精霊憑き
前話のあらすじ。
ボクはレイ。
生まれつき魔力がないんだけど、精霊のナスタ、ネリーネ、カモミリア、アネモスの力を借りて、街に起きるおかしな事件をこっそり解決してます。
昨日のお礼にみんなと街に来たけど、ちゃんと目立たないようにしてくれるかな……?
それでは第二話『精霊憑き』お楽しみください!
「さぁ、謎の気配、事件の気配を探して、いざ参りましょう〜」
昨日のごほうびとして一番にボクに入ったネリーネは、とても上機嫌だ。
街を歩きながらあちらこちらを見て回る。
『お願いだから目立たないでよ?』
「そんな事仰いましても、レイのこの容姿では仮面でもしないと嫌でも目立ちますわ」
やっぱりそうなのかな。
確かに街の人たちも、ボクの事をちらちらと見ている。
お父様やお母様、使用人のみんなは、ボクを美少年って言ってくれる。
ボクは自分の顔だからそうは思わないけど……。
「なぁ、連続スカート切り裂き魔、どうなったんだ?」
「昨晩は出なかったみたいだけど……」
「やっぱり精霊憑きの仕業かなぁ」
「だろうねぇ。風の魔法でロングスカートだけをスパッと膝上で切るって言うから……」
「あぁ、その件でしたらワタクシが」
『ネリーネ! ダメだよ!』
確かにボクたちが解決したけど、そんな事言ったら大変な騒ぎになっちゃうよ!
あぁ! 話してたおじさんとおばさんが変な顔で見てる!
「ワタクシが、何だって?」
「……ワタクシが履いているロングスカートも危ないのでしょうか?」
「あぁ、気をつけな。怪我したって話は聞かねぇし、オシャレになったって喜ぶ娘もいるみてぇだけど、いきなり切られたら驚くだろうしなぁ」
「ありがとうございます。気をつけますわ」
危なかったぁ……。
ごまかせてよかったけど……。
『ネリーネ、目立つのはダメだって言ったじゃないか』
「で、でもせっかく事件を解決しましたのに、みなさん不安なままではと思い、つい……」
『気持ちはわかるけど我慢してよネリーネ。ボクの秘密、バレたら大変なんだから』
「わ、わかってますわ。頭の中まで燃えちゃってる誰かさんとは違いますもの」
『誰の事だこのヤロウ!』
「あーら、私は誰かさんとしか言っていないのに、よくおわかりで。自覚があるなら少しは頭をお使いあそばせ」
『なんだとぉ!』
あぁ、またケンカになる……。
『ネリーネ、お昼になったらカモミリアに交代なんだから、ケンカなんかしてる暇ないよ』
「そうでしたわね。では衛兵の詰所と自警団のところに行って、新たな事件がないか聞いてきませんと」
『ナスタも落ち着いて。街で騒動起こしたら、もう闘技場に行けなくなっちゃうよ』
『そ、それは……! けっ、わかったよ!』
良かった……。
ボクには魔力がない。
みんなに入ってもらう事で初めて魔法が使える。
もし精霊のみんなが本気で暴れたら、きっと止められない。
そうしたら秘密がバレて大騒ぎになっちゃう……。
だから絶対バレないようにしないと!
「失礼いたします」
「お、嬢ちゃん、また来たね」
「えぇ、ここで聞く事件の話って、とってもスリリングなんですもの」
「聞くだけにしておきなよ? お嬢ちゃんは女だから大丈夫とは思うけど、万が一精霊に憑かれたら、その力は国のためだけに使わなくちゃならなくなるんだからなんだ」
ボクが男で、四人もの精霊を宿してるって事……。
読了ありがとうございます。
連載にした事で、登場人物の紹介を丁寧にできますね。
まずは今回レイに入った水の精霊ネリーネ。
彼女の名前はダイアモンドリリーとも呼ばれるネリネの花から。
水の精霊(または海の精霊)から名前をもらったって聞いたら、ねぇ……。
元は人の心の闇を慇懃無礼にゴリゴリ掘り起こす、腹黒ドSキャラにするつもりでしたが、花言葉に『華やか』『箱入り娘』とあったので、謎解き大好き好奇心旺盛娘になりました。
ナスタとの掛け合いが楽しい。
それでは次話『魔力ゼロ体質』もよろしくお願いします。