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ソロクラン






 外に出た俺は足元の小石を蹴飛ばした。


 なんで俺が抜けなきゃならないんだ。



 クランからの追放。


 この金稼ぎクランゲームでは無職、社会的な死を意味する。



 ReLIFEは普通のゲーム内容の魔物戦もあるが、クラン戦と魔物戦は勝手が違う。


 クランの再結成をするなら魔物戦の奴を引っこ抜くしかない。


 そうなると色々教えたり……いや。


 他人と一緒に戦うなんてもうウンザリ。


 親に蹴飛ばされた気分でつらい。


 クランルールとして今までの戦闘報酬は折半だったのが幸いか、リアルな生活費を除いて三十万ヘル手持ちにある。


 魔法アイテム一個買えば終わるな。


 武器なんてしばらく買えるわけがない。




 俺は憂さ晴らしをするように通り過ぎた美女を追う。


 遠目で触れるような動作をする。


 ピコン。


 美女キャラクターの情報がウィンドウとして飛び出す。


 そこで装備欄を選択。


 アンデットシリーズの防具がズラズラ並ぶ。



 そのウィンドウを掴んで激しく揺らすと。


 バサッバサッ。



 目の前の美女が黒い鎧を落とすように脱いでいく。


 最終的に短パンと薄いブラ一枚になった。


 横を追い越しながらジロジロ見る。


 胸の谷間とウェーブを描く腰の曲線を楽しんだ。


 へそピアスなんて高価な物を付けてるのか。


 本人に気づく様子はない。


 この裏技は俺の目にだけ効果がある。


 他の人がこの裏技を試せばもちろん効果は出る。


 自己満足の領域だからか、何故か修正されてない。


 良い体を楽しませてもらったな。




 道を引き返して広場に来た。


 ここはオード国。


 基本的にオブジェクトはそんなに変わらないけど、国によって店に立つキャラが変わったりする。


 重要なのはクラン戦。


 根本的に同じ国のクラン同士しか戦えないからな。


 例外はあるが、強くならないと始まらない。


 せっかくなら他の国に行きたい。


 あんなクランと戦うなんてお断りだ。


 どこにしようかな、優しい人とかは要らなくて。


 ひっそり稼げたら満足だ。


 それには国の強さを見極める必要がある。



 近くの転送装置に向かってキャラクターに話しかける。


『どうしましたか?』


 NPCと呼ばれる、コンピューターキャラのリス。


 もう二度と会えないだろうな。


 ここを訪れる気はもうない。


「新しい国は?」


 出来たばかりの国は新規しか居ない可能性が高い。


 一人でも勝てるかもしれない。


 国の力を測れるステータスもあるけど、今回は純粋に新規と戦って勝つ必要がある。


 ハイエナみたいで嫌だけどな。


「二週間前に誕生したテンカです」


「そこに行きたい」


「通行料を払いますか?」


 5万ヘルを支払って青い魔方陣に乗った。


「では、旅行をお楽しみください」


 二度と帰ってこれない旅行。



 俺の気持ちが重量オーバーを起こしている。


 思い出をここに捨てると転送された。






 …………気がついたら新しい街に来ていた。


 まだ周囲は汚れていないし、老朽化なんていうリアルな症状も出てない。


 人は割と居るな。


『よろしく頼む、NPCのケリドじゃ』


 新しい転送さんの挨拶に答えて、広場の真ん中にある噴水に座る。


 街が新しくても、基本的な構造は変わらないらしい。


 とりあえず街のプレイヤーを摘んで情報テキストを漁る。



 レベル15くらいか……俺はレベリングさせてもらって60。


 このレベルはステータス差だけじゃなくて実力の差として見えるからクランバトルの時は非表示になる。


 装備で分かっちまうけどな。



 ある程度サーチして腰を上げた俺はクラン組合に入った。


 上質な赤い木で組まれた建物の中は自然の香りが広がる。


 すー、はー。


 いい匂い。


『ご要件は?』


 美人な受付さんと顔を合わせる。


 基本的にクラン参加とクラン設立ができる。


 クランの強さランキングもある。



 今回するのはクランの設立。



「かしこー」


 そう言って受付さんは紙を出す動きをする。


「ウィンドウに項目を記入してください」


 目の前に書く為の項目とデジタルキーボードが浮かぶ。


 鉛筆で何かを書けるほど高性能なゲームじゃないのだ。


 適当にクランとしての意欲を記入。


 この辺は適当でいい、募集の為に映る欄だけど誰も来て欲しくない。


 クラン名なんてどうでもいいんだよな。


 スペースキーを叩いて決定ボタンをポチッ。




『クラン『 』を設立しました、メンバーを探しますか?』




 受付さんが決まったセリフを言う。


 別に探さないし。


 無視して要項を言う。


「クランバトルがしたい」


「人数が少ないので不利は避けれませんが、よろしいでしょうか?」


 在り来りな警告。


「構わない」


 レベル15くらいなら全員倒せる。


「マッチングを開始します」



 基本的にマッチングは実力同士とかはない、ランダムだ。


 と言ってもクランランクがあって。


 そのランクに沿った上で強さはランダム。


 弱い奴が来る事を祈るしかない。



「マッチングしました、闘技場に移動します」


 周囲が塗り変わるようにサラサラ姿を変える。


 気がついたら闘技場。


 観客は少ないが、カメラの映像が動画配信サイトとリンクしている。


 俺の相手をするのは三人の初心者。


 初めてのクラン戦をした時も、相手は三人だったかな。


「あれれ、一人?」


「ぼっちなんだねー」


「私達のチュートリアルにぴったり!」


 へえ、その言葉は信じてもいいのか?


 無骨な鉄の剣を抜いて、構える。




『勝ったらしょくふ……祝福してやるぜ? いや噛んでない、噛んでないよな? 確認してくる』


 NPCのボイスと共に俺はソードダッシュでフィールドを陣取る。



「勝てる勝てる! ゴーゴー!」


 呑気に走ってくる三人。


 俺は剣先の魔力を込めて斬撃を飛ばす。


『ソードウェーブ』


 魔法使いの女の子に向けて放った衝撃波。


 少年が庇うように防ぐ。


「させないっ……」


「大丈夫!?」


 ちょっとだけ観客が増えてきた。


 投げアイテム目当てに、変わった動きを見せつける。


 俺は自力で近づいて剣を持った少年を誘い出す。


 クイクイっと人差し指で煽る。


「一騎打ちなら負けないぞ!」


 近付いてきたことを確認した俺は背を向けて。


『カリンガ』


 バックステップを踏んで少年をすり抜けた。


「な、なに!」


「なにあれ!」


 当たり判定が剣に移るという事は、俺の体はなんでもすり抜ける。


 そのまま近づいて斬り上げる決められたモーションを少年に対して行う。


 ガキンと少年は斬撃を受け止めた。



 空中に飛んだ俺は、ここでカリンガをキャンセル。



 カリンガは最後のモーションをキャンセルした時にキャンセル効果が発動する。


 その効果は、次に使った技に限って加速する隠しチート。


 これはキャンセルした時のモーションが、終わりに近ければ近いほど加速する。



 俺は降下しながら少年に瞬速で剣を振る。



 何度も何度も何度も。



 ヒュッヒュッと血のエファクトと風が踊る。



「や、やめて!」


 少女のファイア魔法がノロノロ近づく。


 もう遅い。



 着地と同時にモーションを終えた俺は。




 振りかざすように一歩下がって少年の心臓を貫いた。




『無双連撃』








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