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美少年と精霊

とびらの様主催『超美少年企画』投稿作品です。


あまり書いた事のない『アクション』ジャンルで書いてみました。

全九話になります。

お楽しみ頂けましたら幸いです。

『レイー、聞こえるー?』

「うん聞こえるよアネモス」


 ボクは頭の中に響く声と、強化された耳に聞こえる足音に意識を向ける。

 足音は作戦通りにこっちに来てる。


『もう一度幻影を出します?』

「いやネリーネ、足音はまっすぐこっちに来てるから大丈夫だと思うよ」


 うん、「逃がさんぞ〜。切り裂いてやる〜」って声まではっきり聞こえる。

 もうすぐそこの角を曲がってくる。


『……穴、深くない……。落ちたら、すぐ、捕まえて……』

「カモミリア、準備ありがとう」


 答えている間に足音が近付いて来る。

 ボクは仮面がずれないか、もう一度確認する。


『落とし穴なんてめんどくさい事しないでオレにやらせろよ! 切り裂き魔なんてギッタギタにしてやるから!』

「万が一があったらどうするのナスタ。視覚だけ貸して」


 耳から目に力を切り替えると、夜の闇の中でも周りの景色がはっきり見えるようになった。

 来た! 相手は物陰に隠れたボクにも落とし穴にも気付かず、走って来る!


「うわっ!?」

「落ちた! 今だネリーネ!」

『お任せください!』


 ネリーネに身体を任せる。

 身体中に魔力が巡るのが分かる。

 ボクの銀髪に薄い青が混じる。


「逃しませんわ! アクア・プリズン!」


 ボクの手から水が生まれ、穴に落ちてもがく人を包み込む。


「な、何だこれは! は、離せ! 私には全てのロングスカートをミニスカートにするという高尚な使命があるのだぞ!」


 水球で捕まえた男の人は、よくわからない事を叫んでる。

 目の色が濁った緑に光ってる。

 間違いなく精霊憑きだ。


「では分離を……」

『ちょっと待て! オレは今日何もやってないんだから、オレにやらせろ!』

『えー、ならアネモスもやりたーい』

『……やらないなら、自分が、やる……』


 わぁ! みんなケンカしないで!


『今交代すると水球が解けて逃げられちゃうでしょ!? ネリーネ、そのままやって!』

「お任せください!」

『ちぇっ、次はオレにもやらせろよ!?』

『……早く、終わらせて、ご飯……』

『ネリちゃーん、決めちゃってー』


 ボクの手のひらに、光る水が生み出される。

 精霊と人を分離する、力ある光が男の人に向かって放たれる!


「ピュア・ストリーム!」

「ぎゃあ!」

『ぷわっ!』


 光る水の奔流に押し流されるように、男の人の身体から精霊が飛び出した。

 ふう、これで一件落着かぁ。


「ではレイ、身体お返ししますわ」


 身体から魔力と一緒に力が抜ける。

 今日はちょっとの時間だったからまだいいけど、やっぱりだるい感じは残るなぁ。


『あの、ご迷惑をおかけしました……』


 男の人から飛び出した風の精霊が、申し訳なさそうに頭を下げる。


『風の魔力を持っている男の人を見つけて、入ったまではよかったんですけど、抑える事も抜け出す事もできませんでした……』

「うん、欲望が強い人ってそうなんだよね。これからは無闇に人に入らないで、ちゃんと相手に望みを確かめてから入ってね」

『わかりました。ありがとうございます』


 風の精霊はふよふよと飛び上がると、夜の闇に消えていった。

 男の人は精霊が抜けたショックで気絶してる。

 ちょっとしたら目を覚ますはず。

 ……すごくだるいとは思うけど。


「みんな、ありがとう。お陰で連続スカート切り裂き魔事件、無事解決だよ」


 仮面を外しながらそう言うと、ボクの中から四人の精霊が飛び出して来た。


 男の子みたいな喋り方をする、戦い好きな火の精霊ナスタ。

 頭がすごくよくて、お淑やかな水の精霊ネリーネ。

 のんびり屋だけど頼りになる、土の精霊カモミリア。

 ちょっと子どもっぽいけど、元気いっぱいの風の精霊アネモス。


 魔力の無いボクに、こうして人を守るための力を貸してくれる、頼りになる仲間だ。


『けっ。オレに任せとけばすぐ解決してやったのによ』

『いくらワタクシたちが入るとはいえ、身体はレイのものなのですよ? ナスタみたいに無茶苦茶に使ったら壊れてしまいますわ』

『人を乱暴者みたいに言うんじゃねぇよ!』

『……でも、実際、乱暴……。ナスタが、入ると、レイ、どこかしら、怪我する……。治すの、自分と、ネリーネ……』

『う、い、いや、それはだな、こ、このひ弱なレイを鍛えてやろうと思って、だな!』

『やーいへたっぴー』

『アネモス! お前だってレイに入って空飛んで、危うく落っことすところだったじゃねぇか!』


 もっと仲良くしてくれるといいんだけどなぁ……。


「じゃあ帰ろう。衛兵さんにこの人の事だけ伝えてさ」

『もう帰るのかよ! けっ、物足りねぇなぁ』

『ナスタは一人でそこら辺を飛び回っていればよろしいのですわ。活躍したワタクシは、可愛い可愛いレイと添い寝して身体を休めますの』

『……自分も、頑張った……。自分にも、権利、ある……』

『アネモスも一緒に寝るー。ナスタだけ一人ぼっちー』

『帰るよ! 帰りゃいいんだろ!』

「はぁ……」


 ボクだけにしか聞こえない言い合いにため息をつきながら、ボクたちは衛兵さんの詰所に向かった。

読了ありがとうございます。


この企画を知り、開始日から投稿しよう、と連載形式で準備していて、投稿前にとびらの様の活動報告をもう一度確認して、


「短編、だと……?」


と気付き、大慌てで短編に直し、完結まで持っていって、さあ今度こそ投稿を、と思って再確認したら、


「連載も可、だと……?」


B◯EACH並みの逆転に継ぐ逆転で、再び連載形式に戻しました。

確認は大事。本当に大事。


完結まで書き上げたお陰で、期限内完結条件は満たしている、と前向きに考えます(震え声)。


とりあえず一日一話投稿で行こうかなと思います。

お付き合い頂けましたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少し捻った冒険物、面白そうでわくわくしますね。 次回、どう展開するのか楽しみです。
[良い点] 新作投稿ありがとうございます! 賑やかな精霊4人娘にレイくんが振り回されて大変そうな情景が目に浮かびます。 今回は花の名前でしょうか。 4人の性格と花がイメージにあっていてぴったりだと…
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