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異世界の少女が憑依した子爵令嬢

 2か月前とある事件がきっかけで私はリリアになった。

多分本物のリリアは死んで、異世界の日本で死んだ女子高生の私の魂がリリアの体に入り込んだ。

所謂、憑依ってやつかな?

私の中にリリアの記憶とか知識とかは全くない。


「おい、リリア! リリア聞こえてるのか? おい、呼んでるだろ! おい!!」


 何か聞こえた気がするけど、忙しいからスルーしますね。

16歳の貴族令嬢と言えば、もうそれなりに淑女教育とかいろいろ身に着けているもんらしいんですけど、私には当然そんな知識もないし、家族や貴族のことも何にも知らない赤子同然のスペックで此処にいる訳ですよ。


「お前、この間から俺の事無視してるだろ! おい、こっち向けよ!!」


 あっ、先生に頼まれたプリントが一枚落ちた、めんどくさいんだよなぁ。

でも、授業ついていけてないし、先生には厄介になってるからこれ位やっとかないとなぁ。

よいしょっと、プリントとれた。

あれ? 今頭の上で何か動いた? それに後ろから鈍い音がしたな・・・。

でも荷物多いし振り向いたらもっと落としそう、それに急がなきゃ。


 それで話を戻すけど、唯一数学の知識があるおかげで、この世界では算術の授業って呼ばれている授業だけはぶっちぎりで得意みたいだけど、その他は全くダメ。

歴史も全く違うし、地名や物の名前なんかも全く知らないから、一々調べないと授業が理解できない。

しかもこの世界にはネットが無い。これがきつい。

だってスマホ世代の調べものなんかネットでしょ。

それが図書館とか、人伝いとか・・・いや図書館の場所も知らないし、知り合いもいませんけどって話。


「おい、婚約者が転んでいるのに、見て見ぬふりか? 婚約者がどうなっても良いっていうのか!!」


 ちょっと、後ろの人マジ煩い!痴話げんかとか人のいない所でやってよね。


 で・・・まあ、唯一幸運だったのが、この世界に来てすぐにリリアの友人だったエレノア様たちに見つけてもらったこと。

事情を説明したら信じてくれて、親切にリリアのこととか学園のサポートとかしてくれた。

もしそれがなかったら今頃家にも帰れてなかったよ。


 それでもエレノア様たちにレクチャーを受けて、図書館行って調べものして、それでも分からないことは先生の部屋に入り浸ってでも指導してもらって、とにかくやることが沢山ありすぎて息つく暇もない。

色んな人に助けてもらってるから、少しでも恩返しがしたくって今も先生の雑用を引き受けてるってわけ。


 あ、そうそう、事情の説明が長くなっちゃったけど、今日のお相手はリリア・リメンディス子爵令嬢になった私です。


「先生、プリント回収してきましたよ。あと社会科室から授業に使う地図を借りてきました。ここ置いときますねぇ!」


「頼む。悪いな、色々頼んじまって。」


 今私が声をかけたのが歴史のエドガー・サイモン先生。

男爵家の嫡男らしいけど、没落寸前で教師で生計を立てているのだとか。

家の子爵家も同じような物らしいので、なんとなく親近感を感じます。


「あれ? 先生机の上になんか置いてありますよー。石? どかしますね。」


「ああ、それなー。うちの男爵領で採れたんだよ。鉱山が見つかったって言われたから期待したけど、そんな石しか採れなくてな。粉にすると顔料にはなるかもしれないから地学の先生に似てもらおうと思って持って来たんだよ。」


 先生の話を聞きながら私は手際よく机をかたずけますよ。

ってあれ、石欠けた? 壊しちゃった? でも大した石じゃないって言ってたし大丈夫だよね?


「・・・先生、石少し欠けちゃいました。すいません。」


「大丈夫だ。割と欠けやすい石なんだよ。」


 あれ? これって雲母ってやつじゃない? しかも白っぽいから白雲母? って確かミネラルファンデーションの原料じゃなかったっけ?

この世界の化粧品って、まだ貝殻とか紅花みたいな花をすり潰したやつなんだよなぁ。

売れるかな? これでファンデーション作っちゃったら売れるかな?


「おい、お前大丈夫か? ・・・なんか凄い悪い顔してるぞ。」


 先生が毛虫でも見るような目で私を見てきます。


 切実なんですよ、私も。 

何でもリリアは家の資金難のために商家の息子と婚約を結んでいるらしいし。

しかも婚約者はアミール様たちの婚約者に纏わりついている、例の男爵令嬢の取り巻きの一人らしいので。


 そんなことを考えながら歴史準備室を後にした私の目の前に一組のカップルが現れました。


「ダニエル、こんなとこにいたのね。トリシャ探しちゃった。何してたの?」


「そ、それは・・・その、人を探してて。」


「もしかして、婚約者のリリアさん?」


「いや・・・その・・・まあ、ちょっと用事があって。」


「もしかしてダニエル・・・トリシャの事嫌いになっちゃった?」


「そうじゃない・・・そうじゃないけど・・・一応、僕の婚約者・・・だし。」


 ・・・私を探していたらしいですけど、話長そうなので行っちゃいましょう。

最後の方は聞こえなかったな。

それに二人の横を通り抜けた時、ダニエルが焦って何かこちらに話しかけているようにも見えたけど、トリシャさんがいい仕事しててさっぱり聞き取れなかった。




 教室に向かう途中の階段をみて溜息がもれた。


 リリアはこの階段から落ちたせいで多分亡くなったんだよね・・・。

私がこの世界で目を覚ました時、階段の下に転がってた。

体中痛くて声も出なかったとき、去っていく男の後ろ姿が見えた。

多分、リリアを故意か事故で突き落とした犯人・・・。




・・・ダニエルだったけどね。



「この、くそがぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」





 あー、ちょっとすっきりした。


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