幼馴染
前話のあらすじ。
……自分、カモミリア……。
……ご飯、美味しかった……。
……大丈夫、レイの、魔力ゼロ体質、バレてない……。
……第四話、『幼馴染』、読んで……。
「レイ、おはよう!」
「おはようペリ」
「宿題やった?」
「うん、一応ね」
学校へ行く途中、ペリが元気いっぱいに声をかけてきた。
「うん、今日はいつものレイだね!」
「……うん」
あー、やっぱり昨日、学校の帰りに怖いお兄さんに囲まれた時、ナスタがボクに入って大暴れしたの、覚えてるんだ……。
「よぉ、可愛いお嬢ちゃんたちぃ、お金持ちそうだねぇ」
「俺たちお金に困ってるのよぉ。ちょっとお金恵んでくれなぁい?」
「なぁ兄貴! こっちの銀髪の子すげぇ美人! 連れてって着せ替えしてぇ!」
「え、えっと……」
「や、やだ……、怖いよ……。レイ……」
『おい、こいつら敵だな? やっていいよな!?』
(ナスタ! ペリがいるんだから、魔法は使っちゃダメだよ!)
『こんなヤツらに魔法なんていらねぇよ。身体貸しな!』
(わ、わかったよ。あ、あとやりすぎちゃダメだからね!)
『任せとけ!』
「あ、なんだ? お前、髪の色が、うっすら、赤く……?」
「けっ、ありがとよ。オレらにからんでくれてよぉ」
「は? 何言ってんだこのガキ!」
「可愛い女だからって逆らうなら容赦しねぇぞ!?」
「ガキだと思って優しくしてりゃつけ上がりやがって!」
「いいねぇいいねぇ! お前らみたいなヤツなら思う存分ぶん殴れそうだ!」
「生意気ぬかしやがって! 痛い目見せてやぎゃはっ!」
「な、やりやがったなぶれっ!」
「わ、わあああ! 化け物ぶぎゃっ!」
「おら立て立て! まだまだ遊ぶぞ!」
「「「ぎゃあああぁぁぁ……!」」」
『や、やりすぎちゃダメだってばぁ!』
「大人の男の人を三人もやっつけちゃって、あの時のレイ、別人みたいでびっくりしたよ!」
「あ、あの時は怖くて無我夢中で……」
「髪の毛がちょっと赤かったね! 怒ったから!?」
「ひ、光の加減じゃないかな? 夕方だったし……」
「ちっちゃい時から一緒にいるのに、あんなに強いなんて初めて知った!」
「ぼ、ボクもあんな事初めてだったから……。あの、ボク、怖かった……?」
幼馴染のペリに怖がられたり嫌われたりするのは、やだなぁ……。
「んーん! カッコよかった! レイが男の子だったら恋してたかも!」
「そ、それなら良かった……」
ペリにはボクが男って事も、魔力がない事も教えてない。
誰よりも一緒にいる幼馴染だから、隠し事とかはなしにしたいんだけど……。
「あ、そうそう! お父様が今日も新しいカツラ試してたの! 時々髪型を変えないとバレるってすごい必死な顔で鏡見てたの!」
「あ、うん、あんまりそれ大きい声で言わない方がいいんじゃ……」
「あとね、お母様がお出かけ用のドレス着たら、お腹のところがビリって裂けたの! 服が古いからかしらって言ってたけど、太ったんだと思う!」
「ぺ、ペリ、それ内緒にしておいた方がいいよ?」
「えー? 面白いのに……」
「あとボクが昨日大人をやっつけたのも内緒にしてね?」
「えー? それもー?」
「お願い!」
「でもみんなほめてたよ?」
……ほめてた?
「誰かに話したの……?」
「うん! 昨日お父様とお母様と使用人のみんなに!」
「……あー、そう……」
「みんなレイってすごいってほめてたよ!」
「……うん、ありがとう……」
……これだからペリにはボクの秘密を話せないんだ……。
読了ありがとうございます。
ヒロイン兼引っ掻き回し役、ペリちゃんです。
フルネームはペリ・ウインクルでツルニチニチソウの英名から取りました。
幼馴染って花言葉の花ってあるかなーそんなのないかーってあったわっ!と驚いた花。
おしゃべりで行動派、おまけにコミュニケーション能力が高いという、秘密の共有に最も向かないタイプの子になりました。
いい子なんですけどね……。
最初のイメージではヒーローものの定番として、最終話ペリが危機に陥って、それを救うために精霊達との別れを天秤にかける展開も考えていたのですが、どうやっても二万字に収まりそうにないのと、重たい展開をうまく描ける気がしなかったので、ボツになりました。
ほのぼのと参ります。
それでは次話『仮面の英雄』をよろしくお願いいたします。