原点
前話のあらすじ。
アネモスだよー。
あのねー、女の人に雨を降らせる精霊憑きを捕まえようとしたらー、ペリちゃんに見つかったのー。
でもねー、仮面してたからへーき。
それにねー、レイが好きに飛んでいいよって言ってくれたからー、すっごい楽しかったー。
また飛びたいなー。
終わりー。
えー? これ言わないといけないのー? わかったー。
えっとー、第六話『原点』見てねー。
「どきな。オレは強いヤツと戦いたいんだ。邪魔しなきゃ女に手を出しゃしないよ」
「だ、ダメだよ! その子は今度ピアノの発表があるんだ! ケンカなんかして手を怪我したら、今までのがんばりがダメになっちゃう!」
「なら代わりを用意しな。そしたらそっちに移ってやるよ」
「……じゃあボクが代わる」
「は? オレたち精霊は、王との契約で男にしか憑けないんだよ。女のお前じゃ……」
「……ボクは、男だよ」
「……はぁっ!? そ、そんなに可愛いのに、お、男!?」
「証拠って言われても困るけど……」
「ちょ、ちょっと入らせろ」
「んっ……。ど、どう?」
『入れた……。マジで男なのかお前……。しかもすごく入りやすい……』
「そうなの? 生まれつき魔力がないから、精霊に入られたら大変って言われてたけど……」
『それで女のカッコしてたのか……。マジでわからなかった……。よし! お前に移ってやる!』
「本当!? ありがとう!」
『礼なんて言うなよ……。オレは、お前が……、その……、そう! 度胸! 度胸が気に入った! その代わり、戦いをさせろ!』
「た、戦い!?」
『おう! ケンカでも拳闘でも何でもいい! オレは戦うのが大好きなんだ!』
「え、そんな事言われても……」
『お前も男なら、英雄に憧れたりするだろ?』
「! う、うん! ずっと男って事を隠さないといけなかったから……」
『なら二人でそれやろうぜ! 悪いヤツを見つけてぶっ飛ばす! オレはスッキリする! お前は男として英雄になれる!』
「わ、わかった!」
『オレはナスタ。お前は?』
「ボクはレイ。よろしくねナスタ!」
「ん……、むにゃ……。なすた……?」
目を開けると、ボクの部屋だ。
夢かぁ。
懐かしいなぁ。ナスタと初めて会った時の夢だ。
『レイー。おっはよー』
「おはようアネモス」
『おはようございます。あらレイ、何だかご機嫌ですね』
「ネリーネおはよう。うん。懐かしい夢見たんだ。ボクとナスタが初めて会った時の夢」
『なっ! お前何勝手に見てんだよ!』
「あ、おはようナスタ」
『そ、そういうのはちゃんとオレがいいって言ってから、だなぁ!』
「そんな事言っても夢だもん」
『だ、だけどよ……』
何か恥ずかしがってる? 何でだろう……。
『か、カモミリア! いつまでも寝てんじゃねぇ! とっとと起きやがれ!』
『……んむ……。ごはん……?』
『そ、そうだご飯だ! レイ! カモミリアが朝メシ食いたいみたいだから行くぞ!』
「え、あ、うん」
着替えて食堂に降りる。
夢のお陰で、ボクがしなきゃいけない事を改めて確認できた。
バレないようにしなきゃいけないけど、でもやっぱり精霊憑きになった人を助けてあげなくちゃ。
「仮面の英雄、がんばろうね、ナスタ」
『お? おう! そ、そうだぞ! オレは戦わせてくれるからお前に入ったんだからな! そこのところ勘違いするなよ!』
『あれー? 何かナスタ赤ーい』
『なっ……!』
『……元から、赤い……』
『あらあらまあまあ』
『う、うるせー!』
今日もがんばろう!
読了ありがとうございます。
ナスタは度胸がどうとか言ってますが、レイの女としか思えない美麗な容姿にノックアウトです。
それにしても一人称にすると、美少年設定を表現するの難しいですね。
下手にやるとナルシストっぽくなっちゃいますし……。
さて口調は男、中身は乙女、その名も火の精霊ナスタ!のご紹介。
火に関する花言葉で検索していて出てきたナスタチウム。
花言葉は『愛国心』『困難に打ち勝つ』『勝利』『恋の火』『恋の炎』。
合格ぅ! 文句なしに合格ぅ!
じゃあレイと恋仲になるのかって? さて、それはどうでしょうか……?
それでは次話『新たな事件』をよろしくお願いいたします。