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妥当







『じゃ、死んでね』


 振り上げられたハンマー。


 嘲笑うような目。


 死んだなって思って、最後まで動きを追う。


 成金アイテムの惨敗勝負。


 勝ち目なんてなかった。


「あっごめーん」


 振り下ろされた攻撃が俺の真横を叩く。


 5秒経過。


『スキル邪魔ノイズ』


「もういっかーい」


 バコーン。


 また外してる。


 次のミスで俺はわざと外してることに気づく。


『スキル邪魔ノイズ』


「おりゃー」


 ズコーン、ドカーン。


 舐めプとか最悪だな!


 アイテムを贅沢に投入されてるから苦痛の逃げ道がない。


 逃げようとしても、その方向に攻撃が飛んでくる。


 当たりそうで当たらない。


 ずっと舐めたような攻撃が続く。


「ははっ!」


「いけいけー」




『えいっ』




 モーションの中で横からフックが飛び出した!




 ハンマー使いがグルグルに縛られていく。


「なっ……」


 ショコラがフックを使ったのか!


「ナイス!」


 俺はその場で地面を蹴って、下がりながらクルリと空中で回転する。


 スタッと着地した。


「はよ助けろ! おい!」


 女の本性がショコラの手によって暴かれる。


「ま、マジ? やべーよ……」


「それよりアレ! あれ使え!!」


 俺は男に近づき、究極の攻撃を選択する。


『クロススラッシュ』


 燃え盛るオーラが属性値によって大きく見せる。



「あ、やべ……」


「スキルは!? バクステ踏め!」


「バックステッポ!」


「噛んでんじゃねーよ!!」


 ネカマのハンマー使いが怒鳴る間に、俺はXを描くように2回武器を振り下ろした。


「ぐ、うう……」


 胸に叩きつけられた赤い字が痛さを語って男を跪かせる。


 フォーゼの効果がギリギリで終わりを告げ、剣のエファクトが解かれる。


 近づけフックの性能が悪いお陰で、ネカマの拘束時間も半端じゃない。


「来んな! 来んなあ!」


 大量のアイテムを使って負けたら、冷静じゃ居られないよな。


 そんな戦いに持ち込んだ相手にとって、この試合は何らかの意味があるんだろう。


 ランク? ランクだったら宣言されるから有り得ないな。



 どうせ、見栄張って来たんだろ。


「落ち着けよ」


 トン、トン。剣を肩に乗せてゆっくり叩く。


 歩み寄りながら、グルグルのネカマの方を見た。


「ああ!? 早く殺せよ!」


 剣を下ろして、空気を割く。


「わりー力でねーわ」


「てっめええ!!」


 負けを悟ったコイツはアイテムを使ってこない。


 でも可能性を信じてるのか、サレンダーはしてこない。


 滑稽だな。



『ラバー』



 相手のウィンドウにアクセスしてモノを盗むスキル。


 手を突っ込んで引き抜くとガラス片のように空間が割れる。


 俺が握ったアイテムはパンティー。


「いらね」


 もう一度ラバー。


「な、なにして……」


 引き抜くと次はブラジャー。


「弱いのに下着だけ高級ブランドか?」


 ブラを捨てて剣を向ける。



「わりいか! リアルじゃ勝ちまくってきたからな!」


 くそみたいなやつだな。


「まったく、バックステップも使えねえとは……」


 運営に金を流し込むような課金で偉そうにするやつも居るもんだ。


「やっぱり仲間は金も取って行くし、いらねーや」


 こんな低ランクで使いまくれるとか、石油王の息子か?


 しなくてもいいゲームに来るなよ。


「もう消えろ、お前」



 見てて腹立つんだよ!


 生きた瞬間に勝ち組見てえなやつが!


『フォーゼ』


 選んだのはアクセルバハムート。


 自動的に纏われる銀色の鎧と細身の剣。


 ドラゴン族のバハムートを冠したバイクが近くに現れる。


 そんな見た目はどうでもいい。



 俺が求めたのは、使用が許可されるアクセルスキル。


 使う前に特定のスキルを挟むとバグが発生する。



『カリンガ』



 カリンガスキルはバグの温床で、その中でもアクセルカリンガは凶悪な効果を発揮する。


 ムカつく野郎に使おうと思っていたが、ここで使うことになるとは。




『ニルヴァーナ』




 斬り上げた頂点で手をネカマに向ける。


 その手から放たれる白銀の叫びがビーム状に放たれる。


「ぐ、ぐあああ!!」


 光を浴びて悶える声。



 ニルヴァーナ自体は痛みを感じるタイプのスキル。


 それをカリンガで早くするとどうなるか?


 恐ろしい痛みと勘違いしてもおかしくない。


 そしてこの組み合わせによるバグはその痛みが一瞬で注がれてしまうこと。




「ああっ……」


 目をギラッギラに腫らしたネカマが、大きく息を吸っては吐く。



 痛みを外に出すような呼吸。



『苦しんだか?』



 それから、銀翼の剣を何度も振り下ろした。








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