得して結婚したんだって。
ボクもそんな人と出会えるのかな……。
魔力がなくて、女の子として暮らさなきゃいけないボクが……。
『くぁ〜! 見てらんねぇよ!』
『レイに弟か妹ができるかもですわね』
『……ラブラブ……』
『三人でお風呂ー。楽しそー』
「……ふふっ」
みんなの声に、何だか元気が出てきた。
お父様とお母様、ペリや友達、そして精霊のみんな。
こんなにボクを大事にしてくれる人がいっぱいいるんだ。
きっと大丈夫。
「ナスタ」
『あん?』
「ネリーネ」
『はい?』
「カモミリア」
『……何……?』
「アネモス」
『んー?』
「みんな、大好きだよ」
『な! 何言い出すんだ急に!』
『まぁ……!』
『……うん……』
『にひひー』
小声で言うと、ボクはにこにこしているお父様と、真っ赤になってるお母様の手を握って、お風呂へと向かった。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
拙作
『破棄を前提とした婚約、だったはずなのに、そのままにされて私もう不惑なんですけど……』
https://ncode.syosetu.com/n9255gx/
の最後で生まれた超美少年の話でした。
「だろうと思ってた」っていう方、結構いそう……。
レイは魔力がない事がわかってから、女の子としてつけた名前で、本名はゼーロ・グラフィカと言います。
という訳で、エアロプランツの王様『キセログラフィカ』の英国読み『ゼログラフィカ』から取り、ゼロを和読みしてレイ、としました。
『グラフィカ』と付く植物を探していて、「うわピッタリ! いやピッタリ過ぎて扱いに困る!」とあれこれ考えた上でこんな感じにいじりました。
この作品の登場人物は皆とてもお気に入りなので、他の精霊がレイに入るに至ったエピソードや、仮面の英雄が巷で有名になっちゃう話や、精霊憑きでもいいから増やしたい国の方針で王国の精霊使いが妨害してくる話や、破壊の衝動に突き動かされる精霊憑きと戦う話や、そのために王国の精霊使いと一時共闘する話なんかが思い付いたら続編を書くかもです。
最後にとびらの様、お陰様で拙作を世に出す事ができました!
企画運営ありがとうございます!