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5.夢の中のあなたは……?

『海くん……。どうして? どうして遠くに行っちゃうの……?』


 待って……

 待って!!!


 全身にびっしょり汗を掻きながら、私はいつもの如く夢の終わりと共に目が覚める。


 にしても今日の夢って……?!

 相変わらず男の子は私と同じ位の歳だったけど、名前も知らない謎の存在だったのに、今日に限っては『海くん』だなんて……


 私ってなんて馴れ馴れしいんだろう。

 そもそもあの男の子がどうして柄谷さんなのよ。

 いくら似てるからって図々しく名前で呼んだりして……


 夢の中とは言え、あんなにお世話になってる先輩に対してあまりに身の程知らずな自分にホトホト嫌気が差してくる。

(はぁ、結衣の言ったっ通り、私病気かもしれない……自意識過剰病……)


 朝だっていうのにどっと疲れてしまった。


 サンファに初出勤してからそろそろ一ヶ月が経つ。

 ようやく私も一通りトレーニングを終えて、『そろそろ独り立ちしてみるか?』と柄谷さんからのゴーサイン。

 本当に優しくて、親切で、カッコよくて……

 こんな人に仕事を教えてもらえる私はとっても幸せ者だとつくづく思う。


 ずっと私に付きっきりで面倒をみてくれる柄谷さんに、みんな口を揃えて『この女子高生好きが〜!』と弄られても、それをヒョイと交わして飄々とした顔で私の隣に居てくれる。

 私はとっても安心しながら新しいこともグングン覚えて行けたけど、柄谷さんからしたらいい迷惑だったよね、きっと。


 ブレザーを羽織り、首元のリボンを結びながら自分の姿を鏡に写しては毎朝ため息が零れる。


(もっと可愛く生まれたらよかったのにな……)

 そんな事今更思ったってどうにもならないってのは分かっているのに。

 可愛いからって柄谷さんに振り向いてもらえるってわけじゃないのに。


 だから、せめて。

 せめてバイトだけは頑張ろう。

 柄谷さんがせっかく私を一生懸命育ててくれたんだから。

 失敗して恥を欠かすような事はしちゃいけない!!


「うるぁぁぁ!!」

 鏡の中の自分に向けて気合いを入れる。

「悠里、ご飯は??」

 奥の部屋からお母さんの声が聞こえたが、私は『今日はゴメン! いらない!』そう言って風を切るように玄関を飛び出した。



 家を出て海沿いの道を真っ直ぐ歩くとサンファが次第に見えてくる。

 その道をさらに先に行くと私の学校だ。

 どんなに落ち込んでいても、この道を通り海風を体中に感じると体の内側からモリモリと元気が湧いてくる。


 今日は一人立ちの日!!


 サンファが目の前に現れると、一応周りを気にしながらも私は入り口の前で『今日は、よろしくお願いしますっ!』と無事やり遂げられるように願いを込めて深々と頭を下げた。


 カチャ


 裏口の開くような音??

 スーッと血の気が引いて行く。

(もしかして、誰かに聞かれた?? こんな朝早く誰もいるはずないのに!)

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