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25話

 翌朝、俺とゼニードは、ユマにモヴェラット行きの件を話していた。

 ちなみにクイーナは王都に残すことにした。ブラックドラゴンの支払いがまだ終わっていない――天文学的な金額のため金の準備に時間がかかっているのだ。

 そのため、彼女には支払いの用意ができたら俺の代わりに受け取ってもらい、《ATM》を使って送金してもらう手筈を取っている。奴隷のため主人の命令に背くことはできないから、お金を持ち逃げする心配もないしな。

 ちなみに、ブラックドラゴンの買い取り価格は『32億ゴールド』だった。とんでもない金額だ。

 これまでコツコツと貯めてきたのがバカになるような額だが、しかし二度、三度と戦いたい相手ではない。

 あの時は金に物を言わせる剣(ミリオネアソード)で1億ゴールドを使って倒すことができたが、あの時はブラックドラゴンが狭い屋敷の中という逃げられない場所にいたから倒すことができた。あの攻撃は射程が短いうえ、制限時間があるから使いどころに困るのだ。


「なんで私がタイガさんが治める村に行かないといけないんですか」


 ユマが文句を言っている。


「田舎には教会があっても管理者がいない。教会でミサをしてくれる神父も修道女もいない彼らの心を慰める。まさに愛じゃないか」

「タイガさん、愛と言えば私が納得すると思っているんじゃないですか?」

「…………」


 思っている、と即答しそうになった。

 しかし、ここで拗ねられたら面倒なことになりそうだし。


「村民が困っているのは本当だよ。お前なら困っている人がいるなら絶対に放っておかないと思って、事後承諾になっちまった。悪かったよ」

「うっ……タイガさん。そういう言い方は卑怯です。ところで、なんという村に行くんですか? 私、そこから聞いていないんですけど」

「モヴェラットという村だよ」

「モヴェラットっ!? モヴェラットといえば、マイヤース王国最南端に位置する山に囲まれた村ですよね!?」

「な、なんだ。知っているのか? 相当田舎にあるってことしか知らないんだが」

「知らないんですか? モヴェラットといえば伝説のチュパカブラが目撃されている街じゃないですか」

「チュパカブラ?」

「知らないんですか? チュパカブラを」

「名前は知っているんだが」


 とはいえ、知っているのは日本での知識だ。チュパカブラといえば主に中南米で目撃されるといわれる怪物だよな?

 しかし、しかしだ。ここは日本ではない。チュパカブラどころか、吸血鬼やドラゴンすら普通にいる世界だ。


「ただの魔物じゃないのか?」

「いいえ、謎の未確認生物です!」

「未発見の魔物じゃないのか?」

 未確認なのだから、謎なのは当たり前なので、二重で言う必要はない。

「謎の未確認生物です! いいですか? チュパカブラというのは七十六年前に南のココアス共和国にあるガラスト山脈で発見された吸血生物です。その特徴は二足歩行で歩くことと全身が緑色の毛で覆われていて背中がハリネズミのような棘になっていることですね。チュパカブラが目撃された場所の近くで、血が抜かれて干からびた動物の死骸がいくつも発見されました。チュパカブラの被害は合計千とも二千ともいわれ、人間も何人も殺されているそうです。また、チュパカブラがいた場所から百キロほど離れた村で未確認飛行物体の目撃情報もあることから、チュパカブラは宇宙人か、宇宙人が送り込んだ侵略兵器ではないかと言われているのです。そもそも、チュパカブラと宇宙人の目撃情報には共通点も多く、深夜の――」


 ユマの話が延々と続く。

 チュパカブラね。そんなものがいるとは思えんが。

 ユマの話では、チュパカブラを捕まえれば近くの町から1000万ゴールドの賞金が出るという話もあった。ツチノコ見つけたら一億円と言っているようなもんだな。

 ただ、ユマの話によると、チュパカブラはその辺の猛獣より遥かに強くすばしっこいらしいので、生け捕りにするとなるとドラゴンを捕まえるよりも面倒そうだと思った。

 まぁ、国もそんな未確認生物は存在しないとわかっているから面白半分で賞金なんて話を持ちだしたのだろう。


「ゼニード、チュパカブラって本当にいると思うか?」

「うむ……日本にもツチノコが実在するくらいじゃから、絶対にいないとは言い切れないがな。しかし、悪魔の証明じゃろ、それは」

「この世界にあるものがないことを証明するには、世界のすべてを知らないといけない。しかしそれは不可能だって話だよな」


 俺はそう言ってため息をつき……そしてはっと気付いた。


「いるのかっ!? 日本にツチノコが!?」

「うむ。妾が確認した限りでは約七十匹が生息しておったぞ?」

「マジかっ!?」


 七十匹全部捕まえたら七十億円じゃないか……いや、さすがに一億円は最初の一匹だけか。

 日本にもまだまだ俺の知らないことがあるんだな、と感心していた。

 ちなみに、ユマのチュパカブラの講義は一時間以上も続いた。


「チュパカブラの目撃場所は山の他に墓場も多いです。モヴェラットは死体を土葬するので、死体から血を吸い取っているのではないかという話が――」


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