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ハメ殺し







 俺は走りながら後ろを見た、一瞬だけ。


 ショコラとの距離がぐんぐん離れていくスピード。


 前を見据えて男にソードウェーブを――


『ソードダッシュ』



 ヒュッ。



 男が俺の横を過ぎ去ってショコラに向かっていく。


 しまった!


 俺はその場でカリンガを使い、バックステップで距離を取り返す。


 キャンセルして振り向き、ソードダッシュ!


 追い越した俺は剣を振って男の進行を阻止する。


 鍔迫り合いに持ち込むと男の足が止まる。


「やらせねえよ」


 その場で後ろに下がった男に剣を向けた。


 1メートルくらい後ろにはショコラが居る。


 ここから先、進行させる気なんてもうない。


『ショコラ、回復アイテム食べててもいいぞ』


「分かった!」


 後ろから小さな袋を割く音が聞こえる。


「もぐもぐ」


 遠くに置いた方が狙われた時に危険だ。



「殺してから行かせてもらうぜ!」


 女のハンマー使いが合流する前に倒した方がいい。



『フォーゼ』



 俺の背後に炎のオーラが漂う。


『スライドファクター』


 男の幻影が左右に二人現れ、スキル使用者の動きを真似る。


『デモンゲイザー』


 暗黒剣術が生み出した闇属性の衝撃波が縦に放たれる。


 墨汁のような黒き一閃。


 幻影も同じような攻撃を飛ばしてきた。


『カリンガ』


 当たり判定を剣に移しながらバックステップ。


 迫ってくる衝撃をなかったことにする。


 俺の体を通り抜けていくエファクト。


 キャンセルなしで近づいて斬り上げるモーションを行う。



 炎のオーラに突っ込んだ剣がエファクトを吸い込む。



 無骨の剣が獄炎の剣へ。



 オーラは燃えるように消える。



「ば、バグか!?」


 剣に当たり判定が移るということは。


 バフも全て剣が受ける。



 着地した俺は距離を詰めてクロススラッシュの構え。


 剣のバフとして認識されたフォーゼは、スキルの恩恵を受ける。


 クロススラッシュは5倍の属性値と1.5倍の物理補正。


 これは武器に付与するスキルの数値だけ考えられている。


 フォーゼのようなキャラに付与するスキルは本来、対象外だ。


 それにより、考えられていない数値が弾き出される。



 フォーゼの属性値は、5000。



 25000の属性で殴ったら、無双連撃なんて軽く超えてしまう。



『クロススラ――』


 突然、ノイズ音が走る。



 掻き消されて行く俺のスキル発声。



 こ、これは……!


『足並みを揃えましょうよ』


 スキル阻止ノイズが使われた!


 阻止ノイズの効果は5秒間。


 十万円もする高価アイテム。


 このハンマー使いの女が使ったらしい。


「た、たすかったぜ」


 俺のモーションがなかったことに変更されてしまう。


「早く、殺しましょう」


 5秒ってのは意外に長いもんで。


「オラオラオラ!」


 振り下ろされる斬撃を何十発も俺は防ぐことになった。


 カキン、カキン。


 飛び散る火の粉に押されて一歩下がる。


 まだ終わらないのか?


『オーバードライブ!』


 ノイズが消えて男が振りかぶる一撃の構え。


 俺もこの隙に!


『クロススラ――』


「スキル阻止ノイズ」



 バリバリと俺の声だけ引き裂かれて消える。



 この女がノイズを足したせいで使えなかった。


「死ねやぁ!」


 相手の剣が輝きを満ちる。


 繰り出される強撃を自分の力だけで抑え込む。


 ギンッ――


 威力のあまり、後方に押される。


 砂を鳴らして耐え凌ぐ。


「耐えんのか」


『いただきまーす』


 俺の横を通ろうとするハンマー使い。


 ショコラ狙いか!


 咄嗟に剣を伸ばして止めに狙う。


 ノイズが切れる。


『クロススラ――』


「スキル阻止ノイズ」


 男の声。



 俺の言葉がザアザアと流れるノイズに飲み込まれて消える。


 モーションがただの攻撃に変わる。



「おらあ!」


 振り返って男の斬撃を防ぐ。


 中途半端な姿勢で防御した俺はスキル攻撃を止めたわけでもないのに、呆気なく尻もちをついた。


 追撃の突き攻撃が放たれ、俺の体を剣先が掠める。


『カリン――』


「スキル阻止ノイズ」


『アップブレ――』


「詠唱阻止ノイズ」


 ありとあらゆる雑音が俺に対して不利に傾く。


「はよ死ねよ!」


 突き攻撃のお遊びが終わると男はデタラメに剣を叩きつけてきた。


 動きに合わせて転がって避ける。


 立ち上がる暇がない!


 そうこうしている間に5秒経過する。


 今なら発動できる!




『ソ』




 ザーーーー。




 ダメだった。









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